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異世界でも楽しんで生きていこう  作者: 弥人(ヤアド)
第一章 辺境での身分確保と安寧への道
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第13話 ステータス確認会議 後編

「本命来ました」


 悠は少し緊張した面持ちで、亜空間倉庫のスキル名に意識を向けた。


【名前】亜空間倉庫

【分類】エクストラスキル

【レア度】至高級(アルティメット)

【発動条件】任意発動

【消費MP】0

【効果】無限容量の亜空間収納/格納物の時間経過完全停止/自由な出し入れ

【説明文】一般的な収納スキルである『アイテムボックス』の完全なる上位互換にあたる、次元を超越した超希少な収納権能。システムによって定められた容量制限を一切無視し、無機物・有機物を問わず無限に物体を格納することができる。また、倉庫内は隔離された亜空間であるため完全に時間が停止しており、中に入れたものは一切劣化せず、入れた瞬間の状態(温度や鮮度など)を永久に保持したまま自由に出し入れが可能。


「無機物、有機物問わず……って、生き物も入れられるってこと?」


 絢乃が首を傾げる。


「そういえば」


 悠はふと思い出し、亜空間倉庫の一覧をスクロールしてみた。


「……いた」


「え?」


「鶏と、牛と、豚。何でか知らないけど、入ってる」


「はぁ!?」


 茉莉が身を乗り出して画面を覗き込む。


「本当だ……なんでこんなの入ってるのよ。馬も入ってるじゃない!」


「分かんない。でも、これ酪農とか畜産にも使えるんじゃないか?」


「……悠、あんた、意外と将来性のある倉庫持ってるわね」


 茉莉が真剣な顔で頷く横で、絢乃はくすくすと笑っていた。


◇◇◇


「通話は、まあ電話みたいなやつだろうな。距離とか障害物関係なく、声が届くっぽい」


「便利ね、それ」


「千里眼は遠くを見るやつ。戦闘術と魔闘術は、まあ予想通りだと思う。今度実際に試してみるよ」


 悠はさらりと流し、次のスキルへと進む。


「魔法物質作成を鑑定っと」


【名前】魔法物質作成

【分類】エクストラスキル

【レア度】至高級(アルティメット)

【発動条件】任意発動

【消費MP】任意(込めた魔力量に比例)

【効果】魔力非内包物への魔力定着/魔法薬・魔導金属等の魔法物質生成

【説明文】本質的に魔力を持たないあらゆる無価値な素材に対し、自身の魔力を直接内包・定着させることで、強制的に魔法物質へと変貌させる特殊な生産権能。薬草や水だけでなく、金属や鉱石といった無機物にも適用可能。付与聖法とは完全に独立した技術体系であり、注ぎ込む魔力量に応じて生成される物質の性質やランクはどこまでも上昇する。


「うーん……これはちょっとよく分かんないな」


 悠は首をひねる。


「魔法物質って、そもそも何なんだ? ミスリルとか、そういうやつか?」


「実際に試してみないと分からなそうね」


「今度、暇な時にでもやってみるか」


◇◇◇


「次、採集百般」


【名前】採集百般

【分類】エクストラスキル

【レア度】至高級(アルティメット)

【発動条件】常時発動

【消費MP】0

【効果】各種獲得技能(採掘・採集・伐採等)の完全統合/素材獲得時の確定数量倍化(2倍)

【説明文】採掘、採集、伐採など、世界からアイテムを獲得するすべての技術を最大値まで修めた者にのみ与えられる至高の証明。自然界に存在するあらゆる資源の価値を完璧に見極め、最も理想的な状態で欠損なく獲得できる。また、本スキルを用いて獲得された素材は、その理を無視して確定で獲得数量が2倍へと増殖する。


「……2倍?」


 悠は目を見開いた。


「俺が採ったもの、全部2倍になるってことか」


「それ、ぶっ壊れじゃない!?」


 茉莉が思わず声を上げる。


「木材でも、果物でも、鉱石でも……使いようによっては、資源が無限に増えるってことよね」


「これはすごい拾いものだったな」


 悠はにやりと笑みを浮かべた。


「じゃあ、製造百般も似たような感じ?」


【名前】製造百般

【分類】エクストラスキル

【レア度】至高級(アルティメット)

【発動条件】任意発動

【消費MP】0

【効果】純粋製造技術の完全習得/武器・防具・各種アイテム作成時の品質極大上昇

【説明文】魔力を一切介さない、純粋な職人技術と製造の腕のみで世界の頂点へと至った生産の証明。世界に存在するあらゆる鍛造、縫製、木工、細工などの製造技術を完全に網羅・習得している。発動時は純粋な技の精度のみで素材のポテンシャルを極限まで引き出し、最高峰の物品を創り出す。


