第12話 ステータス確認会議 前編
夜の帳が下りた頃、キャンピングトレーラーの中は、先ほどとはまた違う、落ち着いた空気に包まれていた。
悠は寝転がりながら、ふと天井を見上げて呟いた。
「そういえばさ」
「ん?」
紙の上で設計図を書き込んでいた茉莉が、顔を上げる。
「俺たちのスキルって、名前しか確認してなかったよな。中身、ちゃんと見てなかった気がする」
「言われてみれば……」
茉莉が頬に手を当てて考え込む。
「アイテムボックスとか、なんとなく使い方は分かるけど、細かい効果までは把握してないわね」
「寝る前に、ちょっと確認しとくか」
悠が身を起こすと、絢乃も茉莉とルフも、興味深そうに身を乗り出した。
「私も気になるわ。悠くんのスキル、私たちよりずっと多いものね」
「じゃあ、俺のを軸に見ていこうか。かぶってるのも多いし」
悠は空中に指を滑らせ、ステータス画面を呼び出した。
【固有スキル】神眼 不老不死
【ユニークスキル】種族変更
【エクストラスキル】異世界言語翻訳 オートマップ ステータス偽装 亜空間倉庫 通話 千里眼 戦闘術 魔闘術 魔法物質作成 採集百般 製造百般
【スキル】アイテムボックスLv99 鑑定Lv99 手加減Lv99 威圧Lv99 隠密Lv99 敵感知Lv99 気配感知Lv99 筒術Lv99 騎術Lv99 調教Lv99 解体Lv99 建築Lv99 魔力制御Lv99 魔力感知Lv99
「うわ、改めて見ると数えるのも面倒な量だな」
「固有スキルはいかにも強そうだから、後回しにしましょう」
茉莉が冷静に提案する。
「じゃあ、ユニークスキルから」
悠は『種族変更』の文字に指を伸ばしかけて、ふと動きを止めた。
「あ、そうだ。鑑定スキルがあったんだった。これ使えば、詳しい効果分かるんじゃ……」
「今更気づいたの?」
絢乃が呆れたように、けれどくすりと笑う。
「今までいろいろ見てきたのに、一回も鑑定使ってなかったわね」
「うっ……確かに。ちょっと後悔してる」
悠は苦笑いを浮かべながら、『種族変更』に意識を集中し、鑑定を発動させた。
視界の中に、新たなウィンドウが浮かび上がる。
【名前】種族変更
【分類】エクストラスキル
【レア度】異界級
【発動条件】任意発動
【消費MP】0
【効果】存在定義の完全変革(人神族・鬼神族・龍神族への自由な種族転換)
【説明文】世界のシステム(理)に存在しない、この世界の枠組みを完全に逸脱した唯一無二の規格外能力。外見を模倣するだけの変身とは根本的に異なり、自身の魂と肉体の存在定義そのものを「人神族」「鬼神族」「龍神族」のいずれかへ完全に組み替える。レベルの概念を持たない特殊な性質から【エクストラスキル】に分類されているが、その本質はこの世界の測定不能たる【異界級】の権能である。
「……種族、まるごと変えられるってこと?」
絢乃が画面を覗き込みながら、声を上擦らせる。
「なんか、龍神族とかいうのもあるな。でかくなったら家に入れなくなりそうだから、鬼神族にしてみるか」
「ちょ、いきなり試すの!?」
茉莉が止める間もなく、悠はスキルを発動させていた。
ふわりと、悠の身体を淡い光が包み込む。
光が収まると同時に、悠の体格が一回り大きくなり、額のあたりから、二本の立派な角がにょきりと生えてきた。
「……え」
「つ、角!?」
「おお……」
絢乃と茉莉が同時に声を上げる。ルフは遠い目をしていた。
悠は慌てて洗面台へと駆け寄り、鏡を覗き込んだ。
「うおっ……」
鏡に映る自分の姿を見て、悠は思わず声を漏らす。
凛々しく反り返った漆黒の角。少し鋭くなった目つき。全体的に逞しさを増した体躯。
