7月31日 その①
──歌穂の救出。
そのミッションは、当事者である愛香の回復を極力待つために実行は最終日に行われることになった。
皇斗単独でも可能──そう予想されていたが、愛香が敗北している事実がある現在、皇斗が単独で動くことは拒否されたのだ。
──そのため、七不思議其の参に参加しているメンバーには暇な時間がやってくる。
7月の29日と30日は何事も無く終わり、最終日がやってきて──、
「──そろそろだ」
ここは、四次元。
そこに集まった3人は、円形に配置した椅子に各々が座っている。彼らは、生徒会。
七不思議其の参が行われている影響で、いつも使用している生徒会室に立ち入れないがために、マスコット大先生の管理する四次元にて会議を行っていた。
「30日──今日まで、七不思議がクリアされていないという事は、内部で色々と問題が起こっているという事。そうだろう?」
「そうだね、栄と愛香がダウンしてる」
一人の疑問に、一人が答える。その返答を聴き、最後の一人は薄気味悪い笑みを浮かべる。
「栄と愛香がダウンか。栄はともかく、愛香がダウンするとはね。原因は?」
「歌穂だ」
「歌穂が?信じられないな」
栄の敗北は珍しいことではないので、彼らは驚きを見せなかったが、その一方で愛香の敗北には驚きを示す。
「歌穂は今、虎になってる。比喩ではなく物理的に、だ」
「虎に……」
一人は、何を言っているんだと訝しむような目で彼のことを見る。説明を求めようとするけど「現実味を求められても困るよ」と一人は肩をすくめる。
「それで?集まったってことは俺達も動き出すと言うことか?」
「そう言うこと。皇斗も愛香も栄もいない今、デスゲーム会場外で暴れるのに今より絶好のチャンスはない」
それに、栄達は「7月中に生徒会は動かない」と予想している。彼らの虚を突けるのも今だけだった。
「──で、俺達はどう動く?」
「狙うのは決まってる。梨花だ」
「──成程。チームAの寮にはもう彼女しかいないからか」
「そういうこと。美玲を狙いたくもあったんだけど、ゲームに参加しちゃったからね」
チームBも、チームAと同じく1人──美玲しかしない。その美玲も七不思議に参加してしまっているため、自由に動くことが難しいのだ。それと同様の理由で、チームI──奏汰も候補から外される。
「今回の目標は梨花だけ?」
「あぁ。だけど、俺達2人でチームFの寮を襲うのもありだ」
「チームF──智恵達のところか」
「そうだ。今、智恵はチームHのところで七つの大罪の修行をしている。だから、九条撫子や柊紫陽花に頼み込めば協力してくれるかもしれない」
「無理でも、新海ヶ原牡丹を派遣すればいい」
「まぁ、牡丹のことだから捨て駒になるだろうけれど」
勝利を経験したことがない牡丹に対して、辛辣な評価を下す3人。
「──とにかく、今はチームFに智恵がいない。そして、健吾や純介も今は七不思議に参加している。襲撃するなら、今がチャンスだ」
一人がそう口にすると、二人も神妙な顔つきで頷いて見せる。
「梨花の方は俺が動いてみる。そっちが終わったら、2人でチームFの寮に行こう」
「わかった。僕は行く理由もないし警戒されちゃうだろうから、そうしてくれると嬉しいよ」
七不思議に参加していない2人で意見がまとまると、残る1人が手を挙げる。
「こっちはどうすればいいかな?」
「特に何もしなくていい。七不思議が終了したら作戦が崩壊するから、ゲームが終わらないようにしてほしい」
「ゲームが終わることに関しては問題ないだろうけど、わかったよ」
3人はそう話をまとめて、解散になる。
──そして、3人は四次元から三次元へと帰っていった。
「──何もしなくていいだなんて、仲間外れにされているようで嫌だなぁ。こっちだって命を張ってるのに」
一人、生徒会室の上に腰を下ろす彼は憂いていた。聡明な彼は、自分の未来を察することができた。
「きっと、次に正体を明かすことになるのは僕だ。都合のいい駒としか思われていないんだろうな」
生徒会メンバーの中で、序列が存在しているのなら彼はその一番下である自覚があった。
だって、他の2人は上手くクラスに溶け込んでいる。生徒会は誰か──という話し合いをして、捜査線上に名前が挙がるのは自分だけだ、そう考えていた。
「まぁ、やるからにはこっちもやりたいようにやらせてもらうよ」
ゆっくりと立ち上がり、教室を出る。皆のいるところへ戻るのだ。
「──あーあ、命なんか惜しくはないけど、楽しいことがしたいなぁ」
そんな嘆きとともに、彼は生徒会室から姿を消した。
***
──7月最終日。
恋人だけではなく親友までもを失った梨花が籠っているチームAの寮のチャイムが鳴る。
「──誰かしら」
その音で梨花は、いつの間にか寝落ちしていたリビングのソファから立ち上がって玄関の方へと向かう。
梨花に対しての来客は珍しい。何か七不思議の方に動きがあったのか、それとも──。
「──秋元、少し話がしたい。入ってもいいか」
チームAの門扉を叩いたのは、今となっては梨花の唯一の理解者とも言える男──西村誠だった。





