プロローグ 侵略者たち
今全話書き直しを行っております。
2章の書き直しはまだ行ってはおりません。
しかし内容はほとんど変わらないので安心してください。
読みにくいかもしれませんがご了承ください。必ず早めに修正を行います。
「正直、面白くないな」
オフシーズン。日本のSTRIKE FRONTIERプロシーンで最も大きな話題となっていたのはBLUE HAWKだった。世界王者監督パク・ミンジュン。日本最強クラスと呼ばれる選手たち。潤沢な資金力と最高クラスの環境。設立から数か月しか経っていないチームが、今や競技シーンの中心になっている。
当然、それを面白く思わない人間もいた。何年も掛けて実績を積み上げてきた。何度も負けて、何度も悔しい思いをして、それでも戦い続けて今の地位を手に入れた。そんな選手たちから見れば、突然現れた新設チームが話題を独占している状況は複雑だった。
「話題全部持っていかれたな」
あるチームの練習室。休憩中の選手たちがモニターを眺めながら話していた。映し出されているのはBLUE HAWKの発表配信だ。
「まあ強いだろうな」
「それは認める」
「でも勝てるかどうかは別だろ」
世界王者監督。豪華なロスター。最新設備。どれも日本では見たことがない規模だった。だがチーム戦は単純じゃない。強い選手を集めれば勝てるなら苦労しない。だからリーグがある。だから王者が存在する。その現実を彼らは誰より知っていた。
同じ頃、昨シーズン王者のチームでもBLUE HAWKの話題が出ていた。
「騒がれてるな」
キャプテンがそう言うと、若手選手が苦笑する。
「期待値は一番でしょうね」
「だろうな」
誰も否定しなかった。実際、あのロスターは強い。世界王者監督まで加わった。優勝候補と言われても不思議ではない。
だがキャプテンは静かに言う。
「王者は俺たちだ」
短い言葉だった。しかし、その一言に全員が頷いた。リーグを制したのは自分たちだ。優勝トロフィーを掲げたのも自分たちだ。その座はまだ誰にも奪われていない。
「来るなら来ればいい」
キャプテンは笑う。
「最後に立ってるのは俺たちだ」
その言葉には王者としての自信があった。
また別のチームでは、若手選手が羨ましそうに呟いていた。
「正直、羨ましいです」
「何がだ?」
ベテラン選手が聞く。
「世界王者監督ですよ。設備も環境も最高クラスですし」
確かにそうだった。誰もが憧れる環境。誰もが欲しがる注目度。
だがベテランは首を横に振る。
「だから大変なんだよ」
若手は首を傾げた。
「注目されるってことはな、負けた時も一番目立つ」
若手は黙った。期待されるチームほど失敗は許されない。優勝候補と言われるチームほど、一度の敗北が大きく取り上げられる。それもまたプロの世界だった。
夜になるとSKYLINEでも議論は続いていた。
『またBLUE HAWKの話か』
『話題独占しすぎだろ』
『世界王者監督は反則』
『金持ちはいいよな』
『正直嫌い』
『でも気になる』
『試合は絶対見る』
『負けるところ見たい』
『優勝するところも見たい』
『今年の主役だな』
好きな人間もいる。嫌いな人間もいる。応援する人間もいる。失敗を期待する人間もいる。だが、一つだけ確かなことがあった。
誰も無関心ではない。
それが何より恐ろしかった。
あるプロ選手は言った。
「倒したい」
ある監督は言った。
「面白い存在だ」
ある解説者は言った。
「今年のリーグを変えるチームになるかもしれません」
評価は様々だった。期待もあれば疑念もある。歓迎する者もいれば敵視する者もいる。だが、全員がBLUE HAWKという存在を意識していた。
まだ一試合も公式戦を戦っていない。まだ何も勝ち取っていない。それなのにリーグ全体がその動向を追っている。
まるで長い歴史を持つSTRIKE FRONTIERリーグへ突然現れた侵略者のように。
そして、その侵略者もまだ知らない。
日本プロリーグは決して甘くない。
王者がいる。強豪がいる。何年も積み上げてきた伝統がある。世界を目指しているのはBLUE HAWKだけではない。
その現実と向き合う日が、少しずつ近付いていた。




