DAY2:班長
駐屯地に向け出発し、1時間。
平時ならもう着いているころだが、未だに市内を抜けられずにいた。
高速道路は放置車両で詰まり、目的の方向へ続く橋は警察車両とバリケードで封鎖されていた。
のこりは旧道。
かなり古い峠道で、路面はガタガタ。
平時でも2時間はかかるルートだ。
だが…班長の容態は目に見えて悪化している。
急がなければ…
旧道に入り、30分。
驚いたことに放置車両が全くない。
なぜだろう…?
そう思った矢先に、理由が分かった。
土砂崩れである。
このパンデミックの前夜、3日間続いた豪雨で土砂崩れがこの道で起きていた。
ニュースで見ていたのに、忘れていた!
目の前には、土砂、そして放置された数台の車。
愛車のハンドルを見つめる。
こいつは軽だがクロカン車だ。
目の前の土砂を見る。
岩や木が混じっているが、大半が土だ。
…行ける!
ゆっくりと土砂に乗り上げていく。
ガコッ!
「……」
土砂を乗り越えるまであと半分のところで引っ掛かり、前進も後退もできなくなる。
「ああーもう!なんでいつもいつもこんな!うまくいかないんだ!」
ハンドルをバンバンと叩きながら喚く。
その時、視界に反対側の放置車両が目に入る。
…1台くらい、動くんじゃね?
「班長、ちょっと待っててください」
愛車を降り、放置車両へ近づき、ドアノブを引く。
…開かない。
次から次へと放置車両のドアをチェックし、5台目。
最後の1台だ。
ミゼ〇トII。
1人乗りの軽トラだ。
キーは刺さったまま。
「なんで、動くのは1人乗りの車なんだよ…。
まあ、荷台に班長乗るけどさ…」
愛車に戻り、班長に声をかける。
「班長、動く車あったんですけど、ミ〇ットでした。
しかも1人乗りのモデル。荷台に乗る感じでも大丈夫ですか?」
「ぐうっ…大丈夫だ佐藤。背に腹は代えられん…」
班長を背負い、ミゼッ〇の荷台に乗せる。
ドライバンでよかった。
エンジンをかけ、発進する。
よかった、動いた…。
ミゼ〇トに乗り換え、通れない道を迂回しつつ、3時間。
日が沈む寸前に駐屯地が見えてきた。
正門の内側に16式機動戦闘車が横付けされている。
車載されているM2重機関銃がこちらを向く。
『そこで止まれ!』
拡声器で停止を指示され、止まる。
『ここは避難所ではない!民間人の受け入れはできない!』
手を挙げながら車を降りる。
「私は元自衛官です!車に負傷した自衛官が載っています!重症です!」
しばらくすると、正門わきの通用口から銃を構えた隊員数名が出てきた。
「動くな!手を挙げて跪け!武器は持っているか?」
「携帯はしていません!車内に89式と拳銃、金属バットがあります!負傷者は荷台です!」
両手を後ろに回され、 結束バンドで手首を縛られる。
車のほうで隊員が叫ぶ。
「負傷者確保!右大腿部に貫通銃創!担架!」
担架で運ばれる班長を横目に、俺は警衛所へと連行された。




