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異世界でも楽しんで生きていこう  作者: 弥人(ヤアド)
第一章 辺境での身分確保と安寧への道
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第3話 頼れるのは知識

「異世界の魔法がだめなら」


 凛とした声が響いた。振り返ると、そこにはスーツの腕をまくった水兎 茉莉が、キリッとした表情で仁王立ちしていた。


「頼れるのは現代のサバイバル知識! 悠、綾乃、ルフ、夜が来る前に火と寝床を確保するわよ! ぼさっとしてないで、私の指示に従いなさい!」


「あ……まーちゃんとサバゲーに行ってたんだった…私も頑張る。猪取れるかな?」


「あやちゃん、サバゲーはね。BB弾を撃つゲームの事を指すんだよ…イノシシ撃って解体してまでやるのはサバイバルだよ? ハンターだよ?」


 悠のツッコミをよそに、茉莉の的確な指示が飛んでくる。


「絢乃はあっちの乾いた落ち葉と、細い枯れ枝を集めてきて! 悠はそこの太い枝を拾って、摩擦式の火起こし器の土台を作るの! ルフは木を岩とかで切って薪を作ってちょうだい」


「わ、分かった!」


 悠は言われるがまま木の棒を組み合わせ、両手で挟んで一心に擦り合わせた。絢乃も土でスーツを汚しながら、懸命に葉を集めては火を起こすところに置いていく。


「姉ちゃん、これで合ってる……!?」


「回転が足りない! もっと腕をちぎれるくらいの勢いで!」


「分かった。どんどん早くしていくよ」


キュイィィン…シュポ


「ん?」


 なんか嫌な音が聞こえて、恐る恐る棒を抜いてみる。


 貫通していた。

 

 そっと棒を差し込んで考える。


「はぁ!? 何貫通させてんのよ!」


「ごめんなさい」


 どう誤魔化したもんかと考えていたら、即バレた。即座に正座をして謝る。


「……あ。そういえば」


 アイテムボックスに何か使えるやつは入ってないだろうか、バッグの中もおおざっぱにしか見てないし、もしかしたらポケットの中に何か入ってるかもしれない。


―――


『アイテムボックス』


【装備】


・【武器】鉄の剣 ダイヤモンドの剣 炎黒龍の双刀 白聖竜の両手剣 コンバットナイフ 不死王の杖 イシュタル改 覇王ノ刀………


・【防具】鉄の防具一式 ダイヤモンドの防具一式 炎黒龍の防具 白聖竜の防具一式 森林迷彩の防具一式………


―――


(多すぎじゃね?)

 さらにスクロールしていくと。


―――


【消耗品】

・【回復薬】初級HPポーション×297 初級MPポーション×297 下級HPポーション×396 下級MPポーション×396 中級HPポーション×495 中級MPポーション×495 上級HPポーション×594 上級MPポーション×594 希少級HPポーション×693 希少級MPポーション×697 蘇生のエリクサー×198………


―――


 ……さらにスクロールしていく。ポーションとか気になるがあとだ後。


―――


【道具】

・【生活用品】火打石×99 コンパス×99 ランタン×99 水袋×99……


―――


「やっと火打石見つけた。……ってかこんなたくさんあったっけ? まあいいか」


 道具の中の生活用品の中に火打石がある。よく見つけたもんだ。それならライターとかないかな? マッチでもいい。


 そう思いスクロールしていく。お! ガストーチがあるじゃないか!! 早速取り出してみる。


「おお……でこれどうやって使うんだ?」


 見たことあるが使ったことはない。


「ちょっとーーー!! ガストーチあるなら最初から出しなさいよ!! 貸しなさい」


 カチッ、と小さな音とともに炎が灯る。それを乾いた薪へと近づけると、瞬く間に火が燃え移った。


「アイテムボックスにあったんだよね。いやぁ初心者特典すごいね」


「そんなのなかったけど、でも火がついてよかったね」


 絢乃が柔らかく微笑む。四人で焚き火を囲みながら、どっと笑いが零れた。一人頭を抱えている人がいるのは見なかったことにしよう。


 その様子を、ルフはずっと黙って見つめていた。


 あの凶悪な魔獣どもを一瞥だけで怯えさせるほどの存在。とてつもない力を秘めているはずの彼らが、たった一つの灯火のために泥だらけになり、笑い合い、言い争い、実に人間くさく生きている。


