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7月31日 その⑫

 

 ──7月最終日に襲い掛かる数多の脅威を前に敗北しないためにも、俺達は完璧な作戦を立てる必要がある。


「純介。そっちは大丈夫だった?」

「うん。途中、白虎と鉢合わせてどうなるかと思ったけど息を潜めていたらなんとかなったよ」


 純介の方にもひと悶着あったようだけど、今回その話を深堀する時間はない。俺達の問題は、すぐそこまで迫ってきているのだ。

 今、昇降口に集まっているのは合計で6人──俺と純介・稜に健吾。そして、美玲と奏汰で全部だった。

 皇斗と愛香・真胡は鏡の世界に行ったきり出れなくなってしまったのでここにはいないし、歌穂は今白虎となって校舎の中を徘徊している。


「こっちは、マスコット大先生と出会った」

「「「──ッ!」」」

 俺のその発言を聞き、数人が喉を鳴らす。そんな中で奏汰は猫のように目を細めて質問を投げかける。


「栄が全く無傷で焦った様子を欠片も見せないってことはそのマスコット大先生自身は敵意を持ってなかってことだよね。そうなると、外のアレは全部見せかけのもので安全だったりするの?」

「いや、違う。まず、外にいるあの大群はマスコット大先生じゃない。簡単に言えば、別にデスゲームの主催が乱入して暴れてる感じだ」

「──会長会議で初対面するはずだったクラスの担任ってことか」

 健吾がすぐに結論に辿り着いたので俺は「そういうことになる」と首を縦に振り肯定する。

「マスコット大先生が介入すると、あっちの介入に文句を言えなくなる可能性があるから手は出せないようだ」


「──じゃあ、俺達は白虎に成功して別クラスのマスコット大先生を倒せばいいのか。……いけるか?」

 稜が、心配そうな顔で俺たちを見回した後にそう確認する。稜もこの人数を心細いと思うのは当然だろう。


「俺も同じことは思ったから、マスコット大先生に援軍を呼ぶようにお願いした」

「援軍?」

「あぁ、直接手は出せないけど、七不思議のギミックとして誰かを派遣することはできるらしい」

「そーそー。それで、お前らを助けるためににゃあが派遣されたわけだにゃ」

「──猫又一心不乱!」


 一体いつ振りの登場だろうか、いつの間にか俺達の会話に混ざっていたのは、猫耳・猫尻尾を生やした第二回デスゲーム生徒会メンバーの『偏物』──猫又一心不乱。34歳。

 俺が最後に出会ったのは、確かラストバトルの時だった。その時、俺の背中に付けられた裂傷がもう既に完治したはずなのに少し疼く。


「まさか、第二回生徒会メンバーが派遣されるとはね。ワタシ、てっきり第三回の誰かが来るのかと思った」

「にゃはは、サプライズにゃ。猫も杓子もサプライズは好きだからにゃあ」

 そう口にして、悪戯っぽい笑みを浮かべる一心不乱。


「──先に伝えておくけど、にゃあは校門より外には出れにゃいにゃ。まぁ、君たちと一緒だから、校門の外にいるきゃつらを倒せにゃくても文句を言わにゃいで欲しいにゃ」

 一心不乱はそう口にすると、両腕を天高く伸ばす。

 にゃあにゃあ言ってはいるものの、蒼と同様普通に姿は人間だ。猫耳カチューシャと猫尻尾を装着しているだけ、蒼よりも動物に近いだろうか。だけど、今の歌穂と李徴より動物に近い人はいない。


「じゃ、お先」

 そう口にして、四足歩行で偽物のマスコット大先生の方へと駆けていくファーストペンギン。その姿は、まるで猫が獲物を追うようだ。


「──で、栄。誰が偽マスコット大先生の食い止め担当をして、誰が歌穂の救出を担当するんだい?」

 一心不乱の背中を見ながら、奏汰が俺にそう質問する。


「そうだな、まだ迷ってるけど、どっちを担当したいとかはある?」

 俺が皆に対してそう問いかけると、奏汰は少し申し訳なさそうに手を上げる。そして──、


「ラストバトルで一心不乱と戦ったけど、どうにも苦手でね。歌穂の救出の方でいいかい?」

 奏汰はそう口にして、俺の方に訊いてくる。


「あぁ、好き嫌いはあるだろうし少なからず白虎の方に戦力は必要だ。奏汰と後、美玲には来て欲しい」

「ワタシ?」

「そう。このデスゲームに参加していて、自由に動けるのは美玲しかいない。歌穂を人に戻したら、歌穂のことを任せたいんだ」

「わかったわ。ワタシに任せてちょうだい」


「じゃあ、オレ達3人は偽物のマスコット大先生を食い止める」

 健吾がそう言ってくれるので、俺は頷く。だけど、すぐに鍵の作戦を思いついて「待って」と呼び止める。


「純介、鍵を稜に渡してくれ。それで、稜は一緒に来て欲しい」

「わかった」

 純介は、稜に鍵を渡す。


「純介は、いつもみたいに健吾と一心不乱に支持を飛ばして欲しい。稜は俺と一緒に来て、ジャストタイミングで鍵を渡して欲しい」

「「──わかった」」

 稜と純介の返事が重なる。俺と稜、健吾と純介のタッグで動くのはこれが初めてではない。だから、問題ないだろう。


「それじゃ、そっちは純介に任せる。人を多く割けなくて申し訳ないな」

「いや、大丈夫。一心不乱を酷使するから」

「歌穂を救出したら男子3人はすぐにそっちの手伝いに回るから、それまでそうしてくれ」

 俺と純介はそう口にして笑い合う。そして、俺は純介にその場を任せ、4人で白虎──歌穂の方へと向かう。



 ──七不思議其の参『マン・イン・ザ・ミラー』の最終決戦は、混乱の中で始まった。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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