第14話 ネットの反響
Shinの重大発表配信が終了してから一時間後。
eスポーツ界隈の話題は完全にBLUE HAWK一色になっていた。
配信終了時の同時接続者数は十二万人を突破。
切り抜き動画は次々と投稿され、SNSでは関連ワードが急速に拡散していく。
人気配信者Shinの加入発表だけでも十分な話題だった。
だが、今回の注目はそれだけでは終わらなかった。
むしろ本当に人々を驚かせたのは別にある。
SKYLINE。
BLUE HAWKが独自開発したeスポーツ特化型SNSだった。
プロチーム設立。
人気配信者加入。
そこまでは理解できる。
だが、自分たちでSNSサービスまで立ち上げる。
そんな事例は国内ではほとんど存在しない。
だからこそ衝撃だった。
サービス開始から数時間しか経っていないにもかかわらず、SKYLINEには凄まじい勢いでユーザーが流れ込んでいた。
トレンドランキングにも変化が現れる。
一位 BLUE HAWK
二位 Shin加入
三位 SKYLINE
四位 世界一のチーム
五位 佐藤誠司
上位を関連ワードが独占していた。
投稿欄にも大量の反応が並ぶ。
『Shin加入は熱すぎる』
『動画のクオリティやばい』
『映画の予告かと思った』
『BLUE HAWK普通にかっこいい』
『ロゴめっちゃ好き』
『SKYLINEって本当にチームが作ったの?』
『資金力どうなってんだ』
『どこの会社だよ』
『社長が上場企業の社長らしい』
『そりゃ金あるわ』
『本気度が違う』
SNS全体が祭りのような状態になっていた。
その熱は配信者界隈にも広がっていく。
ある有名ストリーマーは自身の配信で苦笑しながら語った。
「いや普通さ、チーム作るってなったらスポンサー探すじゃん?」
コメント欄が一気に反応する。
『確かに』
『それな』
『普通はそう』
配信者は続ける。
「でもBLUE HAWKってスポンサー募集の話を全然してないんだよ」
「むしろ自分たちでSNS作ってるからな」
「意味分かんねぇって」
その言葉にコメント欄が笑いで埋まった。
『発想が経営者』
『金の使い方がおかしい』
『スケールでかすぎる』
『普通のチームじゃないな』
『本気感は伝わる』
競技シーンでも同様だった。
現役プロ。
コーチ。
アナリスト。
大会関係者。
多くの人間がBLUE HAWKについて語り始めている。
『施設が気になる』
『練習環境どうなるんだろ』
『アナリスト募集してるらしい』
『スタッフも本格的だな』
『問題は選手だろ』
『そこなんだよ』
その投稿へ大量の反応が集まる。
誰もが同じことを考えていた。
Shinは確かに人気者だ。
だが競技選手ではない。
世界一を目指すならエースが必要になる。
チームの中心。
勝利を託せる選手。
そして自然と一つの名前が浮上し始める。
『Reiとかどうだ?』
その投稿をきっかけに話題が一気に広がった。
『無理だろ』
『あいつ誰の誘いも断ってる』
『大会すら出ない』
『正体不明だし』
『でも見てみたい』
『Reiがプロとか夢ありすぎる』
『世界一目指すならReiしかいない』
『もし獲れたら本物だな』
競技シーン最大の謎。
日本ランキング一位。
正体不明の最強プレイヤー。
その存在は今も多くの人間を惹きつけていた。
◇
その頃。
鹿児島市内のアパート。
天城蓮はベッドへ寝転びながらスマートフォンを眺めていた。
画面に表示されているのはSKYLINE。
正式サービス開始からまだ数時間しか経っていない。
それにもかかわらず利用者数は十万人を突破していた。
「凄いな……」
思わず小さく呟く。
普通ならチーム発表だけで終わる。
だがBLUE HAWKは違った。
配信。
PV。
公式サイト。
SNS。
コミュニティ。
全てを同時に動かしている。
しかも完成度が高い。
まるで何年も前から準備していたかのようだった。
蓮は指を動かしながら投稿を眺めていく。
その時、おすすめ欄に一つの投稿が表示された。
『BLUE HAWKのエース予想』
一位 Rei
二位 未発表の海外選手
三位 現役プロ引き抜き
思わず苦笑する。
少し前までなら完全に他人事だった。
ランキング上で名前が出るのはいつものことだ。
だが今は違う。
佐藤誠司と会った。
BLUE HAWKを見た。
SKYLINEも使った。
そして何より。
あの男が本気だということを知っている。
「世界一か……」
誰もいない部屋で小さく呟く。
その言葉は昔から憧れだった。
もっと強い相手と戦いたい。
世界の頂点を見てみたい。
そう思ったことは何度もある。
だが現実的ではないとも思っていた。
少なくとも一人では。
蓮はスマートフォンを胸の上へ置く。
天井を見上げながら、あの日の会話を思い出していた。
世界一になりたいと思ったことはないか。
その問いが頭から離れない。
◇
同じ頃。
東京のBLUE HAWK本部では誠司たちがSKYLINEのデータを確認していた。
登録者数。
アクティブユーザー。
投稿数。
滞在時間。
どの数字も予想を大きく上回っている。
サービス開始初日。
登録者数十三万人突破。
異例と言っていいスタートだった。
「大成功ですね」
美月が嬉しそうに言う。
Shinも頷いた。
「正直ここまで伸びるとは思わなかった」
だが誠司だけは別の画面を見ていた。
登録者数ではない。
トレンドランキングでもない。
そこに映っているのは一枚の資料だった。
天城蓮。
その名前が表示されている。
「社長?」
美月が不思議そうに声を掛ける。
誠司は資料から目を離さない。
そして小さく笑った。
「反響は十分だ」
「はい」
「次はエースだな」
BLUE HAWKは今、大きな注目を集めている。
ファンも増えている。
知名度も上がっている。
だが誠司は知っていた。
本当のスタートはまだ先だということを。
日本最強プレイヤー。
天城蓮。
彼を獲得した時。
その瞬間こそが、BLUE HAWKが本当に世界を目指すチームになる始まりなのだから。