 仕様通りに、淡々と職務をこなしてきたルフにとって、その光景はどこまでも新鮮で、そして温かかった。


◇◇◇


 パチパチと薪の爆ぜる音だけが響く、穏やかな夜。


 焚き火の暖かさに包まれながら、茉莉がふと思い出したように口を開いた。


「そういえば悠、あんたこの世界での自分のステータス、もう見たの?」


「いや、まだちゃんとは見てないな。……一応、全部確認しておくか」


「ステータスオー」


「恥ずかしいからやめなさい」


「いやでもロマン」


「綾乃のご飯を食べさせないわよ」


「はいもう言いません」


 あやちゃんの手作りご飯がないと生きていけないので素直に従うことにした。


 どうやら心の中で唱えれば出るらしい。


 目の前に、半透明のウィンドウがふわりと浮かび上がる。


 穏やかな焚き火の音を背景に、悠はなんとなくその画面へと視線を落とした──次の瞬間。


 悠の視線が、一点で完全に止まった。


 そこに並んでいたのは、意識が落ちる直前に見た「1」や「50」といった数字ではなかった。


―――


『ステータス』

【名前】 悠=九条

【人種】 人族 → 【神種】 人神族(種族変更可能)

【性別】 男

【年齢】 20

【称号】 人を超えた者 別次元を経験してきた者 転移者 限界を超えた者

【レベル】1 → 3,136

【HP】500/500 → 11,859,655,921/11,859,655,921

【MP】500/500 → 11,859,655,921/11,859,655,921

【RP】500/500 → 11,859,655,921/11,859,655,921


【物理特性】

【筋力】50 → 1,190,389,704

【耐久】50 → 1,190,389,704

【俊敏】50 → 1,190,389,704


【特殊特性】

【精神】50 → 1,190,389,704

【感応】50 → 1,190,389,704

【抵抗】50 → 1,190,389,704


【生産特性】

【加工】50 → 1,190,389,704

【安定】50 → 1,190,389,704

【解析】50 → 1,190,389,704


【運】100 → 100


【固有スキル】 神眼 不老不死

【ユニークスキル】 種族変更

【エクストラスキル】 異世界言語翻訳 オートマップ ステータス偽装 亜空間倉庫 通話 千里眼 戦闘術 魔闘術 魔法物質作成 採集百般 製造百般

【スキル】 アイテムボックスLv99 鑑定Lv99 手加減Lv99 威圧Lv99 隠密Lv99 敵感知L99 気配感知Lv99 筒術Lv99 騎術Lv99 調教Lv99 解体Lv99 建築Lv99 魔力制御Lv99 魔力感知Lv99


【エクストラ魔法】 氷魔法 雷魔法 溶岩魔法 樹木魔法

【魔法】 生活魔法 火魔法 水魔法 土魔法 風魔法


【エクストラ聖法】 魂契聖法 支配聖法 祝福聖法 再生聖法 聖域聖法

【聖法】 共生聖法 契約聖法 付与聖法 再生聖法 結界聖法


―――


「……は」


 声にならない声が漏れる。


 喉の奥が、からからに乾いていく。


 さっきまで、必死に木の棒を擦り合わせて汗を流していた自分。あの泥臭い時間と、目の前に並ぶ現実離れした数値の羅列との間に、あまりにも埋めがたい溝がある。

 

 ……いや、待て。溝なんてなかった。

 

 むしろ、今さっき起きた現象の答えが、この画面に全部書いてある。

 

 乾いた木片に棒を押し当てて、ただ必死に回していただけなのに、なぜか『キュイィィン』とえげつない異音が響き、まるでドリルみたいに木の板を貫通した、あの意味の分からない怪力。

 

 原因はこれだ。この【筋力】のせいだ。

 

 一、十、百、千、万……億。じ、11億……?


「……悠? どうしたの、急に黙り込んで……」


 絢乃の声が、どこか遠くに聞こえる。


 のんびりスローライフを送るつもりだった。面倒ごとは全部避けて、大切な幼馴染たちと適当に開拓して、のほほんと暮らす予定を火をおこしながら考えていたのに。


 ……終わった。俺の平穏、完全に終わった。人神族が平穏に過ごせる可能性はない、日本の神様だって、毎日祈りに来る方たちのために色々と頑張っていらっしゃるんだ。

 この世界の神という種族も同じことをさせられる可能性がある。


 震える手で、悠はもう一度、画面の数字を見つめ直した。


 見間違いではない。何度瞬きをしても、そこに刻まれた桁外れの数値と、世界の理を置き去りにした【人神族】の文字は変わらず書かれている。


「悠君……?」


 心配そうに顔を覗き込む絢乃に、悠はまともに答えることすらできず。


 ただ、ガタガタと震える指先でステータス画面を見つめたまま、完全に言葉を失っていた。


(隠居したい!)


 そう思いながら、3人にステータスを見せるのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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