8月1日 その⑰
池本栄。
池本冴恵香。
池本栄。
──そして、池本光。
4人目の池本姓が現れ、俺と冴恵香の2人は驚きを隠せない。
「ここにいないけど、ロンも合わせれば池本って苗字は4人、か……」
「私、これまでの人生で親戚以外に池本って苗字の人と会たこと無いよ」
俺も、親族以外で池本と付く苗字の人には会ったことがない。それなのに、デスゲームに参加して急に池本姓に出会うようになったということは、マスコット大先生──要するに、池本朗の存在が関わっているのだろう。
「──訊いておきたいことがある。皆は、それぞれの担任について正体はわかってるのか?」
俺がそう問いかけると、冴恵香の顔が真面目になものに変わって光の顔が悔しそうな顔に変わる。そして──
「わかってる」
「わからない」
2人の声が重なって、そう口にする。冴恵香は正体を知っているようだった。
「──私達の担任は被り物教授って言うんだけど。その正体は、私のお父さんだったの」
「──同じだ」
冴恵香も、俺と同様に父親がデスゲームを運営しているらしい。
──ん?待てよ?そうなると──、
「「──冴恵香のお父さんの名前って、池本朗?」」
俺と冴恵香の声が重なり、相互にそう問いかける。そして、その質問に改めて応えるまでも無く後半部分が完全一致したことが何よりもその答えだ。そして──
「──待て。池本朗って、朗らかって書いて朗か?もしそうなら、俺の父さんも一緒だ」
光がそう口にしたことにより、俺達3人が血縁であることが判明する。少なくとも二親等だ。
「俺達が兄弟姉妹だとは思わなかった……」
「私も。一人っ子だと思ってた」
「俺達は皆、高3の17歳ってことで合ってるだろ?」
光がそう確認するから、俺達は頷く。
「「誕生日は10月26日だよ」」
俺と冴恵香の声が被るのも、自分達が兄弟姉妹であるからであるように感じられてくる。俺達は誕生日も一致している。
「ってなると、まぁ双子──いや、三つ子って感じか。俺も一緒だからな。一応、母親の名前を確認しておくか。母親の名は、池本望で合ってるか?」
光がそう訊ねるので、俺と冴恵香の2人は頷いて答える。父親も母親も一緒。俺達は、三つ子の兄弟なのだろう。
俺と冴恵香では性別が違うから、二卵性双生児──いや、光もいるから二卵性三つ子だったのだろう。
この流れで行けば、きっとロンも俺達と同じ血筋だろうからそう考えると四つ子になりそうである。
「──まさか、私も兄弟がいたなんて。しかも三つ子?四つ子?どっちにしてもすごいね。考えもしなかったなぁ……」
冴恵香がそう口にして、嬉しそうにする。
「いつか、ロン君とも仲良くしたいなぁ。同じ池本なんだし」
「──いや、アイツはやめとけ。アイツはどうも胡散臭い。腹の底で何を考えているのかわからない。お前らとは違ってな」
俺よりも先に光がそう忠告する。すると冴恵香は「胡散臭いのは私もわかるけど……」と少しいじけたようにそんなことを口にしていた。
「──まあ、俺達が四つ子だったってことを話し合うのは今じゃない。デスゲームの投票について擦り合わせをすんぞ」
光がそう口にしたので、本命は冴恵香に出してもらうことにして俺と光の2人は適当なゲーム案を出すということにした。冴恵香が一番票を集めていても不自然じゃない──という説明を行ったら、光も納得してくれた。
「──じゃあ、俺はとりあえず適当なデスゲームを出して冴恵香の方に投票するのがいいのか」
「そういうことだ。誰からも票が入らなさそうな内容で頼む」
「了解した。それで、冴恵香に出してもらうデスゲームの案はどうするんだ?」
「冴恵香達に考えら貰おう──って思ったけど、それぞれのチームのそういうのが得意な人達に集まってもらって考えるのが一番良いのかな」
「そうかも。私の所にもそういうのが得意な人いるし集まって考えた方がいいのかもね」
「悪ぃ。俺は協力はできそうにない。周りがあんなだからな」
「──」
「光ってどうして皆から嫌われてるの?喋ったらこんなに楽しいのに」
無意識だったのだろう。そう口にして、冴恵香は自分が何を言ったのかに気が付いて焦った様子を見せる。
「いや、ごめんね。無理だったら答えなくていいよ。配慮が足りてなかった。ごめん」
「──大丈夫だ。俺が他の皆から嫌われてるのは事実だしよ」
光は少し悲しそうな顔をしてそう口にする。きっと、彼は自分から孤立を選んだわけではないのだろう。
「──殺しちまったんだ。最初のデスゲーム、『クエスチョンジェンガ』で人を」
それを聞いて、俺達の目は見開かれる。そして、会議場で黙っていた彼が唐突に怒った理由にも納得がいった。
──彼にとっては不快だったのだ。
自分を今の境遇に陥れた第一ゲーム『クエスチョンジェンガ』の存在が。
「──そこから、なんとか取り返そうとしたけど全部空回りして。このザマだ」
そう口にして、光は自虐的に笑う。俺達は、それに対して何も口にすることができなかった。
俺達も、光と同じ立場に落ち着く可能性だってあったのだ。俺の有り得た今であるのだ。
「──まぁ、同情されるつもりはない。それに、アイツラに殺されるつもりもない。俺にいいデスゲームが思いつくかはわからないが、明日話すことにしよう。場所はどうする?」
「じゃあ、私の学校にしよう」
「了解。じゃあ、そうしよう」
──こうして、この日は解散になった。
会長会議のあった長い長い1日は、こうして幕を閉じていく。
次の会長会議へのタイムリミットは、刻一刻と迫っていた──。





