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異世界でも楽しんで生きていこう  作者: 弥人(ヤアド)
第一章 辺境での身分確保と安寧への道
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第4話 異世界の森はチート男に敵意ゼロ、代わりに動物ばかり寄ってくる

他の3人のステータス開示はしますが詳細は別の話でします。

PS

異世界って潔癖症からしたら地獄だよね。

ケツ拭きが葉っぱだったらマジ不潔……なんちゃって

 焚き火の光がゆらゆらと揺れる中、悠の手の中で半透明のウィンドウがまだ静かに浮かんでいた。


「……悠。もう一回聞くけど、この数字、本当に合ってるの?」


 茉莉が震える指先で画面を指し示す。


「合ってる、と思う。何回見ても変わらないし」


「筋力、11億……? 絢乃、電卓持ってきて。いや持ってきても桁が足りないわ」


 そもそも電卓は無い。……はずだ。探しはしない。


「まーちゃん、落ち着こうね。よしよし……」


 茉莉の顔が青くなったり赤くなったりする。


「悠、あなた……本当に、私の知ってる悠なの? 昨日まで、講義中に居眠りしてただけの人、だったよね……?」


 なぜ俺が講義中に居眠りしているのを知っているのかは、聞かないでおく。なぜって? 俺の持っている何かに盗聴器を仕込んでいるからだ。お姉ちゃんは大事な人を守るためなら手段を択ばない。……いやすべての手段を使う、が正しいかな?


「俺だってわけわかんないんだって」


 悠は涙目で首を振る。隣に控えていたルフが、静かに一礼して口を開いた。


「僭越ながら、ご説明いたします。九条様のステータスは、人族という種の限界を遥かに超えております。すでに種が『神種』へとなっており、この森に潜む魔獣たちが指一つ動かせなかったのも、九条様という存在そのものへの、本能的な恐怖によるものです。人族の限界値については、不明ですが……」


「そんなの嫌だ……」


 悠は頭を抱えた。隠居がしたい。米を作り、日本酒を造って、スモークチキンを燻して、誰にも邪魔されずに昼寝をしたいだけなのに。


「まあでも」と茉莉が腕を組み、ふっと表情を切り替える。


「隠しても仕方ないでしょ。逆にこの数字、堂々と使い倒した方が面白いんじゃない?」


 と悠のやる気を促すかのように言う。


「まーちゃんは逞しいわね……」


 のほほんとした笑顔を崩さない絢乃が一番たくましいと思う。悠は諦めたように肩を落とした。まあ、確かに。今更隠しても仕方ない。


◇◇◇


 パンと水で軽く腹を満たした後。


「悠、あんたその恰好で森歩く気?」


 黒パーカーと黒スウェットのまま伸びをする悠に、茉莉が呆れた声を飛ばした。


「私服が一番落ち着くんだけど」


「却下。ちょっとアイテムボックスを見せなさい」


 茉莉はずかずかと悠に歩み寄ると、断りもなく悠のアイテムボックスの一覧をひょいと覗き込んだ。


「あなた言ってたじゃない。『自分の家だと思って帰ってきてね』って、つまりあなたの物は私の物でもあるわ」


 それは元の世界の家での話だったのだが……まあいいか。


 スクロールする指が止まる。


「これ、いいじゃない。動きやすそうだし通気性も良さそう。裏地も綿のようだし、あなたも気に入るはずよ」


 取り出されたのは、軽量なアウトドアジャケットと、動きやすいカーゴパンツ。続けてコンパクトなナイフ、魔法瓶の水筒、それに何かのごついブーツまで次々と選び出され、悠の腕の中に積み上げられていく。


「あと帽子。日差し強そうだし」


「至れり尽くせりだけど、俺の意思は……」


「無いわよ。ほら早く着替える」


 絢乃がくすくすと笑いながら、その光景を眺めていた。


「まーちゃん、頼りになるわね」


「昔から変わらないよ、うちの姉ちゃん」


 悠は渋々着替えながら、まあ悪い気はしないなと思った。

 

