↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

924/936

8月3日 その⑤

 

「──じゃあ、皆は手元の紙にどこに投票するかを書いてくれたかな?」

 連れた2人と5分間の相談時間を終えた後で、ロンがそう問いかける。勿論、俺達は冴恵香のクラスに投票することが決まっていたのだから話し合いの必要はなかったのだけれど、怪しまれないように周囲に合わせて置いた。


「──よし。皆、集められたようだね。投票用紙を集めるよ」

 俺の右隣に座るロンがそう口にすると、各々が投票先を書いた紙を真ん中に集める。そして──


「──じゃあ、開票するよ」

 ロンは、集めた紙をシャッフルしながら皆にそう語りかける。そして、そのまま紙を開く。1つ目は──


「『極彩色の三重振り子』」

 冴恵香の提案したデスゲームの名前がそこにはあった。俺の字ではない。2人の誰かだろうか。


「2つ目は──、『極彩色の三重振り子』か。2票連続だね」

 それもまた俺の字ではない。これで、3票は確定した。冴恵香も光も、裏切るようなことはしなかった。そして、3つ目──


「『六次元オズワルド』」

 そこに書かれていたのは、人間甘言唯々諾々が提案したデスゲームの名前だった。難解ではあるけれど、ゲームとしての厚みがあると感じたそのゲームを誰かが選んだという事だろう。4つ目──、


「──『六次元オズワルド』、2票並んだね」

 まだ俺のは開かれていないので、実質一票リードした状態ではある。けれど、まだ半分を残した状態であるから光とも失敗していなかったら危なかっただろう。


「──じゃ、残り4票分も行こう」

 そして、開かれた5つ目。そこに書かれていたのは──、


「『人質ポーカー』」

 そこに書かれていたのは茉裕が提案したゲームだ。死者連合が選んだのだろうか。6つ目──


「──『極彩色の三重振り子』、3票目だ」

 俺の字でしっかりと書かれたものが存在していた。これで3票。後は残った2票が『六次元オズワルド』に入らなければ投票で勝利できる。7つ目──


「『六次元オズワルド』──、また並んだ」

 3票ずつを獲得して、残り一票となる。次の紙に何が書かれているのかで運命が別れる。書かれていたものは──


「『人間甘言唯々諾々のデスゲーム』──要するに、『六次元オズワルド』のことだろう。ということは──」


 ──負けた。

 俺達の協力も虚しく、投票で敗北した。行われるのは『六次元オズワルド』で──、


「──待てよ」

 ガタリ。

 そんな音と同時に、力強く立ち上がってロンの腕を掴んでいたのはロンの右隣に座っている光であった。


「──どうかしたかい?」

「イカサマしただろ、お前」

 鋭い視線でそう問いかける光。彼は今にも殴りかかりそうだった。


「──イカサマ?何の話?光君の出してくれた紙が出なかったとかではないよね?僕は皆から集めた票を何の改竄も加えずに開示しただけだ」

 ロンは落ち着いたままそう口にする。俺も、光が何に対して「イカサマ」を訴えているのかよくわかっていなかった。だが、これがイカサマだと言うのであればまだ勝機はある。


「いいや、嘘だ。お前が改竄できる場所が一つだけある」

 そう断言する光は、もう片方の手で一枚の投票用紙に手を伸ばす。そこに書かれていたのは『人間甘言唯々諾々のデスゲーム』という文字であった。


「──何が言いたい」

「これを書いたのはお前だろ?ロン」

 そう口にして、光が宙に叩きつけるようにしてロンの腕を下ろす。すると、その袖の中からはらりと一枚の紙が落ちてくる。即座に光が手を伸ばし、それを円卓の上に叩きつけた。そこに書かれていたのは──


「──『園田茉裕のデスゲーム』……!」

 存在しないはずの9枚目の投票用紙が開かれ、それと同時にロンのイカサマが露呈する。


「お前はシャッフルしているように見せたが、自分の投票用紙だけはどれか覚えていた。それで、得票率を確認した後で自分の投票先を変幻自在に変えて少しでも都合のいいゲームが選ばれるように画策していたってわけだ。お前の着てる服を引ん剝けば、他にも紙が出てくるだろうよ」

 光はロンを突き放すようにしてそう口にする。

 思えば、執拗に光の名前を訊きだそうとしていたのもこうして投票するためだったのだろう。

 デスゲーム名が発表されるのは今日だけど、名前であれば大半の人が前回の会長会議の時点で判明していた。

 それに、紙を指定して覆面教師に配布させたのはロンだった。そうであれば、投票用紙と全く同じものを用意するのは容易だっただろう。


「──言い逃れは、できなさそうだね」

 笑みを崩さないままでそう口にして、ロンは光から一歩距離を取る。光は、自分の席に腰を下ろした。

 イカサマされていたことがバレた以上、このまま『六次元オズワルド』で行くことはないだろう。


「──これは僕の失態だ。いやぁ、悪かった。僕の票は無効とすることで話の折り合いを付けよう。『六次元オズワルド』と『極彩色の三重振り子』が共に3票で、『人質ポーカー』が1票。そして、僕のが無効票。『人質ポーカー』に投票をした人が『六次元オズワルド』か『極彩色の三重振り子』のどっちか入れてもらう決選投票かな」

 立ったままでロンはそう口にする。そして、2度目の投票が行われようと紙を再配布されようとしたその時──、


「──いや、紙を配るとかいいよ」

 俺の左側でそんな声がする。全員が一斉に、その声の主の方を見た。そこには──、


「『人質ポーカー』って書いたのは僕だから、僕が口頭で決めればいいんだろう?」

 否不未が背もたれに寄りかかりながら、そう口にして忌々しい空っぽな笑みを浮かべている。


 ──俺達の命運は、悔しいことに否不未に握られてしまったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨城蝶尾様が作ってくださいました。
hpx9a4r797mubp5h8ts3s8sdlk8_18vk_tn_go_1gqpt.gif
― 新着の感想 ―
絶妙な心理戦ですね。 しかしやらないデースゲームを何個も 考えるのは大変だったでしょうね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。