DAY2:山岡 Part1
-午前6時半-
昨夜はいつもより早く寝たからか、早く起きた。
スマホを確認すると、昨日は圏外だったのに、電波が立っている。
山岡から20分前にメッセージが届いていた。
『おい佐藤、無事か?』
すぐに返事を打ち込む。
「何とか無事だよ。今はバリケードを作って部屋に立て籠もっている。そっちは無事?家族は?」
すぐに返事が来た。
『俺と妻、次女…里穂は無事だ。一緒にいる。だが…長男とは連絡がつかない。長女は目の前で車に…』
「そうか…山岡さん、今は安全なところにいるんすか?」
『今は俺が務めている整備工場の事務所にいる。助けに来てくれないか?』
「了解」
迷いはなかった。
山岡さんにはすごく世話になっているし、子供たちとも面識がある。
助けに行かない選択肢はない。
しかし…無事に整備工場までたどり着けるだろうか?
MAPを確認する。
現在地から整備工場まで最短ルートで約4㎞。
だが、このルートは幹線道路だし、途中に大きめの病院がある…危険だ。
となると、病院を避けて生活道路を通ることになる。
このルートだと約5㎞か。
想定外を考慮して、所要時間は30~40分程度だな。
「山岡さん、7時半には着くと思う。準備しといて」
『ありがとう』
バリケードを退かし、ドアスコープを覗く。
見える範囲にゾンビの姿はない。
チェーンをかけたままドアをそっと少しだけ開ける。
やはり見える範囲にはいない。
チェーンを外し、金属バットを握りしめ恐る恐るそとに出る。
外廊下から駐車場を見る。
俺の車から20mの位置にゾンビが一人。
階段を下りて車まで15m。
行けるな。
慎重に物音を立てずに階段を下りる。
2階の廊下は…大丈夫だ。
ゾンビはいない。
1階に下りる。
「――ッ!」
死体があった。
頭が近くに転がっている。
ゾンビが喰ったのだろう、切断面はズタボロで、内臓が出ている。
叫ぶところだった。
ここで愛車のドアロックを解除する。
駐車場のゾンビに反応はない。
全速力で車まで走る。
――ゾンビが気づいた!
だが、俺のほうが少しだけ早く車に着く、大丈夫だ。
あ、いやだめだ思ったより速い…ゾンビとの距離は5m…
「グギュルアァァァァ」
ゾンビが叫ぶ。
立ち止まり全力で金属バットを胸にめがけてフルスイングする。
硬いものが砕ける感触…骨は折れたはずだ。
ゾンビが倒れるが立ち上がろうとする。
頭に金属バットを振り下ろす。
バキョッ!
ゾンビは動かない。
よし。
「あっ!」
最悪だ。血が愛車についた。
塗装し直したばかりなのに…
気を取り直して愛車に乗り、ドアをロックする。
俺の愛車は古いジ〇ニーだが、グリルガードが付いている。
多少のゾンビなら低速でなら撥ね飛ばせるはずだ。
――30分ほど走った。
道中にはたくさんの血痕と、頭を撃たれた死体、事故車、そしてゾンビ。
ゾンビや死体の中には警官や自衛官が混ざっていた。
どうやら完全には対処できなかったらしい。
そんなこんなで整備工場にたどり着いた。
敷地内に数体いたゾンビが寄ってきたので撥ねた。
「山岡さん、着いたよ。出てこれる?」
メッセージを送るも、返事がない。
嫌な予感がする…
金属バットを握りしめ、俺は車を降りた。
チラッと車を見る。
ヘッドライトが割れていた。
泣きたくなった。
整備工場内に入ると、ゾンビが数体いた。
近くにあった金具を事務所の反対側へ投げると、ゾンビがその方向に歩いて行った。
事務所のドアにゾンビが二体いる。
厄介だな…
一体に落ちていたペンを投げつける。
振り向いてこちら側に歩いて来るのを物陰に隠れて見る。
そして近くに来たタイミングで飛び出し頭にフルスイング!
バキッ!
やった!倒したけど、くうぅ、腕がしびれる…
殴った音でもう一体にも気づかれた。
こちらに向かって走ってくる。
しびれを気にしている場合ではない。
走ってくる相手の勢いを利用して頭にフルスイング!
バキッ!
やった!倒したけど、くうぅ、余計に腕がしびれる…
事務所のドアを叩く。
「山岡さん、俺だ、無事すか!」
ドアが開き、山岡さん達が出てきた。
「ありがとう佐藤、あいつら、ドアを開けてきたから咄嗟に抑えてたんだよ…」
「無事でよかった。表に車停めてるんで、行きましょう。まだ工場内にゾンビいます」
「……分かった」
山岡さんが妻と次女に声をかける。
「二人とも、俺から離れるなよ」
「うん……」
次女は怯えた表情で頷いた。
俺は金属バットを握り直し、周囲を確認する。
「急ぎましょう。外にも何体かいました」
「分かった」
俺たちは事務所を出た。
工場内には、まだ何体かゾンビが徘徊している。
できるだけ音を立てないように、全員で車へ向かう。
――なんとか無事に車に車に辿り着き、乗り込む。
「山岡さんの車は?」
「俺の軽トラ、整備しようと思ってリフトに乗せたんだ。降ろすには時間かかっちまう。
家には軽ワゴンがあるが…」
「たしか山岡さんの家って、あの病院の近くですよね」
「ああ、そうだ」
「……家に戻るんですか?」
「ああ、息子が家に戻ってる可能性がある」
「……」
「昨日から連絡がつかない。でも、もしかしたら家に戻ってるかもしれない」
「なるほど……」
俺は病院の方向を見る。
正直、行きたくない。
あの辺りは昨日から大量の人が集まっていた。
「病院の近くはかなり危険ですよ」
「分かってる」
「それでも行きますか?」
「……ああ。息子を置いていくわけにはいかない」
「分かりました。行きましょう。ただし、この車は4人乗りです。
息子さんが…裕太君が居たら乗れない。
軽ワゴンが万が一使えないことも想定して、一旦俺ん家に行って二人を降ろしましょう。
それに…里穂ちゃんを危険な目に合わせることになる。」
「そうだな…それで頼む」
自宅に向け、車を走らせる。