 もたもたしているとお姉ちゃんが着せてくれる。手先が不器用なので、シンプルな服以外は着ずらいのだ。


◇◇◇


 装備を整え、三人は水源を求めて森の奥へと足を踏み入れた。絢乃と茉莉も同じような装備をまとっている。

 

 唯一違うものと言えば、茉莉が履いている靴だった。彼女は砂漠や泥濘でも自在に動けるという、十二センチピンヒールを履いているのだ。

 

 本人曰く「ヒールじゃないとうまく歩けない」というのだから不思議で仕方がない。一度普通の靴でふにゃふにゃと歩いているのを笑ったら、鼻先を回し蹴りがかすめていった。あの時の、冷や汗は今でも忘れられない。


「川の音、あっちからしない?」


 悠が自信満々に指差した方角へ進むこと十数分。


「……悠、これさっきの倒木じゃない?」


「あ」


「あんた完全に一周してるわよ!」


 茉莉のツッコミが森に響く。方向音痴は、ステータスがどれだけ優秀になろうと直らないらしい。


「ごめん……まっすぐ歩いてるつもりなんだけど」


「はぁ……いいわ、私が方角見るから、悠は絶対に自分の勘で動かないで。ちなみに最初から川の音とは反対方向に歩いてたわよ」


 だから後ろからくすくすと笑いをこらえるような声が聞こえてたのか。納得納得。


 茉莉の的確な指示のもと、なんとか軌道修正しながら森を進んでいく。


 と、そこで絢乃が声を上げた。


「見て、この花……!」


 地面に咲いていたのは、花びらが淡く発光する、青紫色の見たこともない花だった。触れると、ふわりと粉のようなものが舞い上がる。


「わ、綺麗……」


「絢乃、勝手に触らないの。毒があるかもしれないでしょ」


「あ、ごめんなさい」


 その隣、木の幹には仄かに光る苔がびっしりと張り付いており、悠は思わず立ち止まった。


「うわ、これ完全にどっかのゲームで見たダンジョンの光るコケじゃん……」


 そんな中、茂みの奥からガサリと音がした。三人が身構えるが、飛び出してきたのは、ウサギのような体に鮮やかな水色の毛並みを持つ、小さな生き物だった。


「ふわぁ……なにこれ、可愛い」


 絢乃が目を輝かせる横で、その動物は悠の方をちらりと見ると、なぜか警戒する様子もなく、ぴょんぴょんと足元にすり寄ってきた。


「……敵意はないわね。昨日の魔獣とは違うのかしら」


 茉莉がふと眉をひそめる。が手が触りたそうにソワソワと動いていた。


「さっきから、敵意むき出しの魔獣の気配が全然しないわね。昨日の夜はあんなに囲まれてたのに」


 バールーフが静かに口を開いた。


「九条様の存在感を察知し、恐れをなして逃げ去ったのでしょう。この一帯には、もはや魔獣の類は一匹も残っていないかと。それにこのうさぎは動物のようです」


 バールーフが何やらステータスウィンドウを開きながら言ってくる。


「つまり、この森で一番危ないのは悠君ってこと?」


 絢乃が苦笑しながら、それでも足元の可愛い生き物を優しく撫でる。


「そうなるわね……動物と魔獣の違いって何かしら」


「……詳しくはわからないのですが、魔獣とはマナを生み出す『魔核』を体内に宿した獣を指すようです。戦闘力も非常に高いと聞いております。それに対し、普通の動物は魔力を持たず、地球の野生動物に近い存在ですね。他にも『聖獣』と呼ばれる種がいるようですが……」


