(エリオット×ミチル)「特効:寂しい」
夕飯は一人で食べてもおいしくなかった。
いや、お城から出向のコックが作ったのでおいしくないはずはないけれど、そこは気持ちの問題だ。
それでもミチルは夕食を残さずに食べた。誰かエライと褒めて欲しい。
……褒めてくれそうな人はまだ帰らない。
食器を片付けると、ミチルにはいよいよやる事が無くなった。
エリオットはまだ帰らない。
今日は王宮で王様達と会食をしている。これも王子様のオツトメだ。
ミチルは政治の話とか、ハイソな会話とかはしたくないので留守番をするしかない。
それは充分わかっているけれど、留守番はやっぱり寂しい。
意地悪で、癇癪持ちで、騒がしいエリオットが隣にいない。
こんなに静かだなんて、ちょっと悪寒すら感じてしまう。
「ふわあああ! しっかりしろ、オレぇ!」
ミチルは自らを奮い立たせるべく、大声をだして立ち上がった。夜ですよとか、そんなのは意識外。
これではダメだ。エリオットの存在のみに自分の価値を見出すなんて。依存になってしまう、危険。
「でもなー、もう夜だから急に何するって言ってもなー」
ミチルの独り言は大きい。
「うーん。あっ! エリオットってば着替える時散らかしたんじゃない!? 片付けてあげなくっちゃ!」
なんという名案。
夜にピッタリな家事を見つけたミチルは足取り軽くクローゼットに向かった。
「ほーらね!」
雑然と衣類が散らかったタンス周りに、ミチルは行動指針をロックオン。
放っておいても使用人がやってくれるが、「夫♡」の洋服を整えるってなんかいい。
「うふっ、うふ。エリオットの匂いがするう……♡」
ミチルは悦に入って、エリオットのシャツにまみれていくのだった。
おや、片付けるはずでは?
「ただいまー、ミチルー?」
いくらも経たないうちにエリオットが帰宅した。
彼は彼で、普段全くしない堅苦しい話を散々してきたので肩が凝って疲れている。
こんな気分の時は、出迎えてくれたミチルの小さくて柔らかい身体を抱きしめるに限る。
それなのに。
「ミチルー?」
柔らかいアイツが出てこない。
「何してんだよ、おれ様のご帰還だぞー!」
玄関先でソワソワ待つなんて性に合わない。
エリオットはドスドスと家中を歩いて、柔らかくて小さい、あったかくていい匂いの伴侶を探す。
「ミーチールー!?」
苛立ち始めたエリオットが立ち止まったのは支度部屋。
散らかしたままのクローゼットの中に。
「……ミチル?」
エリオットの最愛ラバーはクローゼットの中に隠れていた。さすがの小ささである。
いや、隠れているというのは正しくないかもしれない。
「っふ、何してんだ、コイツ」
エリオットのシャツやらジャケットやらを被って、まるで巣作りのよう。
ミチルはエリオットの衣服にまみれて、なんかニヤニヤしながら眠っていた。
「うにゃへへ……」
留守番が相当寂しかったんだろう。
エリオットの匂いにくるまって、こんな所で自分を慰めて。
「オメー、可愛すぎるぞぉ……」
その場で腰が砕けるエリオットであった。
「……ふに?」
ミチルは急に目が覚めた。
ふと直前の行動を思い出す。
エリオットのタンスを片付けようとして……
シャツの匂いがしたから、包まりたくなって……
安心して寝ちゃったのか……?
ていうか、シャツよりも匂いの濃度が高い気がするぞ?
「おっ、ミチル。起きたのかよ」
「ふひっ、エリオット!?」
いつの間にかの寝室ベッド。
ふっかふかで、エリオットの胸に収まっていました。
いい匂いがムンムンです!
ミチルに添い寝していたエリオットはにまぁと笑う。
「エライぞぉ。まだ宵のうちに目が覚めてよぉ……」
「うん? うう、ん?」
ミチルはまだ意識が少しおぼつかない。
だがすぐに、イヤン♡な刺激が与えられる。
「ふにゃあ!」
「ミチルゥ……寂しかったんだろお? オメー、ちゃんと言えよお」
イヤン♡な刺激が大きくなります!
「にゃにゃあ!」
それからエリオットのやる気満々の笑顔が迫ります!!
「いーっぱい、可愛がってやるぜえ♡」
ミチルは結構寂しかった。ほんとはエリオットをずっと感じていたい。
そのエリオットが今はすぐ側で、密着して体温を高めている。
だから。
思わず。
ほんの出来心で。
「お、お願いしまぁ……す♡」
とにかくいっぱい可愛がってもらいました。
明日の朝という概念は無いものとなりました……




