(エリオット×ミチル)「カフェで指名出来たっけ?」
オレの名前は坂之下ミチル!
平凡な大学に通う、平凡な大学生さ! だけど今、オレは都会のオシャレタウンでオシャレカフェバイト中!
ここで働いている時だけ特別な制服を着て、特別なオレになれるんだ!
特別なオレには、いつかきっと特別な「最愛」が……
た、大変だあ。
もんのすごいイケメンが誰かを待ってる……!
青みがかった髪の毛をボブカットに伸ばして、メチャクチャ色白で王子様みたいな人です。
なんかキラキラなオーラも見えます。そんな人が待ちぼうけみたいに、もう三十分も一人でいるんです。
プリンス系イケメンが普通にやってくる所は、さすがのオシャレカフェ。こういうシチュエーションに出会えるからバイト面接受かって良かった。
でも……
「……」
プリンスイケメンが、誰を待ってるのか気になっちゃう。
こんな綺麗な人を待たせるんだから、きっとものすごい美女が来るんだろう。
そう、こんなぼっちモブのオレには関係ない。大学デビューで滑ったオレなんか。
「おい、そこのお前」
「ふえっ?」
あんまり見ちゃ悪いから仕事に集中しようと思っていた矢先、プリンスイケメンから声をかけられてしまった。
「ご、ご注文で、ですか……っ?」
きゃあぁ、かっこ良すぎて声が上ずるぅう。
そんなオレの緊張を感じたのか、プリンスイケメンはニヤリと笑っていた。
「おいおい、そんなに緊張しなくていいぜ。まあ、無理もねえけどな」
「は、はあ……?」
あれ、この人、自分がイケメンだって知ってる系のイケメンなのかな。だとすると話が変わってくるぞ。
イケメンは自分の美に対しては鈍感でなければならないのに。(※ミチルの偏見です)
「ふっふ、テレビでしか見られないおれが目の前にいる感想はどうよ?」
「テレビ……? ひょっとしてゲーノージンの人ですか?」
なるほど。芸能人なら常識外れの美でも納得出来る。オレは知らない人だけど。
えっ、芸能人!? 突拍子がなさ過ぎてオレは驚きが後から湧いてしまっていた。
「ハアァ? お前、おれ様を知らねえのか?」
「す、すすす、すみませえーん!」
ヤバイ! 即驚いてしかるべき案件に、完全に乗り遅れた! オレってほんとバカ!
「伝説の子役エリィを知らねえのか、お前は!?」
「ごめんなさい! テレビはアニメしか見ないのでええ!」
子役からキャリアがあるガチの芸能人だった!
怒らせたらオレは業界にはいられなくなる!? 業界ってドコ?
「……ンだよ、ちっくしょー」
だけど子役イケメン・エリィさんは怒らずにトーンダウンして頬杖をついた。
指でテーブルをトントン叩いてイライラをオレに見せつけてくる。
「あのー、お待ち合わせか何かですか?」
……って聞いて欲しいんだろうなー。
「まあな。おれ様、今度ドラマの主演やんだよ。その取材なんだけど、記者が来ねえ」
「ははあ。ドラマってどんなドラマですか?」
……って聞いて欲しいんだろうなー。
「ふふん! ダメ新入社員のおれが実は某国の王子様だった!っていうラブロマンスだ☆」
「お、おお……」
すんごいB級コメディ臭がするけど大丈夫かな。ど深夜帯ですかね? ……とかは言えなかった。
「おい、絶対見ろよ。一話の感想、聞きに来るからな!?」
「えええー? まあ、見ますけどぉ」
内容はさておき、貴方の姿が見れるなら録画までしますけど。
オレの受け答えに満足したのか、エリィさんは席を立とうとしていた。
「ハイハイ、時間切れだ。撮影が始まるからおれは行くぜ」
「撮影ですか、頑張ってくださいね」
……って言って欲しいんだろうなー。
「ふん。まあ……収穫はあったな」
「ほえ?」
エリィさんはなんだかほっぺを紅くしてオレを見る。
さすがのキャリアでも主演のプレッシャーとかがあるんだろうか。
「おい、おれ様は休憩のたびにここに来るからな。いつでも準備しておけよ」
「はわ、わかりました!」
大変だ、店長に言わなくちゃ。超極太客をゲットしましたよって。
「……お前が必ずいろって意味だからな!」
「はい?」
「おれ様の給仕はお前にしかさせないから、そのつもりでいろよ!!」
「ふええ!?」
カフェで指名はできません! 聞いたことないよ、そんな制度!
「お前、名前は?」
「ミ、ミチルです!」
しまった、なんか雰囲気にのまれて名乗っちゃった。
するとエリィさんはにまぁと笑って言う。
「よし、ミチル! お前はおれ様こと『天才主演俳優エリオット』専用メイドだぜ!」
どこ見て言ってる!?
オレのナニを見てメイド指名してんの?
「じゃあな、愛してるぜ!」
「ぴえ……っ!?」
最後に爆弾的な捨て台詞を残してエリオットは去って行った。
事の顛末を店長に話したら、鬼のようなシフトを組まれました。
あ、でも時給もちょっと上がりました♡




