DAY8:アパート安全化計画 Part3
今日は班長と一緒に例のおんぼろ軽でガソスタに来ている。
目的は車のガソリンの補給と、死体を燃やすためのガソリンの確保だ。
死体を置いている場所は舗装されていて、なおかつ周りに何もない。
埋める時間はないから、班長と相談した結果、燃やすことにした。
「思ったより安全そうですね。でもなんか悲惨っすね」
「そうだな」
てっきり車が大量に並んだ状態で放置されているかと思いきや、全然車がない。
洗車機に突っ込んで停まっている車。
リフトで持ち上げられている軽自動車と、その横にある取り外されたホイール。
給油機の横に停まっている血まみれで給油口の蓋の開いたセダン。
ゾンビはいない。うん、平和だ。
ちなみに、俺はここで学生時代に半年ほどバイトした経験がある。
大きいが古いガソスタで、停電時の給油は手動ポンプだ。
バイトしているときに2日ほど停電になった日があった。
当時下っ端の俺がポンプ係をさせられ、クソ大変だった記憶がある。
新しいガソスタなら発電機があると聞いたことがあり、羨ましかった。
思い出しながら手動ポンプを使い、給油する。
倉庫から携行缶をあるだけかき集め、携行缶にもガソリンを入れる。
ふと、ボロ軽のホイールを見る。4穴だ。
リフトアップされている軽自動車に近づき、置いてあるホイールを見る。
4穴だ。しかも、新品タイヤ。
「班長、これ使えますよ!」
「お、いいもん見つけたな佐藤!」
「でしょでしょ。後で家で付け替えましょうよ」
「いいね。お前ひとりでできそうか?」
「こんなんちょちょいのちょいですよ~」
新品タイヤ付きのホイールと必要な工具、ついでに回収したエンジンオイルをボロ軽に積み込む。
エンジンオイルが適合するかは、しらん!
「おい佐藤、その車、動くんじゃないか?」
班長が給油機の横の車を指さす。
「ちょっと見てみますね」
血まみれのセダンに近づき、確認する。
給油口は開いているが給油キャップは閉まっている。
…キーは刺さったまま!キター!
「キー刺さってます!」
「おお、でかした!」
乗り込み、エンジンをかけてみる。
ガソリンは…満タン!
「班長、でも車2台になっちゃいますよ。運転できます?」
「まあ、左足でペダル踏めばいけるだろ」
「でも、このセダン、マニュアルですよ」
「そのボロ軽を俺が運転すりゃええやんか」
「…こいつもマニュアルですよ」
「…」
「…」
恥ずかしくて顔が赤くなる班長。
「じゃあ、このセダンは鍵抜いてロックしときましょ。車がぶっ壊れたら取りに来たらいいし」
「そうだな」
ボロ軽に乗り込み、自宅へと向かう。
「…なんか迷惑ばっかかけてすまんな、佐藤」
「いいんですよ。助け合ってなんぼでしょ。それに、教育隊の時にたくさん世話になりましたし」
「そうか、ありがとうな」
…なんやかんや無事に自宅に着いた。
携行缶を使ってミニバンや原付に給油をする。
よし、2台とも満タンだ。
残りのガソリンは小さい携行缶満タンに入ってる5L。
…足りるかな?
死体のもとまで行き、一応手を合わせる。
「まあ成仏して。生焼けになったらごめんな!」
手を合わせ終わり、ガソリンをかける。
うわ、少し服にかかった。
ガソリンをすべてかけ終わり、班長に声をかける。
「すんません、俺の服にちょっとガソリンついちゃったんで、班長が点火してくれませんか」
「ああ、ええよ」
ポケットに指しておいたボロ軽の発炎筒を班長に渡す。
俺が離れたのを確認した後、
班長が発煙筒を着火し、死体に放り投げる。
燃え上がる3体の死体。
炎を横目に、ボロ軽の整備に取り掛かる。
ジャッキアップし、まずはホイールを取り外す。
取り外したホイールを重ね、車体の下に噛ませる。
これで万が一ジャッキが倒れても、俺が抜け出す時間ができる。
古いオイルを抜き、新しいオイルを入れる。
一応古い車だから、粘度高めのオイルにしといた。
最新の車はパーツの精度が高く、粘度低めのサラサラなオイルがいいが、こういう古い車は粘度高めのオイルがマストだ。
いや、ごめん。中途半端な知識からくるテキトーな判断だ。
オイル交換後は、新しいホイールを取り付ける。
しっかりとトルクをかけ、取り付けていく。ある程度走ったら増し締めしないとな。
古い車と最近のホイールだからPCD(ホイールのボルト穴が並ぶ円の直径)が合致するか不安だったが、問題なく装着できた。
ホイールの交換も終わり、車を降ろす。
「うーん、なんともアンバランスだ」
30年くらい前のぼろっぼろの軽に、新しめのデザインのアルミホイール。だっせ。
整備を終え、死体の様子を見る。
うん、見事に生焼けだ。
「ごめんな~」
まあ、完全放置よりも多少は衛生的だろう。
死体置き場を後にし、アパートへ戻る。
次は2階の改造だ。
まず、鍵のない201号室のドアを内側から施錠し、家具で玄関を塞ぐ。
次に、3階のベランダにある避難はしごを展開し、2階と3階の行き来をベランダでもできるようにする。
202号室の玄関は塞がず、鍵を閉めるだけ。
これだけだ。
え?ほかになんもやらないのかって?
やらないよ。だって今んとこ使い道ないもん。