「あ、こっちは品質だけか。数は増えないんだな。ってか網羅してないよ、俺そもそも手先不器用だからね?」


 ステータスにツッコミを入れておく、もちろん何も変わらない。


「さすがに、そこまでは甘くないってことね」


 悠は少し残念そうにしながらも、納得したように頷いた。


◇◇◇


「細かいところは、また今度にしようか」


 悠はそう言いながら、残りのスキルを軽く確認していく。


「アイテムボックスは、見えないカバンみたいなもんだな。時間経過もあるし、重さもちゃんと感じる」


「亜空間倉庫と違って、時間止まらないのね」


「鑑定は、まあさっきから使ってる通り、ステータスとか効果を見れるやつ」


「便利なスキルよね、それ」


「手加減は……これ、パッシブでオンオフできるっぽい。常時オンにしとくわ」


 悠がスキルを操作すると、わずかに纏っていた重圧のようなものが、さらに薄くなった気がした。


「威圧も同じようにオンオフできるけど……こっちはどうしようかな」


「まだ、身を守れる体制が整ってないものね」


 絢乃が心配そうに眉を寄せる。


「ある程度、ちゃんと防御できるようになってから弱めることにするよ。今はまだ、これに頼らないと危ないだろうし」


「賛成」


 綾乃も真剣な顔で頷いた。


◇◇◇


 ひと通りのスキル確認を終え、悠が伸びをしたその時。


「あ、待って」


 絢乃が、何かを思い出したように声を上げた。


「私のスキルも、鑑定してみる」


「絢乃の……ニグ・シュブニトだっけ」


「うん。私自身、正確な効果、まだちゃんと把握できてなくて」


 絢乃のステータス画面を見せてもらう。空中に普通に見えるんだな。ステータスを開く場所は気を付けないと。


「鑑定──」


 視界の中に、新たなウィンドウが静かに浮かび上がった。


【名前】ニグ・シュブニト

【分類】ユニークスキル

【レア度】異界級(ゼノ)

【発動条件】任意発動

【消費MP】料理の質・規模により変動

【効果】生命と収穫の絶対権能。

 ・バフ・デバフ料理の完全制御:調理した食事に、食した者の肉体を最適化・再構築する「永続的強化(バフ)」を付与する。また、極上の美味を保ったまま、敵対者に対してステータス99%低下や神経麻痺・即死を誘発する「猛毒(デバフ)」を付与することも可能。

 ・超豊穣の権能:自身が関わった農地・領地に対し、季節や環境を完全無視した成長加速ボーナスを付与。通常の数十倍の速度で最高品質の作物を収穫可能にする。

【説明文】命の選別と繁栄を司る理外の権能。料理という媒介を通じて、対象を最強の兵器へと進化させるか、あるいは美食と共に死へと誘う。領地経営においては、食糧問題の解決と特産品による経済支配を同時に成し遂げる戦略的要石となる。


 画面に映し出された文字を、三人はしばらくの間、無言で見つめていた。


 絢乃は少し戸惑ったように、自分の手のひらに視線を落とした。


「これ……よく見ると、ちょっと怖い言葉も並んでるわね」


「猛毒とか、即死とか……」


 悠も画面を見つめながら、ごくりと喉を鳴らす。


「絢乃の料理、下手すると兵器レベルの威力ってことか」


「そんな、物騒な言い方しないでよ……」


 絢乃は困ったように眉尻を下げながらも、どこか誇らしさの滲む声で続けた。


「でも、悪いことばかりじゃないと思うの。この『超豊穣の権能』ってやつ、畑にも使えるかもしれないってことでしょう?」


「そうか、明日から始める畑仕事にも活かせるかもしれないな」


「うん。私が関わった畑は、成長速度が何十倍にもなるみたいだから……もしかしたら、私たちの計画、思ったよりずっと早く進むかもしれないわ」


 絢乃の言葉に、悠と茉莉が顔を見合わせる。


「それは、頼もしいな」


「本当ね。絢乃、あなた、とんでもない力持ってたのね」


 茉莉が感心したように、絢乃に抱き着いた。


 絢乃は少し照れくさそうに、けれど嬉しそうに微笑んだ。ルフはもうすでに寝ていた。


「これからは、料理をする時、ちゃんと意識してみるわね。悠くんたちのために、良いバフを込められるように」


「頼りにしてる」


 悠が優しく微笑みかけると、絢乃も柔らかく頷き返した。


◇◇◇


 窓の外では、月明かりが静かに荒れ地を照らしていた。


 スキルという名の、自分たちの新しい可能性。まだ全てを把握しきれていないその力は、恐ろしくもあり、同時に、これからの暮らしを支える確かな希望でもあった。


「よし、今日はここまでにしよう。明日から本格的に畑仕事だしな」


「そうね。おやすみなさい」


「おやすみなさい、悠くん」


「みなさん、おやすみなさい」


 それぞれの声が、静かな夜の中に溶けていく。


 悠は毛布に包まりながら、ふと天井を見上げた。


 自分たちの前に広がる、まだ見ぬ可能性。


 それがどんな未来へと繋がっていくのか──悠は静かに目を閉じながら、そんなことを考えていた。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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