「答えがずいぶんと曖昧ね?」


「み、水兎様、大変申し訳ありません……!」


 ルフは青ざめて、ぺこぺこと頭を下げた。


「私は本来、皆様が暮らしていた地球の担当天使でございます。急遽こちらの世界へご案内することになったため、急いで覚えている最中でした。よってあまり詳しくなく、見たことがないのです。知識的には皆様と同じぐらいだと思ってもらえれば」


 そう言って、ルフは申し訳なさそうに、自身の半透明なウィンドウを空中にスワイプして見せてきた。


 ほう。そうやると裏表がひっくり返るんだな。覚え…とかなくていいか。


『ステータス』

【名前】バールーフ

【種】神種

【種族】天使族

【性別】女

【年齢】2400

【称号】異世界転移者 原初の天使

【レベル】1

【HP】2,000/2,000

【MP】2,000/2,000

【RP】2,000/2,000


【物理特性】

【筋力】200

【耐久】200

【俊敏】200


【特殊特性】

【精神】200

【抵抗】200

【感応】200


【生産特性】

【加工】200

【安定】200

【解析】200


【運】100


【固有スキル】 神眼 神力 神威 不老不死

【エクストラスキル】 異世界言語翻訳 オートマップ ステータス偽装

【スキル】 剣術Lv5 敵感知Lv1 アイテムボックスLv1 鑑定Lv5


【魔法】生活魔法


【聖法】回復聖法 結界聖法



「なら私も見せるわ」



『ステータス』

【名前】茉莉=水兎

【人種】人族

【性別】女

【年齢】27

【称号】異世界転移者

【レベル】1

【HP】500/500

【MP】500/500

【RP】500/500


【物理特性】

【筋力】50

【耐久】50

【俊敏】50


【特殊特性】

【精神】50

【抵抗】50

【感応】50


【生産特性】

【加工】50

【安定】50

【解析】50


【運】100


【エクストラスキル】異世界言語翻訳 オートマップ ステータス偽装

【スキル】剣術Lv5 敵感知Lv1 アイテムボックスLv1 鑑定Lv5


【魔法】生活魔法



「じゃあ私も」



『ステータス』

【名前】 絢乃=神宮寺

【人種】人族

【性別】女

【年齢】27

【称号】異世界転移者

【レベル】1

【HP】500/500

【MP】500/500

【RP】500/500


【物理特性】

【筋力】50

【耐久】50

【俊敏】50


【特殊特性】

【精神】50

【抵抗】50

【感応】50


【生産特性】

【加工】50

【安定】50

【解析】50


【運】100


【ユニークスキル】 ニグ・シュブニト

【エクストラスキル】異世界言語翻訳 オートマップ ステータス偽装

【スキル】剣術Lv5 敵感知Lv1 アイテムボックスLv1 鑑定Lv5


【魔法】生活魔法



「原初の天使だなんて……バールーフさん、実はすごい方だったんだね。熾天使(してんし)様、それとも智天使(ちてんし)様だったりする?」


「ルフ、とお呼びください。……神の御許(みもと)に侍る最上位が熾天使様、その次なる階位が智天使の皆様です。それ以降に大天使の方々が続きます。私などは、たかだか2400年ほどを生きているに過ぎない、天使の末席の身。原初などと、とても恐れ多いことでございます……」


「へぇ……じゃあ俺も悠でいいよ」


「それでは、悠様とお呼びさせていただきます」


「それにあやちゃんも」


 綾乃のステータスに言及しようとすると。


「話はゆっくりできるところでしましょう。頭が痛くなるわ」


 茉莉が頭を抱えながら言ってくる。


◇◇◇


 そうして進むこと、さらに小一時間。


「……あ」


 悠が足を止めた。


 木々の隙間を抜けた先、きらきらと木漏れ日を反射する、どこまでも澄んだ美しい水面が視界に飛び込んできた。


「川、見つけた……!」


「やっと……!」


 四人は顔を見合わせ、安堵の息を吐いた。


「これで水浴びができる!」


「違うわよ!」


 茉莉の鋭いツッコミが森に響き渡るのであった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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