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ゲームは下手だけど、世界一のチームを作りたい!!  作者: 龍崎
第1章 世界一のチームを作ろう

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第11話 初対面

「天城蓮君かな」


昼休みで賑わう大学の食堂。


友人たちと昼食を取っていた蓮は、突然掛けられた声に顔を上げた。


目の前には見覚えのない男が立っている。


三十代半ばほどの男性。


落ち着いたスーツ姿。


その後ろには女性と若い男が控えていた。


どう見ても大学関係者ではない。


むしろ、この場所には似合わない空気をまとっている。


蓮は箸を置き、相手を見上げた。


「誰ですか?」


男は落ち着いた様子で名刺を差し出す。


「初めまして。佐藤誠司です」


受け取った名刺へ視線を落とした瞬間、蓮の表情がわずかに動いた。


SEIZE NEXT株式会社。


代表取締役社長。


会社名には聞き覚えがある。


IT業界では有名な企業だ。


ニュースでも何度か見たことがあった。


だが、そんな人物がなぜ大学の食堂にいるのか理解できない。


「話がある」


佐藤はそう言った。


蓮は隣にいる友人たちを見る。


全員が完全に固まっていた。


無理もない。


突然現れたのが上場企業の社長なのだから。


蓮は再び佐藤へ視線を戻した。


そして真顔で尋ねる。


「宗教ですか?」


後ろでShinが吹き出した。


美月も慌てて口元を押さえる。


だが佐藤だけは真面目な顔のままだった。


「違う」


「投資ですか?」


「違う」


「マルチ商法?」


「違う」


「じゃあ何ですか」


佐藤は一切迷わなかった。


「君をスカウトしに来た」


蓮の思考が一瞬止まる。


意味が分からなかった。


自分は大学生だ。


就職活動中でもない。


芸能人でもない。


スポーツ選手でもない。


そんな自分をスカウトする理由が思い浮かばなかった。


           ◇


その後、場所を変えることになった。


大学近くのカフェ。


昼下がりの店内には学生の姿が多く、窓際の席ではレポートを書いている者もいる。


そんな中、四人は奥のテーブル席に座っていた。


蓮はアイスコーヒーへ口を付けながら、改めて目の前の男を見る。


やはり変な人だと思った。


普通なら事前に連絡を入れる。


アポイントを取る。


それから会う。


だがこの男は大学まで来た。


しかも本人確認まで済ませている。


行動力が異常だった。


「改めて言う」


佐藤が静かに口を開く。


「君をスカウトしに来た」


「だから何の話ですか」


蓮が呆れたように返す。


すると佐藤は短く答えた。


「eスポーツだ」


その瞬間だった。


蓮の表情がわずかに変わる。


ほんの一瞬。


気付かない人間もいるだろう。


だがShinは確信した。


間違いない。


本人だ。


佐藤はそのまま続ける。


「Rei」


空気が変わる。


蓮の動きが止まった。


数秒の沈黙。


やがて蓮は小さく息を吐く。


「誰から聞いたんですか」


「企業秘密だ」


「怖いですね」


「よく言われる」


そのやり取りに美月が苦笑する。


蓮は椅子へ深く座り直した。


正体が知られていたことには驚いた。


だがそれ以上に気になっていることがある。


目の前の男だ。


普通のチーム関係者とは何かが違う。


そんな感覚があった。


「それで?」


蓮は尋ねる。


「何だ」


「何で俺なんですか」


佐藤は迷わず答えた。


「日本一だからだ」


あまりにも単純だった。


だからこそ少し笑ってしまう。


「単純ですね」


「シンプルな理由の方が好きだ」


蓮は思わず口元を緩めた。


変わった人だ。


今まで話を聞いたどのチーム関係者とも違う。


だからこそ警戒心が完全には解けない。


「プロになる気はないです」


先にそう伝える。


断るつもりだった。


いつも通り。


これまでと同じように。


だが佐藤は驚きもしなかった。


「そうか」


その反応に逆に蓮が首を傾げる。


「驚かないんですね」


「調べたからな」


佐藤は肩をすくめた。


「今まで何度も断ってるんだろ?」


「まあ」


「理由は?」


蓮は少し考えた。


隠す必要もない。


だから正直に答える。


「信用できないからです」


店内の喧騒が遠くなる。


蓮は静かに続けた。


「夢を語る人は多いです」


「世界を目指そうって言う人も多い」


「でも実際は環境がない」


「選手任せになる」


「そういう話を何度も見てきました」


言葉には実感があった。


ネット越しに。


競技シーンの噂で。


知人の話で。


何度も聞いてきた現実だった。


才能だけでは勝てない。


環境が必要だ。


だが日本には、その環境が足りない。


「だから興味がないんです」


蓮はそう言った。


大学を卒業する。


就職する。


その未来も悪くない。


少なくとも将来が見えない世界へ飛び込むよりは安定している。


そう考えていた。


だが佐藤は否定しない。


反論もしない。


ただ黙って聞いていた。


それが少し意外だった。


「なるほど」


やがて佐藤が頷く。


「何ですか」


「君がプロにならない理由は分かった」


その答えに蓮は立ち上がろうとする。


話は終わりだと思った。


だが佐藤は引き止めない。


焦りもしない。


契約の話もしない。


その余裕が逆に気になった。


「一つだけ聞いていいか」


蓮は立ち止まる。


「何ですか」


佐藤は真っ直ぐ蓮を見る。


その目だけは最初から変わっていなかった。


「世界一になりたいと思ったことはないか」


空気が変わる。


蓮の動きが止まった。


Shinも。


美月も。


誰も言葉を発しない。


その質問だけは簡単に流せなかった。


なぜなら答えを知っているからだ。


蓮自身が。


しばらく沈黙した後、小さく笑う。


「ありますよ」


即答だった。


迷いはない。


「何度も」


日本ランキング一位。


アジア上位。


それでも満足したことは一度もない。


もっと強い相手と戦いたい。


もっと上へ行きたい。


世界最強を倒したい。


その気持ちは今も消えていない。


佐藤は静かに頷いた。


そして言う。


「俺は世界一のチームを作る」


蓮は黙って聞いている。


「夢じゃない」


「本気だ」


「だから会いに来た」


静寂が流れる。


蓮は佐藤誠司という男を見つめる。


夢を語る人間は何人も見てきた。


だが、この男は少し違う。


そんな気がした。


すると佐藤は鞄から資料を取り出す。


「ちなみに」


「?」


「まだ選手は一人もいない」


蓮は思わず吹き出した。


「は?」


「チーム作ったばかりだからな」


「何それ」


思わず笑う。


本当に笑ってしまった。


今まで受けてきたスカウトの中で、こんな話は初めてだった。


「チーム名はある」


「そこはあるんだ」


少し得意げに佐藤が言う。


「BLUE HAWK」


蓮はもう一度笑った。


変なチームだ。


変なオーナーだ。


だが不思議と嫌ではない。


そして佐藤は確信していた。


天城蓮はまだ断っていない。


それだけで十分だった。

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