7月31日 その⑮
誠に生徒会の対応を任せて、先に進む康太達6人。
康太は、蒼をお姫様抱っこで抱きかかえながら、校門の中へと突入して学校の中へ入る。が──
「──康太ッ!」
「──ッ!」
梨花がそう声をあげ、後頭部に刺々しい視線が刺さるのを感じて康太は半分転ぶようにしてその場にしゃがむ。すると、先程まで康太の頭があった部分に人影が通り過ぎて、空中を破壊した。
「──もう、生徒会がこんなところまで……!」
紬がそう声をあげるのを耳に、康太はその場から逃げるように回避する。体を捻ってそこに現れた人物を見ると、やはり他と同じように長身痩躯を黒いマントで包み、マスコット大先生の被り物をした生徒会がそこには立っていた。
「──お前は……」
誠が足止めされてしまっている以上、マスコット大先生の被り物をずらしてくれるような人はいない。
「どうしよう……」
皆の中心に立つ生徒会は、直立不動のまま動くことはない。ただ君臨しているだけだ。すると──
「あ!おーい!美緒ー!」
「健吾!」
「──じゅんじゅん!」
6人に対する増援として校舎の方から駆けて来たのは、健吾と純介の2人だった。
「──康太。状況は?」
胸の中に飛び込んでくる紬を受け止めながら、純介は最前線の状況を飲み込もうとする。
「今、向こうで誠が戦ってる。校舎の──中には入ってきたみたいだ。まぁ、外は人口密度が高すぎて自由に動く隙間も無いっぽいしな」
「蒼は?」
「蒼はコイツとは別個体のマスコット大先生に刺された」
康太と純介の2人が状況をすり合わせていく中で、適切に人を分配させていく。
「こっちで判明した情報をこっちにも共有しとくね。目の前にいるこの大量のマスコット大先生は、会長会議で会うはずだった別チームがルール違反をして攻めて来てるみたい」
「成程。じゃあ、コイツらを捕まえてこのマントを引ったくっても生徒会が誰かわかる訳ではないのか」
決死の覚悟で正体を暴くような真似をしなくてよかった──康太は、心の中でそんなことを思ったのだろうか。少し緊張がほぐれたような表情をする。
「まず、梨花は誠を助けに行って。それで、僕とつむと健吾はここでコイツの相手。他の3人は蒼を保健室まで運んで」
純介がそう冷静に判断して、それぞれが頷く。その中で、1人だけ納得いっていなさそうなのは梨花だった。
「ワタシが誠を助けに行くの?足手まといにならなんだい?」
「大丈夫。梨花ならできるよ」
そんな無根拠に──と、純介に反対意見を口にしようと思ったけれども、謎の自信があるように思えたから素直に従うことにした。3チームはそれぞれに分かれて、動き出す。
康太は、その場を3人に任せて校舎の方へと再出発する。
蒼を保健室に連れて行くとさえできれば、どこの援軍にも行ける。だから、他の皆を助けるためにも蒼を早く保健室に連れていかなければ──、
「──康太、屈んで!」
美緒の声を耳にした康太は、半ば崩れ落ちるような形でその場に伏せる。腕の中にいる蒼が落ちそうになるけれども、なんとか受け止めた。
刹那、康太の頭上を通り過ぎたのは1人の被り物をした人物。一心不乱による掃討を潜り抜けてここまで辿り着いた以上、それなりの実力者であるのだろう。
「──クソ、俺達は蒼を保健室に連れて行かないといけないのに」
康太は思案する。流石に、梨央と美緒の2人に相手をお願いするのは酷だろう。
敵の対処と、蒼の保護。そのどちらもを行わなければならない。康太が迷う、その時だった。
「──康太きゅん、僕のことはいいピョン……」
腕の中でお姫様抱っこされる蒼が、弱々しい声でそんなことを口にする。女々しい覚悟がそこにはあった。
「──わかった。じゃあ、梨央と美緒に蒼を任せたい。彼を保健室に連れていってくれ」
「──!じゃあ」
「コイツの相手は俺がする。それが、最善策だ」
お腹に刃物が刺さった蒼を地面に下ろし、2人に肩を借りながら歩くように指示する。
そして、康太は一人の侵入者と睨み合う。
相手が蒼達を追わないと言うことは、康太が命を奪うに相応しい敵であると認められたのだろう。
「──[ネタバレ防止]。[コンプライアンス違反]、[言論弾圧]」
「──は?」
その発言を耳にして、康太の顔が青ざめる。その口から放たれた知るはずのない事実と信じられない罵倒に対して、わなわなと口を震わせることしかできない。
「何言ってんだよ、お前……」
「[ガイドライン違反]、[表現の自由の侵害]」
放たれ続ける爆弾発言に対し、康太は困惑し続けることしかできない。こんな過激すぎる発言を続ける人物は、懐から刃物を取り出して手の中で光らせた。
そこで、康太は理解する。
先程、蒼のことを刺した人物で同一人物であることを──。
「──よくもまぁ、そんな態度で俺の前に立てたな」
チラリ。
梨央と美緒に肩を借りながら、後者の方へと着実に進んでいく蒼達の方を、康太は一瞥する。
一瞬で敗北しない限りは、追いつくことはない──
「──うおッ!」
康太は、自分に迫って来た敵意を寸前で回避する。
いや、完全に回避はできていない。肩が少し切れ、服が赤く染まる。
「随分とやる気満々じゃんか。茶番じゃ納得できないんだろ?なら、本気でやってやるよ」
「──[放送禁止用語]。[公共の福祉に反する発言]」
──こうして、康太と[個人情報保護法]による本気の戦闘は、幕を開ける。