「角、かっけぇ!」
「あんた、こんな時にはしゃいでる場合……」
茉莉が呆れながらも、興味津々に悠の角に触れる。
「意外と、似合ってるじゃない」
「本当、格好いいわ」
「肉体の構成ごと変えるとは……ケーキおいしい!」
絢乃も感心したように目を輝かせる。ルフは考えるのをやめた。
ひとしきり新しい姿を堪能した後、悠はもう一度スキルを発動させ、元の人神族の姿に戻った。
「よし、満足。次いこうか」
「満足したのね、よかったわね」
茉莉の生温かい視線を受け流しながら、悠は次のスキルに意識を向けた。
◇◇◇
「次、異世界言語翻訳」
【名前】異世界言語翻訳
【分類】エクストラスキル
【レア度】至高級
【発動条件】常時発動
【消費MP】0
【効果】全言語・全文字の完全理解(会話・読解・記述)
【説明文】世界を渡りし「転移者」が神より授かる、被造物の究極到達点たる言語能力。歴史に名を残した過去の英雄たちも保有していたとされ、世界のあらゆる知的生命体が使用する言語において、音声による「会話・受聴」および文字による「読解・記述」のすべてを自身の母国語と完全に同等に扱うことができる。最初から完成された性能を発揮するため、レベルの概念は存在しない。
「道理で言葉に困らなかったわけね」
「これがなかったら、そもそも会話も成立してなかっただろうな」
悠は妙に感心しながら、次のスキルへと視線を移す。
「オートマップ、っと」
【名前】オートマップ
【分類】エクストラスキル
【レア度】希少級
【発動条件】常時発動
【消費MP】0
【効果】周辺地形のリアルタイムマッピング/高低差・構造物の自動描画/罠の識別表示
【説明文】自身を中心とした一定範囲の地形や構造を検知し、高精度の地図を自動かつリアルタイムで作成・更新する能力。一度記録された地図はいつでも脳内、または視界の隅に投影して確認することができる。地形の起伏(高低差)や隠し通路はもちろん、設置された罠の場所まで光点で正確にマッピングされる。
「試しに出してみるか」
悠が意識を集中させると、視界の端に、半透明の地図が浮かび上がった。まるでゲームのミニマップのような表示だ。
「これ便利よね」
茉莉も発動させながら目を輝かせる。
「今まで通ってきた場所、ちゃんと地図になってる……森も、草原も、あの町までの道も」
「これがあれば、俺の方向音痴もカバーできるかもな」
「絶対無理だと思うけど」
茉莉の即答に、悠はがくりと肩を落とした。
視界の邪魔なので切っておく。
◇◇◇
「ステータス偽装、これ絶対使わなきゃいけないやつ」
【名前】 ステータス偽装
【分類】 エクストラスキル
【レア度】 至高級
【発動条件】 常時発動
【消費MP】 0
【効果】 ステータス情報の任意改ざん・隠蔽 / 転移者特有情報(称号等)の完全カモフラージュ
【説明文】 異世界へと転移した者が、自身の身の安全を守るために神より必ず授けられる至高の隠蔽権能。自身のレベル、能力値、スキル、称号などの全ステータス情報を、他者の「鑑定」や「魔眼」に対して完全に偽り、任意の数値や内容に見せかけることができる。特に、世界の住人に過度な警戒や混乱を与える原因となる「転移者」といった特殊な称号や、一般的な種族の範疇に偽装して溶け込むことを可能とする。
「超重要じゃない!今すぐに私のステータスに合わせなさい。ルフもよ」
「オッケー」
「かしこまりました」
茉莉のステータスが一般的だろうからそれに合わせていく。ルフも天使なので変えていく。
「さて次は」
まだ夜は明けない。
最後までお読みいただきありがとうございます。




