8月3日 その③
隆貴達犯罪者クラスの人達が会議場に足を運び、ロンの軽口で緊張が走ってから、一拍遅れてやってくる茉裕達死者クラス。その後ろには鈴華と裕翔の姿があった。
いつの間にか人間甘言唯々諾々の姿が俺達の左隣にある空席──いや、空いた席すら用意されていないから空白と呼ぶべきだろうか──に現れていた。
──それは即ち、会長会議の始まりを意味している。
俺がチラリと左腕に巻かれた腕時計に目を合わせると、時刻は丁度12時。
今日に関しては誰も遅刻せずに時間通りに集まったようだった。
「──うん。皆、集まったようだね」
気を取り直したロンは、いつも通りの嘘くさい笑顔で場を見渡してそう口にする。
先程の鎌かけや言い争いはまるでなかったことかのように話が進んでいく。
「今回も僕が引き続き司会を務めさせていただくよ。今朝僕は君達のところへ一枚の白紙を配布するようちゃんに頼んでおいたんだけど受け取ってくれたかな?」
俺は、ポケットの中にある純介の書いてくれた紙の存在を確認する。誰に盗まれるわけでも落としてしまったわけでもなく、ポケットの中に確かに存在していた。
「──今回の議題は、その紙に書いてもらったデスゲームとルールをお互いに出し合ってその中から一番自分達が行いたいものを決める──というルールだ自分自身の作成したデスゲームにも投票することは可能とする」
ここまでは想定内だ。もし仮に禁止されていようと、俺と光は冴恵香のところに投票するため2票は確定だった。
「──じゃあまず、デスゲーム案をそれぞれ提案するところから始めよう。そうだな、誰からにする?」
ロンはそう問いかけるけれども、誰の手も挙がらない。当然だろう。だからこそ、俺は一番選ばれにくいであろう最初にあえて名乗り上げよう。俺がその手を挙げようとしたその時──、
「はいはーい!僕がやるよ」
「じゃあ、否不未君」
俺よりも先にその手を高く上げたのは否不未だった。そのポケットから出て来た紙は開かれ、中からは赤黒い色で書かれた文字がある。そして、その内容が否不未の口から音読されていく。
「デスゲームのタイトルは『デスゲーム』。ルールは、簡単で。一番多くの人を殺した人が勝ち」
──没だ。
心の奥底──いや、その一番上で、この場にいる全員が思った事だろう。
重要なのは生き残ることではなく、「一番多くの人を殺した人」である点だ──などというデスゲーム内容の真面目な考察も必要としない、本当に採用されることのないであろう案だ。
勝つ気がないのだろうか──いや、こんな強気なデスゲーム内容が採用されても尚困らないほどの実力を持っているのだろう。彼曰く、彼も七つの大罪を全て持っているらしいしその真偽は存在の禍々しさを見れば理解できる。
「──ありがとう。じゃあ、このまま時計回りにしようかな」
表情を一切崩さないロンがそう口にして、次に発表するのが冴恵香という事になる。
思いがけないタイミングで彼女のターンが回ったけれども、正直言えばいいだろう。否不未の「絶対ない」というものの後に聞かされれば、良いものだと皆の心に残り自分のものに投票しない人の票が集まりやすいように思えた。
「──わかった。じゃあ、私のターンね」
冴恵香はそう口にして立ち上がると、履いていたスキニーパンツのポケットから一枚の紙を取り出す。
中から出てきたのは、可愛らしい字で書かれていた手書きと思われる内容だった。その内容は──
「──デスゲームタイトルは『極彩色の三重振り子』」
そう口にして、デスゲーム内容の説明が始められる。
「まず、このデスゲームは各チーム6人が参加します。そして、各チーム3人ずつイエロー・マゼンタ・シアンの3つを分けます。その時、デスゲーム全体では各色が平等になるけれども一人一人にはランダムに色を分けます。だから要するに、3色がそれぞれ2人ずつになる場合もあるし、逆に言えば全員が同じ色になる可能性も有り得るってこと」
冴恵香は紙に書かれている内容に沿って説明を続ける。話している間は誰もツッコミを入れないようだった。
「広めのデスゲーム会場に移動して、簡単に言えば鬼ごっこを行います。タッチされた人は、タッチした人の色が移ります。例えば、イエローの人がマゼンタの人にタッチされたら、その人は赤になる──って感じ。色の変化に関しては色の三原色を参考にしてます。光の方じゃなくて色の方。ここで問題になるのは、既に赤色の人がもう一度マゼンタにタッチされたらどうなるか。すると、今度は赤からマゼンタがなくなって黄色に戻ります。だから、無い色は追加されてある色は無くなるって感じ」
色の三原色を表示できるような帽子を被っていれば、周囲の色を理解しやすいだろう。戦闘が激化する可能性も考えられるが。
「死亡条件は、色が無くなるか黒になること。要するに、0色になるか3色全てを集めちゃうことです。終了条件は時間経過にしています。6人全員が敗退したクラスは会長会議から離脱──と考えてる。以上が私達の考えたデスゲームでした」
そう口にして、冴恵香は頭を下げる。周囲を見渡すと、皆沈思黙考している真面目な表情をしていた。
──これは選ばれるかもしれない。
俺は、周囲の反応を見ながらバレないように自分の心臓を高鳴らせた。





