(アニー×ミチル)「裏取引現場!?」
オレの名前は坂之下ミチル!
平凡な大学に通う、平凡な大学生さ! だけど今、オレは都会のオシャレタウンでオシャレカフェバイト中!
ここで働いている時だけ特別な制服を着て、特別なオレになれるんだ!
特別なオレには、いつかきっと特別な「最愛」が……
こんなオシャレタウンの、富裕層かオシャレに夢中な若者しか来ないカフェで(※ミチルの偏見です)事件の匂い。
一番端に席で、男性二人がヒソヒソ話し合って何かをやり取りしている。
「……アニキ、じゃ、これ。例の」
「おう、いつも世話かけるな」
店員のオレから見て手前に座ってるのは、大きな背中のクマみたいなおじさんだ。その人が大きいせいで、奥の席の男は声しか聞こえない。
「……手に入れるの、苦労したんだからね」
「いやあ、お前さんに頼んで良かったよ」
どうやら手前の男が奥の男に依頼して、何かを受け取ったみたい。
喫茶店でこんなやり取り、ドラマだけだと思ってた。でもオレは実際目にしちゃってる。
一体何をやり取りしてるんだろう。
お金? それとも土地権利書?
まさか……怪しい白い粉じゃないよね?
「じゃあ、オレァ、ボスにすぐ渡しに行かなくちゃなんねえ」
「気をつけろよ。OJにバレたら元も子もない」
……何それ!? 何かの暗号?
それとも殺し屋のコードネーム!?
聞き耳立ててビビり散らかしているオレに、手前の男は気づかず、ササっと立って店を出て行った。
後に残されたのは。
残されたのは……
「ん?」
「ほわぁあ!」
オレは思わず叫んでしまった。
そこには金髪碧眼の超絶イケメンが座ってた。しっぽ髪が野暮ったいけど、逆になんか危険な香りがする!
「君、ちょっと」
「はひっ!」
バレたぁあ! 見てたのバレたァア!
超絶イケメンが手招きしてる、逆らえない!
「君……俺達の会話、聞いてたね?」
「ほひっ、はひっ、はいぃ……!」
イケメンの問いに嘘なんかつけない。ていうか、言い逃れとか出来ない危険な雰囲気だった。
金髪碧眼の裏取引(?)お兄さんはオレの手を掴んでニッコリ笑う。
「お客様の会話を盗み聞きするなんて……イケナイ子だなあ?」
あっ……もうダメ、確定です。
口封じされちゃうヤツだと思います。サヨナラ、オレのオシャレ生活……
「あのね、君、勘違いしてるね?」
「──ほへ?」
泣きそうなオレに金髪碧眼お兄さんが笑いかけた。
「ふふふ、漫画の見過ぎじゃない? 今のは怪しい取引とかじゃないよ」
「へっ?」
金髪碧眼イケメンさんはさらに悪戯っぽく笑う。呆けたオレにはなんだか魅惑の悪魔のように見えた。
「俺はアニー。私立探偵……だけど、実際は何でも屋さ。今もね、とある会社の社長さんからの真っ当な依頼だよ」
「そ、そうなんですか? 今の人、社長サン……?」
オレは恐る恐る金髪碧眼イケメンさんに聞いた。すると彼はまた笑って答える。
「ううん、あのおっさんは部下。社長さんのお嬢さんの誕生日にね、トップアイドルのコンサートチケットを調達したんだ」
「ああっ、OJってお嬢さんってコト!?」
なんでわざわざそれ隠語にした? 不思議な疑問もあったけど、目の前のイケメン──アニーの顔が良すぎてどうでも良くなってしまった。
「そう。ね、全然怪しくないでしょ?」
「は、はあ……」
私立探偵がどうやるとアイドルのコンサートチケットが取れるんだろう。意外と危ないかもしれない、というオレの不安はやっぱりアニーの顔が良すぎてどうでも良くなる。
「で、もぉー、君には随分喋っちゃったなー」
アニーは楽しそうに笑ってオレの握ったままの手に、指を絡ませてきた。
「ひゃっ、ああ!」
そんなに艶めかしくサワサワされたら、なんかドキドキしちゃう!
「君、名前は?」
「あ、坂之下ミチルですけどぉ……」
店長からお客様に名乗っちゃダメって言われてるのに、気づけばオレはスルッと名前を言っていた。
これもアニーの顔が良すぎるからだ。
「そう、ミチル。君、ここのバイトは今日で辞めない?」
「ふええっ!?」
「俺、君が気に入っちゃったあ♡ 俺のアシスタントしない? バイト料ははずむよ」
「ええええっ!?」
戸惑いまくるオレに、アニーは絡めた指にキュッと力を込めて、碧い瞳を光らせて笑った。
「ぜーんぶ教えてあげる……俺のこと♡」
「ほにゃあぁあ……」
その日、オレはカフェバイトを辞めてました……




