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7月26日 その③

 

 会長会議。

 マスコット大先生の口から仄めかされた夏休みの一大イベントの予感がするそれの概要は、マスコット大先生の口から話されることはない。


「だって、クラス会長である池本栄君が遅刻しているのであれば、私が説明するのは二度手間じゃないですか。私に説明義務があるのは、クラス会長である池本栄君にのみ。それ以外の有象無象である君達に話す義務はないんです」

「でも、知る権利はあるでしょう?」

「私は政府でも公的機関でもございません。別組織です」

 屁理屈のような言い合いが続く。のらりくらりと生徒側の要望を躱すマスコット大先生の屁理屈は流石の技量だ。


「屁理屈だろうが理屈は理屈。無理屈でなければ無理に屈する必要などないんです」

 マスコット大先生は教壇に体重をかけながらそんなことを口にする。栄が来るまでは、「会長会議」のことについて本当に説明するつもりはないようだった。


「ですが、私としても池本栄君にのみ説明義務があるから早く来てもらいたいんですよね。山田稜君、何時くらいに来るって連絡はありましたか?」

「さぁ、そこまでは聞いてません」

 稜は眉を下げながら、少し残念そうにそんなことを口にする。遅刻する栄の予定が増え続けているが、学期の終わりだから仕方ないだろう。


「では、会長会議についての話はこれで終わりにします。次は──って、結局これも会長会議に少しは関連する内容ですね。次なる七不思議についてです」

 マスコット大先生の報告は、会長会議から七不思議に移る。

 第8ゲームが長かった彼らにおいて、七不思議は実に2ヶ月弱の期間が空いていた。


 ──ここで一度、七不思議について振り返っておく必要があるだろうか。

 七不思議とは簡単に説明すれば、あらかじめ決められた月に行われる参加が任意のデスゲームである。

 任意参加なだけあって、クリア報酬は大きく今後のゲームで優位に働くことのできるアイテムが購入可能なコインを手に入れることが可能だ。

 これまでに二度のゲームが行われていた。一度目は5月に『20cmの高揚感』が、そして二度目は6月に『トイレのこっくりさん』と呼ばれるものだった。


「そんな七不思議ですが、其の参をこの7月中に行います」

「7月中って、もうすぐ終わりませんか?」

 梨央の指摘する通り、今日は7月の27日だ。今日と言う一日を含めたとしても、7月は片手で数えられるほどしか残っていない。


 そして、七不思議は土日にのみ行われると言うルールが存在している。だから、今日が月曜日であることを考えると七不思議其の参が行われることはなく──、


「──七不思議が行われるのは、土日ではなく休みの日。即ち、明日から始まる夏休みであれば毎日行うことが可能です」

 七不思議のための夏休みだと言わんばかりの表情──実際には被り物をしているのでほとんど変わっていないのだが──で、マスコット大先生は誇らしげにそう語る。


「夏と言えば怪談。階段と言えば学校。学校と言えば七不思議。三段論法で夏と言えば七不思議なんです」

 マスコット大先生は無理のある理論を通す。きっと、反論しても無駄だろう。


「というわけで、8月には七不思議其の肆と其の伍も行います!皆さん、奮ってご参加くださいね」

 会長会議を除く夏休みの予定も発表される。会長会議は、まだ具体的に何をするのか明かされていないけれど七不思議もあるのなら飽きることは無さそうだった。


「ゲームの内容は、ゲームが始まる際に発表しようと思いますのでしばしお待ちを。それ以外のことで、何か質問のある方はいますか?」

 右手を挙げながら、デスゲーム参加者にそう語りかけてみるマスコット大先生であったが誰も反応を示さない。教室を2周程見回した後で、マスコット大先生はその手を下げる。


「──はい。では、誰も質問も無さそうですね。夏休みのことについて私からの連絡は一先ずこれで以上です。終業式はないですが、池本栄君が学校に来るまでは学校に残っておいてください。池本栄君が来次第、この教室で会長会議についての説明を行います。それまでは自由時間にしておいてください」

 マスコット大先生はそう告げると、一礼して教室から出ていく。

 張り詰めていた空気が弛緩し、そこで初めて稜達は空気が張り詰めていたことを理解する。


「──結局、栄が来るまでは暇になのか」

 教室の最後列、廊下側から2列目の場所で稜はそう口にする。右の方に桂馬跳びをした場所は、本来いるべき人物の姿はなく空白になっていた。


「栄がクラスの中心にいるのは理解できるが、栄がこのクラスにおいて不可欠な存在になったのは不服だな」

 稜の前に座る愛香も、栄に対してそんな評を下す。机の上に足を乗せたまま視線を伏せ──、


「だが、栄を特別扱いした妾達にも非がある。隠し味ばかりに頼りすぎた罰だとして、甘んじて受け入れるしかない。悔しいがな」

 苛立ちを抑えるようにそう口にする愛香は、稜にとってなんだか珍しく思えた。


「愛香、嬉しそうだね~」

 稜の右隣では、歌穂がニヤニヤしながらそんなことを呟く。


 稜が歌穂の呟きの真意を理解することはできない。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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