8月5日 その④
人間甘言唯々諾々が5人の仲間を引き連れて会議場に姿を現す。
そこに第二回生徒会メンバーである2人──大神天上天下と猫又一心不乱がいることに関しては特におかしいとは思わない。だが──、
「どうしてここに──」
「──って、お前ェェェ!」
第三回生徒会メンバーである柊紫陽花に九条撫子・深海ケ原牡丹の3人が存在していることに俺が静かに驚いていると、ロン達のいる方向から甲高い声が聴こえてくる。
ビクリと俺と智恵が静かに肩を震わせてその方向へと顔を向けると、唯々諾々達の方向へ指を差しながら驚いたような、怒ったような顔をしている女児の姿があった。
「──お前、栄達のクラスに……」
「ココロちゃん、静かにしよっか」
唐突に騒ぎ声をあげた女児──ココロちゃんと呼ばれていた彼女の口を、ロンが塞ぐ。彼女はもごもごと聞き取れない何かを口にしながら体をジタバタさせるけれども、ロンからは逃れられない。
「 のパイロ
あ ッ
も 栄の ト
私 。 所 ゴ
る。 に ー
あ たい グ
が ル
覚見はに」
ココロちゃんが必死の抵抗を見せている中で、隣に立っている奇怪な格好をした少女がそんなことを口にしている。ピンク色のワンピースのようなものを着ているけれどかなり大きく膨らんだパニエが穿かれている。圧縮されたピンク色の縦ロールも、触覚も全部がくるくるだ。
「──紫陽花も撫子も、俺達に協力してくれてたんじゃないのかよ」
紫陽花は愛香に恩義を感じて居そうだったし、撫子も智恵の「七つの大罪」の師匠としてよろしくやっていた。それだと言うのに、人間甘言唯々諾々に協力するとは思わなかった。
「すまんな、栄。妾達は一人の人間である前に生徒会なのだ。デスゲーム運営にも、先輩にも逆らえない」
紫陽花は悲しそうに笑みを浮かべながらそんなことを口にする。深海ケ原牡丹はいつも通り冷めた目をしているし、撫子も警戒したような厳しい表情をしていた。
──もしかしたら、第3回生徒会メンバーは俺達と争うことに乗り気ではないのかもしれない。
当然だ。これまで交流を深めて来た。それなのに唐突に争わされる。
「というわけだから、私達はもうお前らに情けを欠けたりしない。次会った時には殺すから。逃してもらえるとか思わないで」
俺──ではなく智恵の方を睨みながら撫子はそんなことを口にする。疑われそうになっていた俺と唯々諾々のクラスの協力関係を表面上だけでも切った形になるだろう。俺としては、冴恵香や光との協力関係が露呈しなければそれでいい。まぁ、撫子や紫陽花の2人に他クラスと協力することを話さなくて正解だった。と、俺が安堵とも緊張ともつかない歪な感情を抱えていると──、
「妾もだ。貴様らの背信行為には心底失望した。だから、次に会った時は殺す。絶対に、だ」
愛香がそう口にして、挑発して来た撫子の方へと火花を散らす。そこには到底演技だとは思えないような凄みがあった。
そうしてバチバチしていると──
「あら、愛香。またケンカしてるの?バカは飽きなくていいねぇ」
そんなことを口にしながら、会議場に入ってくるのは7つ目のクラス──園田茉裕であった。
その後方には、安土鈴華と鼬ヶ丘百鬼夜行、津田信夫。そして──、
「「──ぁ」」
2つの息が同時に漏れ出る。それぞれ別の人がそこに存在していることに驚き、体を固まらせた。
「──拓人」
「──靫蔓」
梨花と紫陽花。2人が、別の名前を呼ぶ。驚いているのだろう。当然だ。
紫陽花はそもそも死者と会えることなど把握していなかっただろうし、梨花は目当ての人物と対面できたのだ。
──が、単純には喜べない。だって、こっちと彼らの間には大きな問題があって──。
「すまんな、栄。今度は敵や」
円卓を挟んだ反対側。架け橋が途絶えたことを告げるのは、他の誰でもない信夫。
申し訳なさそうにそんなことを口にする彼は、何を条件にこのゲームに参加させられたのだろう。
わからない。わからないけど、そんなことは関係ない。
これはデスゲーム。敵になったら倒すだけ。ただ、それだけの話だ。
「──久しぶりだな、主人公。帰って来たぞ、ライバルが。地獄の底からな」
拳を俺の方へと向けてウインクをする靫蔓。これはこれで彼らしい。最初から最初まで俺達の敵──もといライバルのまま死んだ。ラストバトルで協力体制を取ったけれど、あんなものはイレギュラーだ。
ライバル関係という形に落ち着いているのであれば、それで構わない。今回も敵となる。それだけだ。
──さて、これだけのメンバーが揃い踏みとなった第9ゲーム。
残っている1クラスは、Qが指揮する犯罪者クラスだけだ。できれば来てほしくないクラスで会ったけれど、集合時間直前の49分。そこに、6人の黒服の姿が見えて──
「いやー、待たせて悪かったね。準備が遅れて」
囚人服ではなく、黒いスーツに身を包んだ人物が6人いる。Qと隆貴。知らない人が4人。1人は皇斗と同様に仮面を被っており顔はわからないけれど、体格は男性のものだった。
俺は、智恵の手をギュッと握る。智恵の恐怖が手から伝わってきた。
「──大丈夫。俺がついてる。もう怖い思いはさせない」
智恵の耳元で囁く。ギュッと目を瞑っている彼女は、苦しそうな顔でゆっくりと一度、首を縦に振った。





