第15話 変幻自在
第3マップ開始前。
スコアは1-1。
会場は大きな熱気に包まれていた。
優勝候補同士の激突。
誰もが長期戦を予想していたが、その予想以上の試合になっている。
VIPルームで試合を見守る誠司も自然と身を乗り出していた。
「雷神、強いですね」
隣の美月が小さく呟く。
誠司も頷いた。
「ああ」
第2マップ。
雷神は完璧だった。
Reiを徹底的に封じ、BLUE HAWKへ初めて修正を迫った。
だが。
不思議と焦りはなかった。
なぜなら。
BLUE HAWKは一人のチームではないからだ。
ステージ裏。
ミンジュンが静かに口を開く。
「交代です」
その一言で空気が変わった。
呼ばれたのはEDGE。
一瞬だけ胸が高鳴る。
やっと来た。
ずっと試合を見ていた。
仲間が活躍する姿を見ながら、自分も戦いたいと思っていた。
もちろん悔しさもあった。
だが今は違う。
出番が来た。
チームのために戦える。
それが何より嬉しかった。
「はい」
短く返事をする。
その横でNOVAが立ち上がった。
悔しくないわけがない。
出場したマップを落とした。
もっとやれたんじゃないか。
そんな思いはある。
それでもNOVAは笑った。
「頼みます!」
EDGEも頷く。
「任せろ」
その言葉に迷いはなかった。
大型モニターへ新しい構成が映る。
TIGA 雷虎
EDGE 武神
KING Frost
ANGEL Oracle
SAGE Mercy
会場がどよめく。
「おおっとぉぉぉ!!」
朝倉が絶叫する。
「EDGE選手投入!!」
「さらに2TANK構成です!!」
コメント欄も大騒ぎだった。
『EDGEきた!』
『2TANK!?』
『何でもありかよ』
『面白くなってきた』
試合開始。
開始直後から空気が変わった。
硬い。
とにかく硬い。
TIGAが前へ出る。
その隣にはEDGE。
初めての大舞台。
それでも動きに迷いはなかった。
武神の薙刀が振るわれる。
敵を下がらせる。
味方のために道を作る。
TIGAは思わず笑った。
「やるじゃねえか」
思っていた以上だった。
普段から練習していることは知っている。
だが実戦は別だ。
それでもEDGEはしっかり戦えている。
その事実が嬉しかった。
雷神も必死だった。
目の前に壁が二枚ある。
押しても崩れない。
削っても下がらない。
少しずつ焦りが見え始める。
その瞬間だった。
KINGが笑う。
「ようやく俺の出番やな」
前線に意識が向く。
だから後ろが空く。
Frostの弾丸が通る。
一人。
また一人。
敵の体力が削れていく。
実況が叫ぶ。
「KINGが止まらないぃぃぃ!!」
会場が沸く。
KINGは自然と笑っていた。
Reiがいる時はどうしても視線が集まる。
だが今は違う。
今日は自分が試合を動かしている。
その感覚がたまらなかった。
第3マップ。
BLUE HAWK勝利。
スコアは2-1。
だが雷神も折れない。
第4マップ。
今度は後衛狙いへ変更。
ANGELとSAGEへ圧力が飛ぶ。
試合はこの日一番の激戦となった。
取って。
取り返される。
また取る。
また取り返される。
観客席は総立ち。
Lunaも叫ぶ。
「熱い!!」
Shinも笑う。
「これ神試合やな」
Kuroは腕を組みながら呟く。
「レベル高すぎやろ……」
残り一分。
最後の集団戦。
誠司も無意識に拳を握っていた。
全員が理解している。
これで決まる。
雷神が仕掛ける。
全員前進。
その瞬間。
EDGEが前へ出た。
武神。
天岩砕き。
巨大な衝撃波が戦場を貫く。
雷神三人を巻き込む。
会場が爆発する。
「EDGEぇぇぇぇぇ!!」
朝倉の絶叫。
その声を聞きながらもEDGEの頭は冷静だった。
まだ終わっていない。
勝つまで終わりじゃない。
そこへKING。
Absolute Zero。
極寒の吹雪が戦場を飲み込む。
凍結。
拘束。
そして総攻撃。
大型モニター中央。
ACE。
その瞬間。
会場が揺れた。
「決まったぁぁぁぁ!!」
「BLUE HAWK勝利ぃぃぃ!!」
スコア3-1。
開幕三連勝。
試合終了。
EDGEはようやく大きく息を吐いた。
張り詰めていた緊張が一気に抜ける。
KINGが肩を叩く。
「やるやん」
TIGAも笑った。
「助かったぞ」
EDGEは少し照れながら頭を掻く。
「まだ足りません」
その言葉にANGELが笑う。
「十分だったわよ」
控室の空気は明るかった。
だが。
モニターへ映った次節のカードを見た瞬間。
全員の表情が変わる。
BLUE HAWK。
VS。
BLACK WOLF。
会場人気No.1。
個人技最強軍団。
そして。
Rei最大のライバル。
白狼。
誠司は静かにその名前を見つめた。
次は間違いなく今シーズン最大の試練になる。
だが。
不思議と不安はなかった。
今のBLUE HAWKなら戦える。
そう思えるだけの強さを、今日の試合で見せてくれたからだった。




