7月26日 その⑥
「クラス全員が連帯責任で死亡するって、それじゃあ七不思議に参加することを強制したようなものじゃないですか!」
マスコット大先生の発表に対し、そう反論をぶつけるのは康太であった。
俺は、俺が来る前に皆がどんな説明を受けていたかわからないので後ろの席の歌穂に説明を求める。
歌穂の説明を受けて、マスコット大先生の一連の説明を要約するとこうだ。
1.夏休みには会長会議と七不思議の参から伍が行われる。
2.マスコット大先生は夏休み中はデスゲームを強制しないと言った。
3.会長会議に参加するためには、七不思議其の参をクリアする必要がある。
4.会長会議に参加しないと死ぬ。
「──成程」
康太の質問に対して「ですから、全員に対して強制はしていません。ですので、自分を含めて全員が生き残るために自分が死ぬ可能性のある道を選べる勇者の方だけが七不思議其の参に参加し、クリアすればいいのです」などと矛盾を解消するために言い訳に近い理屈を並べているのを耳にしながら、歌穂の説明で状況を理解する。
「会長会議に辿り着くまでにはもう少し時間がかかりそうだけど、とりあえず道筋はしっかりしてるな」
会長会議に関係ない七不思議其の肆と其の伍は、今は一旦無視をする。参加するかは、その時次第だ。
まず、7月中に七不思議其の参をクリアする。そして、夏休みのほぼ全てを使って行われるだろう会長会議とそれ以降のイベントに参加して他のクラスと今日とするor戦いに勝利する──と言った感じだろうか。
「これまでの人生で一番長い夏休みになりそうだな……」
「相手はアタシ達と同じデスゲームの生き残り。どんな悲鳴が聴けるか楽しみね」
歌穂はいつも通りのことを言っている。いつも通りのことだから、気にしない。
──と、康太とマスコット大先生の言い合いは、康太が折れる形で終了する。
マスコット大先生との口論は、巧み──というかトリッキーな話術でマスコット大先生の流れに乗せられてしまうのはよくある話だった。
俺も、マスコット大先生が自分の父親であるとしてもその攻略方法を見つけられていない。
「中村康太君も納得してくれたようでよかったです」
マスコット大先生がそう口にする他所で、康太は納得していなさそうな無粋な顔をして座っている。
俺はマスコット大先生による説明を直に受けていなかったから怒りなどは湧いてこなかったけれど、他の皆も不服そうにしているし康太の怒りは正しいのだろう。
「──さて、それではあと少し残っている会長会議についての説明に戻りましょう。会長会議には、最大で他の7クラスが参加するという話をしました。ですが、他の7クラスにも七不思議其の参と同様に課題が割り振られています。ですので、7クラスも参加クラスがいない可能性もあります」
「その場合はどうなるんですか?」
「奏汰君、いい質問ですね。その場合は、そのクラスを排除したままで会長会議を行います。要するに、参加しないクラスはないものとして扱うわけですね。当たり前のように思われるかもしれませんが、この規則があるのとないのとじゃ大きく違うんですよ」
きっと、出席議員の過半数──みたいなことを言いたいのだろう。
そうなった場合、もしかしたら投票などがあるのかもしれない。会長会議で何が行われるのかはわからないが、話し合うことだけは間違いないようだった。
「会長会議について後話していいことは……そうですね。会長会議に参加できるのは、1クラス5人まで。そして、クラス会長である池本栄君は確定で参加する必要があります。会長会議は8月1日に行われますので、それまでに最大で残り4人、誰を会長会議に連れて行くか決めてください」
マスコット大先生は、俺の方をその被り物の双眸でしっかりと捉えてそう口にする。
「──随分、重い荷を背負っちまったな……」
俺はそうぼやきつつも、俺を助けてくれた皆に報いたいなどと考える。
「それでは、会長会議の説明も終わりましたので夏休み前最後のホームルームを終わりにしたいと思います」
マスコット大先生が挨拶をして、ホームルームは解散となる。
本当に皆が俺を待っていたのだと思い、申し訳ない気持ちなっているとマスコット大先生が俺の方に歩いて来る。そして──
「池本栄君。クラス会長であるアナタに特別なお話があります。今、少しお時間はありますか?」
マスコット大先生が被り物の口角をあげてそう問いかけてくる。有無を言わせぬその歪な笑みを押しのけるようにした後で、俺は静かに頷いた。
「──それでは、教室を変えましょう。ここではうるさすぎます」
「はい」
俺は、噛み締めるように返事をしてゆっくりと立ち上がる。そして、荷物を持って教室を出ようとすると──
「栄」
「──皇斗。どうした?」
「余からも話がある。マスコット大先生との話し合いが終わったら教室に戻って来てくれ」
「──わかった」
随分と話し合いを溜めこんでしまったな──などと思いながら、俺は荷物を机の横にかけ直してマスコット大先生の後をついて行った。





