8月5日 その②
第9ゲーム『極彩色の三重振り子』のルール
1.各クラスごとにチームを用意し、そのチームの参加者は6人とする。
2.デスゲームを72時間生き残るか、8時間おきにどこかに出現するゲートを通るとゲームクリアとなる。
3.イエロー・マゼンタ・シアンの3色を16人ずつに分ける。
4.自分の色が無くなるか、黒に変わると敗北し、死亡する。
5.色の変化の法則性は、色の三原色に準拠する。
6.タッチされると、その色の有無が反転する。例を挙げるとイエローがマゼンタにタッチされたら赤になり、赤が再度マゼンタにタッチされたら黄色になる。そして、赤が青にタッチされたら緑に変化する。
7.同じチームの人が接触しても色の変化は起こらない。また、ゲームクリア及び敗北した人に触れても色の変化は起こらない。
「──ってか、他のクラスも皆第9ゲームであってるのか?」
「心配ございませんよ、池本栄君」
白板に映し出された『極彩色の三重振り子』のルールを見ながらふと思った疑問を俺が口にすると、いつの間にか現れていたマスコット大先生が俺の耳元でそう囁く。ゾワリと背筋が震えて、俺は一歩ズレた。
「──今回のデスゲームの番号は池本冴恵香さんのクラスのものを採用しました。なので、私達のクラスが綺麗に番号順になっているのは偶然です」
「成程……」
俺達のクラスが上手くかみ合っただけで、もしかしたらズレていた可能性も十分にあったらしい。
だけど、冴恵香と話している感じ同様のデスゲームを行ってきたっぽいから通過したデスゲームの回数が同じなのも別に変ではないだろう。
「実際、Q君達のクラスは過去に8回もデスゲームを行っておりません」
デスゲームの回数に差があるのは少し不平等な気もするが、運営側も数が合うように調整しているのだろう。過去の生徒会メンバーが自分勝手に動き出す──という運営にとって予想だにしないイベントなどもあったはずだ。
「──池本栄君」
「──はい?」
改めてそう問いかけられたので、俺はマスコット大先生の方へ顔を向ける。真剣な表情で、マスコット大先生は俺を見つめていた。
「今回のデスゲーム、一筋縄ではいかないと思います。期待していますよ」
「──まさか改めてマスコット大先生からそんなことを言われるとは」
「こっちも色々限界ですのでね。今の私にできることは池本栄君に全てを任せることだけなんです」
「──成程」
結局のところ、自分の都合が良いから俺に媚びるようにお願いしているのだ。まぁ、マスコット大先生が打算でしか生きていないことなどとうの昔から知っているからなんとも思わない。
「──って、マスコット大先生が俺のことを池本君じゃなくて池本栄君って呼ぶ理由がわかりました」
「ほう?」
「池本君は俺以外にもたくさんいたから、ですよね?」
「正解です。やっと気付いてくれたんですね」
「言われなかったらわかりませんって」
別に「栄君」と呼んでくれても良かったのだろうけれど、マスコット大先生のプライドが俺に馴れ馴れしくすることを許さなかったのだろう。親しげに下の名前で呼ぶよりかは、フルネームで呼んだ方がいい──そんなことを考えたのかもしれない。
──と、その時だった。
「──待たせたわ」
教室の入り口の方から聞き慣れないそんな声が聴こえたので、俺はそちらの方向を見る。
そこに立っていたのは、スラッと長い足がミニスカートの下から覗かせている茶目っ気のある表情をした黒髪ポニーテールの女性。
背は智恵くらいはあるだろうか。冴恵香と同じくらいだろうし、女子の中ではそれなりに大きいはずだ。
「──君が、池本栄君だね」
マスコット大先生が離れていくのと入れ違うように、彼女はポニーテールを揺らしながら俺の方に歩んでくる。
「ああ。君は、冴恵香のクラスの──」
「如何にも。ボクは、冴恵香の級友にして親友の山田百花だ。よろしく」
自信ありげな表情でそう口にする彼女は、俺の前に手を差し出す。俺もそれに応えるように手を握り、握手を交わした。
──山田。
稜と同じ苗字だけど、こっちに関しては偶々だろうか。山田なんてたくさんいるから、被っていてもおかしくはない。
「百花が今回、私達に協力してくれるの?」
「あぁ。ボクのクラスの方に歌穂ちゃんが来てくれたからね。ボクもこっちに飛んで来たよ」
百花に興味を示した智恵が俺の隣にやってきて、そう質問する。智恵も握手を求められていたので、それに応えていた。
「──なんだ。サポートに来てくれると聴いていたから誰が来てくれるのかと思ったが、百花か。つまらんな」
教室の窓枠に腰掛け、腕を組みながらこっちの方をジッと捉えていたのは愛香だった。
「──愛香とは知り合いなの?」
「あぁ。2日にね」
どうやら、俺の参加していないデスゲームを考える会議に百花は参加していたようだった。
ということは、純介とも面識はあるだろう。一人だけ馴染めずに浮いてしまう──ということは避けられそうで良かった。
「愛香の口が悪いのはいつものことだから、悪く思わないでくれ」
「大丈夫。うちのクラスの魁亜も口の悪さでは負けていないからね。慣れっこだよ」
百花はそう口にして爽やかな笑みを浮かべた。仲良くなれそうで一安心だ。
──そして、俺達は集合時間までの間雑談をして親睦を深めた。





