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ゲームは下手だけど、世界一のチームを作りたい!!  作者: 龍崎
第1章 世界一のチームを作ろう

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第38話 強すぎるという欠点

「強すぎます」


パク・ミンジュンの言葉に、練習室の空気が止まった。


誰もが勝ったと思っていた。


韓国のプロ選手たちを相手に三連勝。


内容も悪くない。


むしろ圧倒したと言っていい。


それなのに、世界王者監督の評価は厳しかった。


「どういう意味ですか?」


誠司が尋ねる。


ミンジュンは何も言わず試合映像を再生した。


そして、ある場面で停止する。


画面には大牙が単独で前線を破壊し、別ルートでは響が敵後衛を崩し、その間に蓮がキルを量産している場面が映っていた。


一見すると理想的な攻撃だ。


実際、結果も出ている。


だがミンジュンは静かに言った。


「三人とも自分で解決しています」


響が首を傾げる。


「それって褒め言葉ちゃうんですか?」


「普通ならそうです」


ミンジュンは頷いた。


「普通のチームなら」


その一言で全員が黙る。


ミンジュンは映像を少し戻した。


「ここでTIGAが前線を壊しています」


次に映像が進む。


「KINGが裏から崩します」


さらに進む。


「Reiが仕留めます」


そして映像を止めた。


「全員正解です」


誰も反論できない。


実際に勝っている。


だが。


「全員、自分の力で解決しています」


ミンジュンはモニターから目を離さなかった。


「今日の試合は皆さんの個人能力が相手を上回っていたから勝てました」


「もし世界大会なら?」


静かな声だった。


だが重かった。


「相手も同じレベルです」


「同じか、それ以上です」


練習室が静まり返る。


「その時、一人で解決できますか?」


誰も答えない。


大牙も。


響も。


蓮も。


真剣な表情でモニターを見ていた。


「世界大会では五人で勝ちます」


ミンジュンは続ける。


「一人では勝てません」


「どれだけ上手くても」


「どれだけ才能があっても」


「チームで勝てなければ意味がない」


その言葉には実績があった。


世界王者として積み上げてきた経験があった。


だから重い。


「今のBLUE HAWKは強いです」


ミンジュンははっきりと言った。


「日本最強候補でしょう」


その評価に誰も喜ばない。


続きがあると分かっているからだ。


「ですが」


案の定だった。


「世界一にはなれません」


重い沈黙が落ちる。


しかし誰も反発しなかった。


むしろ納得していた。


この男は世界一になった人間だ。


その言葉には価値がある。


「じゃあどうすればいい」


大牙が聞いた。


ミンジュンは少しだけ笑う。


ようやく本題に入れる。


そんな表情だった。


「チームになることです」


答えは驚くほどシンプルだった。


「Reiは味方をもっと信じてください」


蓮が視線を向ける。


「あなたは解決できてしまう」


「だから任せることを覚えるべきです」


次に大牙を見る。


「TIGAは一人で突っ込みすぎです」


「癖なんで」


「直してください」


即答だった。


大牙が苦笑する。


そして響へ視線が移る。


「KING」


「はい」


「喋りすぎです」


練習室が吹き出した。


「またそれか!」


響が抗議する。


「重要です」


「絶対そんな重要ちゃうやろ!」


「重要です」


ミンジュンは真顔だった。


「コールが多すぎます」


「情報が埋もれます」


「だから喋りすぎです」


響が頭を抱える。


大牙は爆笑している。


蓮の口元もわずかに緩んでいた。


「ですが」


ミンジュンは全員を見渡した。


「可能性はあります」


その瞬間。


空気が変わった。


「皆さんは私の想像以上でした」


初めての明確な評価だった。


「特に」


視線が動く。


蓮。


大牙。


響。


美羽。


「この四人は世界でも戦えます」


ひなたたちが目を見開く。


世界王者監督が認めた。


それだけで価値がある。


ミンジュンは悠真を見る。


「SAGE」


「はい」


「頭が良いです」


悠真が姿勢を正す。


「経験を積めば化けます」


拳を握る。


自然と力が入った。


次にひなたを見る。


「NOVA」


「はい!」


元気よく返事が飛ぶ。


「才能はチームで一番です」


ひなたが固まる。


周囲も驚いた。


だが次の言葉で空気が変わる。


「同時に一番未熟です」


「うっ……」


即死だった。


練習室に笑いが広がる。


ひなたは机に突っ伏した。


そして最後に蒼真を見る。


「EDGE」


蒼真が背筋を伸ばす。


「今はまだ足りません」


厳しい言葉だった。


だがミンジュンは続けた。


「ですが諦める必要もありません」


蒼真が顔を上げる。


「今後次第ではスタメンを奪えます」


その言葉だけで十分だった。


蒼真の目に闘志が宿る。


ミンジュンは全員を見渡した。


そして静かに息を吐く。


誠司はその表情を見ていた。


何となく分かった。


答えが出たのだと。


ミンジュンは立ち上がる。


世界王者監督。


韓国競技シーンの伝説。


その男は真っ直ぐ誠司を見た。


「佐藤さん」


「はい」


「約束でしたね」


誠司は頷く。


ミンジュンも小さく頷き返した。


そして。


「私はBLUE HAWKの監督を引き受けます」


誰も動かなかった。


理解するまで数秒かかった。


最初に反応したのは響だった。


「マジで!?」


勢いよく立ち上がる。


ひなたも続いた。


「本当ですか!?」


大牙は口元を吊り上げる。


蓮も珍しく目を見開いていた。


悠真は息を呑み。


蒼真は拳を握る。


そして誠司は静かに息を吐いた。


長かった。


本当に長かった。


何もない場所から始まった。


選手もいなかった。


環境もなかった。


ただ世界一になりたいという想いだけだった。


そこから仲間を集めた。


Rei。


TIGA。


KING。


ANGEL。


SAGE。


NOVA。


EDGE。


そして今。


最後のピースが埋まった。


パク・ミンジュン。


世界王者監督。


世界を知る男。


その男がBLUE HAWKの指揮官になる。


だがミンジュンはそこで終わらなかった。


全員を見渡し、静かに言う。


「ただし」


練習室が静まる。


「明日から地獄です」


一瞬の沈黙。


そして。


なぜか全員が笑った。


世界一になるためなら。


それくらいでちょうどいい。


BLUE HAWKはこの日、本当の意味でチームになったのだから。

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