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7月31日 その⑤

 

「──誠!」

 マスコット大先生の被り物が宙を舞い、ボールのように地面で数回バウンドする。

 蹴られた側の胴体は、依然として立ち続けており、マスコット大先生の被り物が身長を盛るためのフェイクであることを紬は自覚した。

 被り物と、厚底ブーツのような靴の2つで身長を2mに達するまでに持っていたのだろう。

 誠は、振るわれるナイフを後方に飛ぶことで避けて、生徒会に対する奇襲を成功させた。


「──斉藤。秋元はどうなってる?」

「梨花ちゃんは今、美緒ちゃんと一緒に着替えてる」

 紬は、誠を動揺させないためにも情報をかいつまんで伝える。まぁ、誠のことだからちょっとのことでは動揺することはないだろうが。


「──そうか。無事なんだな?」

「うん。怪我はしてないよ」

 誠は、紬の発言に小さく頷いて返事をする。生徒会の2人は、誠の方を見ている。

 ──顔は見えないけれど、そんな風に感じた。紬に対する警戒など忘れて、誠と睨み合っているような感じである。


 そして、数秒の沈黙の後に生徒会が動き出す。


 頭部──マスコット大先生の被り物を失った生徒会が、包丁を振り上げて走るのを見て、誠は大きく横に飛んで回避する。そのまま、生徒会は誠の方へと体を向け──


「──ッ!」


 ──ない。


 誠のことなど興味が無いと言わんばかりに、生徒会はその横を駆け抜ける。要するに、戦線離脱だ。

 てっきり戦闘になることを覚悟した誠は、その思いがけない行動に珍しく驚きを示す。


「──待て、逃がすか」

 そう口にして、誠は後ろへ振り替えるけれども──


 ──いない。


「どこに……」

 誠は、周囲を確認して消えた生徒会の姿を探す。

 だけど、見当たらない。霧消したのだ。


「ごめん、紬!時間稼ぎありがとう!って、あれ……?」

 先程までもう1人の生徒会が立っていたリビングの入口から、現れるのは美緒と梨花の2人。

 美緒の洋服を借りた梨花が一番に駆けつけて来たけれど、そこには生徒会の姿はなかった。


「──勝った、のか?」

 誠が、リビングの窓の方へと戻って来て噛みきれないような表情でそう口にする。

 梨花と美緒は、不安そうな顔をして首を横に傾げた。


 ──これにより、生徒会を追い返すことに成功したのだった。


 ***


「──それで、だ」

 一度、チームAの家に戻って梨花が着替えるのを待ってから再度チームFの自宅に5人は帰ってくる。


 テーブルを囲み、5人は真面目な顔をして話を進める。


「今回の騒動で、生徒会が2人動いていた。姿こそ見えなかったが、動いたのはデスゲームに参加していない10人の中の誰かであることは間違い無いだろう」

「でも、ここにいる5人は……」

「そうだ。俺達5人は生徒会の候補から外れる。襲撃を受け、それに対処したのだからな」


 そうなると、残る候補は5人。

 蒼と康太・陽斗と蓮也。──そして、智恵。


「──智恵ちゃんは違うよ!生徒会じゃない!」

 紬が、少し焦ったように智恵のことを擁護する。

 誠は、紬に対して一瞥もせずにこう続けた。


「智恵が生徒会でないことはわかっている。生徒会の一員であった茉裕を殺したという功績は大きい」

 誠はそう口にすると、梨花の方へと視線を送る。梨花もそれに気が付いて、ゆっくりと一度首を縦に振った。


「アタシの目の前で、間違いなく智恵は茉裕を殺した。だから、アタシも智恵は生徒会じゃないことを保証する」

「ワタシ達は最初から智恵を疑ってないけど、そうなるとそれ以外の4人の内の2人が生徒会ってことでしょ?」

 梨央はそう口にして、残った候補者である4人の交互を頭に浮かべる。


「うーん……ワタシ、誰かを生徒会って疑うの下手っぴかも」

「それが梨央のいいところだよ」

 梨央が申し訳なさそうにそう口にする横で、美緒がフォローをする。


「疑うのはアタシ達がやるから、梨央は無理しないでいいよ」

「──わかった」

 梨花と梨央はそんなやりとりの後に、真面目な顔をして沈黙する。


「──正直言えば、全員怪しい。蓮也は奈緒を殺したし、生徒会に脅されたと言う体で立っていれば第4ゲームは何とでもなる。蒼は捉えどころがないし、陽斗は良くも悪くも良いイメージも悪いイメージもなさすぎる。康太は──」


 そこまで口にして、梨花の口が止まる。そして、すぐに言葉を続けた。


「──康太は、なんとなく怪しい。どことなく信頼に値しない、って言えばいいかな」

 本人がここにいれば、「言いがかりだよ」などと口にして方を竦めるだろうか。それとも、怒るだろうか。


「誠はどう思う?」

「自分と同じチームの人物を疑うのは少々心が痛むんだがな」

「あら、誠にも痛む心はあるのね」

「どういうことだ?」

「いや、感情とかない冷酷非情な人だと思ってた」

「他でもない梨花にそう思われているとは心外だな」

「ふふ、冗談よ」

 そう口にして、梨花は少し笑う。彼女が笑ったのは、美沙が死んで以降初めてのことだった。


「──で、誠はどう思うの?蒼や康太は」


 梨花が真面目な顔に戻って、誠にそう問いかけた時──。



「俺がどうかしたか?」

「僕がカッコいいって噂は、僕の前でやってくれると嬉しいピョン」


 開いたまま閉めていなかったリビングの窓から顔を覗かせていたのは、康太と蒼──誠と同じチームEの寮で生活をしている2人だった。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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