8月5日 その③
──11時30分。
約束の時間である12時──これはデスゲーム開始の時間であるため、実際の集合時間である11時50分を間近に控えた俺達は、会議場へと続く入り口の階段を登っていく。
今日は、マスコット大先生の姿はない。運営陣はデスゲームの準備にてんやわんやしているようだった。
「──緊張するな」
俺と同じクラスとして参加するのは、俺を含めて6名。智恵と愛香、純介に梨花。そして、冴恵香のクラスから援軍として送り出された百花だ。
他のクラスのチームとして参加する人としては、冴恵香のチームに歌穂が。光のチームに斗と真胡・誠が参加することになった。
俺達のクラスは最強の布陣で挑むことにした。出し惜しみをして敗北することは避けたい。
「心配する必要などない。妾がいる以上、敗北など有り得ない」
俺の一歩後方で、そう豪語する愛香。なんて心強いのだろう。
俺は高鳴った心臓を、大きく息を吐くことで黙らせる。こんなに緊張するデスゲームは今回が初めてだ。
指が小さく震える。すると、右手に柔らかい感触。俺の震えを包み込むように、暖かい愛の温度が伝ってきて──、
「そうだよ。私達が力を合わせれば、きっと大丈夫」
俺の隣にいた、智恵が俺にそう笑いかける。きっと、智恵も会議場に行くことに様々な葛藤や恐怖を持っているだろう。隆貴にも会いたくないはずなのに、智恵は俺のお願いを聞いて来てくれている。
それだと言うのに、俺がシャッキっとしてなくてどうする。
「ごめん。──いや、ありがとう」
俺が、そう口にすると智恵は可愛く笑いかけてくれた。俺達であれば大丈夫。今回のデスゲーム準備は万全を期している。だから、負けることはない。
──そう口にして、会議場へと続く扉を開ける。いつも通りの会議場では──、
「今回のデスゲームのルールに関して質問──というか提案なんだけれどさ。ゲームが冗長にならずいたちごっこの繰り返しを避けるためにも、タッチ返しを禁止にしない方がいいんじゃないかい?」
冴恵香に対してそんな提案をしていたのは、ロンであった。俺達が来る前に、少し一悶着があったのかもしれない。
冴恵香のチームには、魁亜や穂泉、そして俺達の派遣した歌穂の姿も確認できる。
それに、光のチームも既に揃っていた。皇斗達3人と、冴恵香のクラスから派遣されたであろう2人の姿がある。皇斗達は仮面をしているが、ツッコまれている様子はない。もうその件は終わったのかもしれない。
「──その点は、被り物教授とも話し合ったの。論点としては、タッチ返しと仲間との接触時の色変換のどちらを採用するか。それで、今回はタッチ返しを採用した感じ」
「──成程。あくまでどちらかは採用される前提だったんだ」
「うん。間との接触時の色変換の方がゲームが無駄に長くなっちゃうかなぁ~って思って採用しなかったんだけど。ダメだったかな?」
「いや、ダメじゃないよ。そのルールがなかったから僕も文句を言っていたところだった。マシな選択をしてくれた──ということだね」
「ええ。自分で作る初めてのデスゲーム。できればいいものにしたいから」
──きっと、ロンはタッチ返しの要綱がないことに何かしらの策を用意していると考えたのかもしれない。
だけど、今回は「同じチームの人が接触しても色の変化は起こらない」というルールに俺達の協力の意義がある。
クラスの垣根を協力するなら、同じチームの人が接触しても色が変わらずとも助け合うことができる──という算段だ。
「──わかったよ。デスゲームを決めるのにも色々大変だったと思う。僕の提案に耳を傾けてくれてありがとう」
ロンは納得したようでそう椅子に座る。そうして、話が一段落すると──
「いやー、おまたせおまたせ。デスゲームだっていうから、早く来ちゃったよ」
そう口にして、デスゲーム会場に姿を現したのは非野否不未。彼が連れて来た5人は──
「──へ?」
「人形?」
否不未の後ろに付き従う人間の姿はない。代わりに、否不未を模した棒人形が並んでいた。
全部で5体。否不未を含めて6人。
「マスコット大先生。これって許されるんですか?──って、いないんだった……」
今日は付き添いで参加してくれる教師陣がいないことを思い出した。俺の問いかけが宙を泳いで消えてしまう──誰もがそう思ったその時、当の本人である否不未が口を開く。
「仕方ないじゃない。僕以外誰もいないんだから。僕が6人分になるしかない」
口を尖らせながら言い訳のようにそんなことを口にする。光は他の参加者が協力的でないだけで生きているが、否不未のクラスは本当に全滅しているのだろう。
「──今回は、生存者が6人以下の時について記載されていなかった。だから僕は、その代替案を用意してあげたんだけど、文句は言わせないよ?そっちの整備不良なんだからね」
確かに、デスゲームを作った俺達にも非があるだろう。だから、俺達は何も言えない。
こうして、否不未の棒人形が暗黙の了解とされた。そこから数分も経たずに、5クラス目がこの会議場に姿を現す。
「──別に俺一人さえいれば6人も必要ないのだがな。今回のルールに従って、旧友を引き連れて来た」
俺の隣に現れた人間甘言唯々諾々。その後ろに追従するのは、見覚えのある男女5人──。
「久しぶりやな、栄。またこうして会えるんは嬉しいわ。今回も敵や。容赦はせぇへん」
「この前振りだにゃ。前回は手伝ったけど、今回は敵だにゃ。容赦はしないにゃ」
「デスゲームに興じるのはいつ振りだろうか。楽しそうだから妾も参加させていただく。優しくされたからと言って、容赦はしないぞ」
「まさか七つの大罪をコンプリートした人が複数人もいるところに放り込まれるとはね。『強欲』の称号をくれてやる。容赦しないから」
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──そこにいたのは、現在も生存している第2回及び第3回生徒会メンバーである大神天上天下と猫又一心不乱。柊紫陽花に九条撫子・深海ケ原牡丹の5人であった。





