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8月5日 その⑮

 

 Qの頭蓋を鷲掴みにして、そのまま遠くへ投げるのは一人の救世主──魁亜。

 もう一度、Qの頭の立方体が赤に変化する。魁亜も、俺と一緒でイエローなようだった。


「──先程から思っていたのだけれど、どうやら君達のクラス同士は協力関係を結んでいるようだね」

 窓ガラス衝突して床に叩きつけられるように落下して尚、余裕そうに言葉をこぼすQ。それに対して、魁亜はイラついたような表情でこう返す。


「協力関係だぁ? そんなもん結んだ記憶はねぇ。目下、俺とコイツらの共通の敵がお前だったってだけだ」

 吐き捨てるようにそんな宣言をした魁亜。それを見たQの懐からは、黒い筒が取り出される。


「──銃!」

 Qは、俺が先程全弾使い切ったはずの銃をこちらに向ける。いつの間に弾を充填していたのだろうか。

 いや、そもそも一発も入っていないがハッタリとして向けているかもしれない。


「──お前ッ! 銃を持ち込んでるのかよ!」

「当たり前だ。ルールで禁止されていなかったし、私にとっては腕時計のようなものだ」

 平然とした顔でそう語るQ。銃弾が入っているのかわからない。だけど、その心配をする必要はすぐに無くなった。何故なら──


「──私はね、1%でも負ける可能性がある戦いはしない主義なんだ。1%の可能性は、野望の為にとっておきたいからね」

 ゆっくりと立ち上がっったQは、俺達の方に背中を向けるようにゆっくりと振り返ると、そのまま窓を割る。手元にあった銃を窓に強く叩きつけることで、ガラスを割ったのだった。


 びゅうびゅうと44階に風が吹き抜けて、Qの着ているスーツの黒いジャケットが揺れる。

 瞳を乾かすような冷たい風を右腕で防ぎながら、細目でQのことを見ていると、彼はこちらを振り返って──


「──池本栄君。もう一度、君と出会えることを楽しみにしているよ」

 そう口にして、Qは窓から飛び降りる。潔いほどの敵前逃亡。俺と魁亜の2人は、声を失ってしまう。

 だけど、2人で顔を見合わせて後に割られた窓の方に駆け寄って下を覗いてみる。

 だが、もうそこにQの姿は無かった。落下死──だなんてそんな馬鹿げたことはないだろう。もしそうだとしたら、どんなギャグかと思ってしまう。


 ──どんな形かはわからないが、Qのことだからしぶとく生き残っているはずだ。

 居場所が割れてしまった以上、安心できないな──そうやって移動を決意したその時だった。


 チーン、とエレベーターが到着した軽快な音が鳴って扉が開く。まさかQではないだろうな──と、少し不安に思いながら振り返ると、エレベーターの中から現れたのは智恵と冴恵香、そして純介の3人だった。


「──純介!」

「栄。無事でよかった」

 俺と純介は、拳をコツンとぶつける。俺達のチームの参謀は、誰に襲われることなく合流できたようだった。とりあえず、Qという脅威は去った。これで一安心である。俺達は、最上階に移動して割れていない窓の外を眺めながら、今後の展望を話し合う。


「──で、だ。確認したいんだけどどうして魁亜が助けに来れたんだ?」

 このデスゲーム会場で一番高い所からの絶景を見ながら、そう話し合う。


「──俺はお前らが冴恵香と出会うよりも先に会えていた。で、俺は他の皆を探しに行っていたわけだ。そこで、俺と純介は途中でたまたま合流して、そのまま待ち合わせ場所であるこの建物に帰ってきてた」

「成程」

「そしたら、急に窓ガラスが割れたから何事かと思って駆けつけたんだよね。そしたら、一階に智恵と冴恵香がいたからさ」

 魁亜と純介がそう説明してくれる。どうやら、Qが窓に向けて放った銃弾でガラス片が飛び散り、それで純介達はここに気付いたようだった。


「何はともあれ、助けに来てくれて助かったよ。もし助けてくれなかったら死んでたかも」

 俺の頭の立方体は、赤色に変わってしまっているようだった。だけど、馬乗りにされたこともあるし投げ飛ばされもしたのだから仕方ないだろう。


「──私じゃどうにも出来なかったから、魁亜が来てくれて助かった。ありがとう、魁亜」

 冴恵香そう口にして、魁亜に笑いかける。魁亜は、少し気恥ずかしそうにしていた。


「──で。ここから見える景色からでもわかるように、今いるこの建物はこのデスゲーム会場の中で一番高い建物だ。きっと、僕達と同じような発想でこの建物に近付く人は多いと思う」

 純介が話を真面目な方に戻してくれる。俺達の視線が窓の外の方に向けられた。

 純介の意見も最もだ。実際、ここにいた人は全員建物が高いから──という理由でこの建物に吸い込まれるようにしていた。


 Qもここに来ていたようだし、移動した方が無益な接敵を減らすことができるだろう。

「──ここに居続けるのは接敵の可能性が増えるから危険だ。でも、このデスゲームに参加している人の37.5%は僕達の味方。それを考えると、もう1人か2人くらいはこの建物に流れ着いて来る可能性も高い」

 純介がそう話を続けるから、俺も言いたいことがわかってきた。純介が言いたいのは──


「──この建物の近くの別の建物で、この建物に入ってくる人を見張るべき。そう言いたいんだな?」

「正解。入り口が見える建物に移動しよう。そして、少しでも合流しよう」


 ──こうして、俺達の滞在先は決まった。

 そうなると、俺の憂慮は未だ合流できていない皆の方に向けられる。愛香は今どこにいるだろう──。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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