第2話 目覚めたら、愛しい恋人と幼馴染が待っていた
どうも、弥人です。
待ちに待ったステータス開示の儀(実際の開示は次話です)、これを書くことから物語は始まった。
気がする。
PS.
久しぶりに算数をしました。
たのしかったです。
PPS
まじステータス考えるのが一番しんどかった。
計算式変えたら見たことない桁になったこともあったからね…(遠い目)
温かい。
まず最初に感じたのは、それだった。
頬に触れる何か柔らかな感触。ふわりと鼻先をくすぐる、懐かしい香り。とても落ち着く匂いだ。
悠はゆっくりと目蓋を持ち上げた。
視界に飛び込んできたのは、見慣れた学校の白い天井ではなく、頭上高くに広がる巨木の葉と、そこから零れ落ちる柔らかな木漏れ日だった。
「……あ」
自分の頭の下にあるのが、誰かの膝であることに気づく。見なくても分かった。この温もりも、この匂いも──ずっと昔から知っている、あの人のものだ。
「あ……悠君……! よかった、目が覚めた……!」
視線を上げると、そこには今にも泣き出しそうな顔で自分を見つめる、神宮寺 絢乃の姿があった。
瞳に涙をためながら、それでも懸命に笑おうとするその表情に、悠の胸が痛いくらいに締めつけられる。
「……あやちゃん、おはよう。 ここ、どこだ。俺、講義中に……」
頬を優しくなでる。
言いかけて、思い出す。天井が崩れてきたことを。
上体を起こそうとした瞬間、少し離れた場所から声が飛んできた。
「ちょっと悠! やっと起きた!」
振り返ると、そこには水兎 茉莉が、安堵と呆れが入り混じったような複雑な表情で立っていた。
「絢乃ったら、悠が全然目を覚まさないから、ずっと泣きそうな顔で付き添ってたんだからね」
「もう、まーちゃん、それを言わないでよ……」
絢乃が頬を赤らめながら、悠の黒パーカーの袖をきゅっと握りしめる。その指先が、微かに震えていた。
どれだけ心配をかけたのだろう。悠は込み上げてくる申し訳なさと、それ以上の愛おしさを噛み締めながら、そっと絢乃の手に自分の手を重ねた。
「ごめん。心配かけたな」
「……ううん。無事なら、それでいいの」
小さい頃、三人で指切りをして交わした約束が、ふと脳裏をよぎる。
――ずっと三人で一緒にいようね。
あの日の誓いが、こんな異常事態の中でも、変わらず三人を繋いでいる。それが今、たまらなく心強かった。
◇◇◇
少し落ち着きを取り戻した絢乃の視線が、ふと悠の頭へと向かう。その端正な唇が、いたずらっぽく緩んだ。
「ふふ、悠君。その頭、どうしたの? 最近髪伸ばしてのは知ってたし、昔からゲームの話になると形から入る子だったけど……本当に髷を結っちゃうなんてね」
「あー……戦国ゲームにハマってたからね。ここまで伸ばすのめっちゃ苦労した」
「そうなんだ! でも……うん、すごく格好いいと思う」
「あ、ありがとう」
絢乃が少し照れたように視線を逸らしながら呟く。その一言に、悠の頬もじんわりと熱を持った。
「あんたたち、こんな状況でもいちゃつく余裕あるのね」
茉莉が呆れ半分、微笑ましさ半分といった様子で腰に手を当てる。
「その髷、悪くないとは思うわよ」
「姉ちゃんまで……」
姉ちゃんと呼んでいるが本当の姉ではない。姉ちゃんぽいから姉ちゃんと呼んだらそれを許可してくれた。下の名前を呼ぶことを許可しているのは絢乃だけだ。それ以外の人には水兎様と呼ばれている。
三人でくすくすと笑い合う。張り詰めていた空気が、少しだけ和らいでいくのを悠は感じていた。
◇◇◇
ふと、視界の端に映る不自然な輝きに、悠は目を細めた。
自分たちを取り囲むように、淡く光る半透明の膜が広がっている。まるで、巨大なシャボン玉の中にいるかのような光景だった。
「これ……結界、か?」
「ご名答でございます、九条様」
涼やかな声とともに、悠たちの傍らに音もなく現れたのは、中性的な美しさを湛えた女性だった。タイトなスラックススーツに身を包み、凛とした佇まいで一礼する。
「私は地球で異世界に行く者のサポートをしていた者です。バールーフと申します。どうぞ、ルフとお呼びください」
その神々しいまでの気配に、悠は思わず息を呑んだ。
だが、それよりも気になるものが、結界の外にあった。
鬱蒼と茂る森の奥。木々の隙間から、いくつもの異形の影が蠢いている。爛々と光る眼、牙を剥き出しにした顎──明らかに、見たことのない獣たちだった。
「あれは……」
「魔獣です。本来であれば、この結界に猛烈な勢いで襲いかかってくるはずなのですが……」
ルフの視線が、森の奥へと向けられる。
悠もつられてそちらを見た瞬間、違和感に気づいた。
獣たちは、結界に攻撃するどころか、ガタガタと体を震わせ、怯えきった目でじっと──悠の方を見つめたまま、身動き一つ取れずにいたのだ。
「な……あいつら俺を見て怯えてないか? 気のせいか」
「……気のせいではありません。あの魔獣どもは、私を恐れているのではない。九条様……あなたの放つ、あまりにも圧倒的な『存在感』に、心の底から恐怖しているのです」
「俺の……存在感?」
まるで実感が湧かなかった。ただの専門学校生だった自分に、そんな力があるとは思えない。
「はい。……ですが今は、それよりも懸念事項がございます。この結界を維持する私の[[聖力]]([[RP]])は、既に限界に近い」
ルフの表情が、わずかに曇る。
「限界まで絞り出せば、あと半日──明日の朝までは、何とかこの結界を保てるでしょう。ですが、それが私の限界です」
その言葉に、三人の間に静かな緊張が走った。
◇◇◇
太陽がまだ真上にあるが、夜の準備をしなくてはならない。
乾いた葉の擦れる音、遠くで響く鳥の声すらも、今はどこか不穏に聞こえた。
「どうしようか……魔法で火を起こせないかな」
絢乃が両手を胸の前で組み、不安げに呟く。
「出ろ、火」
念じてみるが、指先からは煙一つ上がらない。ただの現代人だった自分たちに、都合よく魔法など使えるはずもなかった。
「無理みたいだ。……このままじゃ、夜を越せない」
じわりと森の気温が下がり始め、遠くから不気味な魔獣の遠吠えが風に乗って届く。
明日の朝にはルフの結界も消える。その前に、火も明かりもない暗黒の夜をどう生き延びればいいのか。
武器もない、魔法も使えない、ただの一般人三人。
刻一刻と迫る『死の夜』を前に、悠が絶望的な無力感に呑まれかけた――その時だった。
最後までお読みいただきありがとうございます。




