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王国戦争 その⑫

 

『鋼鉄の魔女』アイアン・メイデンと、彼女が操る巨人兵──完全体の〈鋼鉄の巨人(ギガント・インパクト)〉の乱入により、『王の古龍』討伐戦線の戦局は大きく傾く。


 勇者達が『王の古龍』の翼を捥ぎ、しばらくは地を這うことしかできなくなった龍の動きを〈鋼鉄の巨人(ギガント・インパクト)〉が止める。

 その連鎖は、あまりにも勇者一行に都合がいいものだった。


「──何故かはわからないが、メイも協力してくれているようだ」

「アレンが智恵を勧誘する口実に手伝ってくれているのかもしれないけど、そんな心配をして絶好のチャンスを逃すのも馬鹿馬鹿しいわね」

 皇斗が現実を見据え、美玲が憂慮を口にする。アレンは智恵の手で葬られているからいらぬ心配だが、そんなこと勇者一行は知る由もない。


「それじゃ、僕達も固まってないで動こうか」

 奏汰はニコニコと笑みを浮かべたまま、そう口にする。


「では、行くぞ!妾が龍を討つ協力をしろッ!」

 愛香がそう口にして右手を前に伸ばすと同時、その場にいた勇者一行全員が〈鋼鉄の巨人(ギガント・インパクト)〉に囚われる『王の古龍』の方に向けて動き出す。


「「──〈波の花道(リーフサーフィン)〉!」」

 蓮也と陽斗の2人がBランクの土魔法を使用して、『王の古龍』へと向かって道を示す。

 勇者一行は、地面が隆起してできたその道を通り『王の古龍』の方へと進んでいく。


「活路は俺が開く」

 魔法使い2人組と共に地上に残ったのは、冷静沈着な弓使い・西村誠。

 彼の双眸は確実に『王の古龍』の鱗のない腹部を捉え、矢が飛んでいく。


「弓矢を鍛えてくれた『神速』には感謝しかないな。〈穿ちの矢〉」

 誠は、自らの体力を削って破壊力の高い矢を放つ。それは、勇者一行を追い抜いて『王の古龍』の腹部に突き刺さり、傷をつける。

 この傷が、勇者一行を狙うべき場所を定めるものとなった。


「先手必勝!乾坤一擲、ファイト一発!」

 真っ先に『王の古龍』に辿り着いた負けず嫌いさだけでは誰にも負けない少女──『負けん気』竹原美玲は、エレーヌから託された剣を振るう。


「〈絶断〉ッ!」

 一閃。茶色の鱗に覆われていない『王の古龍』の腹部にキレイな一閃が浮かび上がる。

 誠の付けた矢傷に上書きする様に、紅色の一閃が浮かんだ。


 ──まだまだ、勇者一行の攻撃の嵐は止まらない。


「これだけあれば、傷口を広げられそうだ」

 奏汰はそう口にすると、右手に装着しているメリケンサックを強く握り、そして──


「〈叢時雨〉」

 傷付いた腹部に強力な一撃を加え、美玲の付けた傷口を無理矢理開く。

『王の古龍』の腹部の肉が抉れて、その肉片が周囲に飛び散る。


「──まだ、足りないか」

 奏汰は使い物にならなくなった右腕を振るいながら、後方に下がる。その代わりに、『王の古龍』の傷口に対して巨大な質量を振るったのは、1人の白髪。

『無事故無違反サイコパス』の二つ名で苦労強いられる歌穂が、斧を振るう。


「──〈斧塵爆発(アックスボンバー)〉!」

 歌穂の強力な一撃は、更に『王の古龍』の体を抉り、巨大な心臓を剥き出しにする。


「──見えた、心臓ッ!」

 歌穂が嬉しそうにそう口にした刹那。

 やられっぱなしだった『王の古龍』が最後の力を振り絞って抵抗を見せる。


「──尻尾が!」

 真っ先に、尻尾が振るわれることに気が付いたのは大盾を持つ真胡だった。

 このままでは、蓮也達が作ってくれた土の道が壊されてしまう。急所であろう心臓が明らかになったのに、このままでは最悪回復されて全てがやり直しだ。


「──私が、防ぐ!」

 真胡は、自ら土の道を外れて暴れる『王の古龍』の尻尾の方へと落ちていく。


「〈衝撃吸収〉!」

 真胡は、大盾で一度『王の古龍』の攻撃を受け止める。これにより、〈波の花道(リーフサーフィン)〉でできた『王の古龍』へと続く道が壊されることは回避できる。


「だけど、次はいつ暴れるか……」

『王の古龍』の鱗だらけの尻尾にしがみつきながら、真胡はそんなことを考える。すると──


「じゃあ、斬り落としちゃえばいいピョン」

 どこかから、そんな声が聴こえてくる。姿が見えずとも、その声の主が神出鬼没の『十戒破り』宇佐見蒼は火を見るよりも明らかだった。


「僕の昼寝を邪魔した罪はデカいピョン。〈意志揺るがぬ魂の鼓動(アトミックハート)〉」

 遥か上空から落下してきた──いや、何もない空中を走りながら、その野兎はやってくる。そして、龍の尻尾を斬り落とす。


「蒼、空走れたの?」

「『剣聖』からくすねたポーションのおかげだピョン。実際に空を走れる人間なんか、僕は一人しか知らないピョーン」

 尻尾を斬ったことで、地面に落下していく真胡と蒼はそんな話をする。余裕はたっぷりだ。

 だが、そうだろう。「実際に空を走れる人間」と、『高慢姫』の2人が『王の古龍』の心臓の前に相対し、その武器を構えているのだから。


「愛香、タイミングを合わせる。だから好きにやれ」

「言われなくとも」

 2人の最強が、同時に翔ぶ。一方は槍を、一方は剣を構えた。


 ──時間稼ぎは、他の皆がしてくれた。

 だから、2人共溜め技を放つだけの余裕がある。


「「さらばだ、『古龍の王』」」

 皇斗と愛香の声が重なり、剣戟は振るわれる。


「〈神をも殺す(スクリュー)橘色の真槍(・ドライバー)〉」

「〈空を泳ぐ鯨の啼く季節(ホワイトアウト)〉」


 2つの刃が『王の古龍』の心臓に届き、勝負は決する。

 『古龍の王』と勇者一行による伝説の一幕は、誰が見ても勇者一行が勝利だと思える形で幕を降ろした。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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