DAY2:山岡 Part4
「山岡さん! 今だ!」
トラックの陰から身をさらし、銃を構える。
パァン!
まずは1発。
山岡が走る。
もう1発。
パァン!
――発砲炎。
「――ッッツ!」
右耳に鋭い痛みと、熱。
反射的にトラックの陰に隠れる。
「くそっ……!」
耳に手を当てる。
血がついた。
掠めた……!
「山岡さん!」
視線を向ける。
山岡は、まだ走っている。
「そのまま走れ!」
バァン!
山岡の足元の舗装がえぐれる。
狙いが山岡に変わった!
まずい…いや、チャンスだ。
89式に向かって走る。
89式を拾い、構える。
銃声に反応したゾンビが迫る。
気にしている暇はない。
片膝をつき、右手は握把と引き金。
銃床を肩に押しつけ、頬を添える。
左手は被筒に添えるだけ。
――ピントは照星に。
息をはき…止める。
パァン!
約150m先の屋上で、赤い霧が吹いた。
初めて、人を狙い、撃った。
手が震える。
近寄ってきたゾンビの頭に狙いを定め、撃つ。
パン、パン、パン。
きりがない。
89式を肩にかけ、班長を担ぎ、車へ走る。
「班長、もう少しです!」
車までたどり着く。
トランクのドアを開け、後部座席を倒す。
班長の身体を支えながら広くなった荷室へ押し込む。
「ぐっ……!」
右脚を引き上げる。
バックドアを閉める。
俺は運転席へ乗り込み、エンジンをかける。
山岡の逃げた方向へ車を走らせ、クラクションを鳴らす。
「山岡さん、乗って!はやく!」
山岡を車に乗せ、自宅へ向かって車を走らせる。
俺も山岡も無言。
聞こえるのは、班長の痛みに耐えるうめき声だけ。
――20分後、最短ルートをかっ飛ばし、自宅へ着いた。
山岡とともに班長を担ぎ、3階まで上がる。
理恵と里穂が悲鳴を上げる。
「いったいどうしたの!その人誰?!」
「説明はあと!撃たれたんだ!」
理恵と里穂の顔が強張る。
「とりあえず応急処置!ベッドに班長を寝かせるよ!山岡さんそっちもって!」
班長をベッドに寝かせ、ズボンを切って脱がせる。
弾は…貫通している。よかった。
出血量からして、おそらく動脈は傷ついていない……と思う。
脚の前後に開いた穴に消毒液をかけ、ガーゼで抑える。
「ぐあああああっ!」
班長が叫ぶ。
ガーゼを包帯で強く巻き、圧迫する。
「班長、どうしたらいい?!」
「ぐうぅ……佐藤、そのまま圧迫しろ……絶対にCATは外すなぁッ!」
このままじゃまずい、きちんとした治療が必要だ。
病院はだめだ、奴らがいる。
…!
「班長!駐屯地、まだ無事かわかりますか?!」
「わからんが、たぶん無事だ…。」
「駐屯地は全周フェンスで囲まれているし、医務室がある。イチかバチか行きましょう」
「ああ…わかった」
「山岡さん、すみません。裕太君のこと」
「いや…仕方ない。大丈夫だ。息子は俺一人で探す」
「俺ん家、自由に使ってください。安全第一で!」
家を出て、急いで車に乗り込む。
班長は荷室だ。
助手席に水と食べ物が入ったリュックと、89式。
弾は残り9発。
道のりは30㎞。
エンジンをかける。
まだ、日は高い。
駐屯地まで30km。
普段なら、何でもない距離だ。
だが――




