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7月31日 その⑱

 

 各地で乱闘が起こっている現実世界から隔絶され、静寂がどこまでも広がっている鏡の世界に取り残されているのは3人の有望な英傑と1頭の無謀な怪物。

 皇斗と愛香のツートップと、戦力において2人の後を追う形で名を連ねる真胡の3人が、再度虎の姿と化した李徴の前に君臨している。


「再度その姿になっても、結果は変わらん。それどころか、尋問に応じない以上酷い未来が待っているだけだぞ?」

 愛香はその愚行を遂行しようとする李徴に対して軽蔑するような視線を送る。


「あぁ。余達は栄程甘くない。どうせ見逃してくれると楽観的に考えているのなら、そのままの頭で逝くがいい」

 氷のように冷たい視線で、皇斗はそう口にした。容赦はない。虎となって尚、ツートップが揃っている現状苦戦する要素はない。

 2人はそう思っていたし、何もないまま戦えば実際そうだったのだが──。


「──はーい、李徴君。よくよく暗躍してますか?」

 そこに現れたのはマスコット大先生──


「──ではない。よく似ているが、偽物だ」

「皇斗。貴様、妾のセリフを奪うとは大罪だぞ」

 一発で、そこに現れた人物がマスコット大先生とよく似た別の人物であることを理解する2人。その巫山戯た唯一無二の雰囲気はマスコット大先生の中の人──池本朗にしか出せないものだと思っているし、他にあの胡散臭い雰囲気を出せる人がいては堪らないとも思う。池本朗ではありそうだが、マスコット大先生ではない。となると、必然3人の頭の中で一つの結論が導き出されて──。


「妾達とは違うデスゲーム──則ち、李徴が参加しているであろうデスゲームのGMと考えるのが一番か」

 一息吐いた後、愛香はそう口にする。それに対して、皇斗はただ首を縦に振るって答える。


「まさか一目見られただけでバレてしまうとは。流石、噂に聞くだけの猛者達ですね」

 マスコット大先生の偽物は、そう口にして意地の悪い笑みを浮かべた。余裕がありそうな表情であったが──、


「──愛香はそっちを」

「言われなくても」


 刹那、ツートップが動き出すと同時にその被り物に愛香の膝がめり込む。それと同時に、李徴の腹部に強烈な踵落としが皇斗によって放たれていた。容赦を知らないその一撃に、1人と1頭は言葉にならない悲鳴をあげてその場でもがき苦しむ。


「皇斗、このまま殺してしまうぞ!」

「ああ、問題ない」

 皇斗の承諾を得た現在、愛香の暴虐を止められるものなどいない。マスコット大先生の偽物の被り物が引き剥がされ、池本朗の顔が明らかになった同時に──


「まさか一瞬でここまで追いつめられるとは」

 被り物を失った池本朗がそう口にすると、即座に自分の舌を噛み切って自殺する。


「自害──ッ!」

 その迅速すぎる判断を見ると同時、愛香は想像を巡らせた。そして、彼女が手に入れた結論は──


「皇斗!来るぞッ!」

 愛香がそう喉を震わせると同時、地面の中へ落ちるようにして李徴が消えると同時に後方から李徴が現れる。まるで瞬間移動のようなその動作に、皇斗は一瞬判断に迷ったものの、すぐに回避行動を取った。


「えー、今のさえ避けられるとは思ってもいませんでした。私達が思っていたより、アナタ達は洗練された強さを持っているようですね。周知しておかなければ」

「不利益だな。真っ先に殺すか」

「愛香ちゃん、もう遅いと思う。だって、マスコット大先生は……」

「──あぁ、そう言えばそうだったな。本当にいつまで嫌らしいだけの野郎だ」


 愛香がマスコット大先生の偽物に食いつこうとするけれども、真胡によって正される。

 マスコット大先生の嫌らしさ──無限と称していいくらいに存在しており、その全ての個体が四次元の支配者であることを愛香が一番知っているのだ。きっと、目の前にいるマスコット大先生の偽物もそうなのだろう。だから、目の前の一体を殺したところでどうにもならないのが現実だった。


「──マスコット大先生の偽物と呼ぶのもいい加減飽き飽きだ。貴様も名を名乗れ」

「別に一度もその呼ばれ方をした覚えをされた記憶はございませんが……まぁ、いいでしょう。私の名前は覆面教師。ふくちゃんとお呼びください」

 覆面教師──マスコット大先生の亜種としか思えないその名前であったが、名前の胡散臭さと適当さも相俟って、信頼度は上がっていた。

 マスコット大先生に加えて、覆面教師。きっと、他にも微妙に違った名前を持った池本朗が数種類いるのだろう。確か、マスコット大先生が分かれている派閥は7つ言っていたから後5人この感じの人がいるのかもしれない。


「さぁ、2人共戦いましょう。私達は何一つとして容赦をしません。私達はルールもガイドラインもコンプライアンスも関係ありません。好き勝手に、暴れさせていただきますよ」

 覆面教師がそう口にすると同時に、まるで瞬間移動をするかのように李徴が現れては消えてを繰り返しながら動き出す。


「何が……」

「──来るッ!」

 状況が理解できないまま、李徴の襲撃を予見した真胡は片手でガードしてもう片方で反撃を試みる。が──


「──消えっ」

 目の前に現れた李徴が一瞬で消えると同時、後方に強烈な殺気が感じられる。


 ──死。

 明確にそれを予感し、真胡の肉体は人体の構造を全く無視して後ろを向く。体が軋む音がしたが、それを無視して真胡はいつの間にか後方に現れていた李徴の攻撃を受け止める。体の芯に響く攻撃で、真胡は後方に大きく吹き飛ばされた。


「──うぐっ!」

「真胡。大丈夫か」

 皇斗が李徴に視線を向けたまま、吹き飛んだ真胡にそう訊ねる。「なんとか」とだけ返事が聞こえてきたので、皇斗は返事を頷くだけに留めた。


 ──覆面教師の介入で、随分と面倒なことになった。

 まずは李徴の瞬間移動の理由を探りながら、勝利の算段を見つけていかなければ。


 ──最強と無謀の決戦の歯車は、覆面教師(デウスエクスマキナ)の乱入によって狂い始める。

決着まで書き続けます。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
覆面教師、このいい加減な感じの名前が逆に良い。 自分も猫族絡みのネーミングは適当かつ雰囲気で決めてます。 にしても新キャラ出る度に、しゃべり方に拘るところも凄いです!
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