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王国戦争 その④

 

 極地パットゥの局地で開始した戦いの一つ、『羅刹女』プラムとの戦いで栄達8人は苦戦を強いられていた。


「──〈回天炎舞〉」

 プラム姫の持つ一対の扇が炎を宿し、高速の斬撃として飛ばされる。俺の頬に掠っただけで血が噴き出たから、かなりの威力だ。直撃したら致命傷は免れないだろう。


「栄、大丈夫?剣での戦い慣れてないでしょ」

 無闇に近寄れないと判断した俺は、足手まといにならないように後方に下がっていると、梨央がそう声をかけてくれる。


「正直なところ、かなり厳しい。でも、盾を渡されても自分一人しか守れ無さそうだから剣でよかったよ」

 タンク役が自分だけしか守らない──だなんてことをしでかしたら本当の意味で足手まといになってしまう。


「なんだか、栄らしいね」

 そう口にして、梨央はコロコロと玉のような笑みを浮かべる。と、その時──


「──ッ!」

 炎をまとった斬撃が、俺達の方に飛んでくる。


「この斬撃は俺に止めさせてくれ」

「わかった。無理そうだったら援護するね」

「頼む」

 不慣れな剣に少しでも慣れるため、智恵と稜・健吾が必死の攻防を繰り返している最前線から漏れてきた斬撃を弾くことに挑戦する。


「技は何度も見てたから使える──はず。〈三日月(クレッセント)斬り(スラッシュ)〉!」

 俺は剣を弧を描くようにして動かし、飛んできた斬撃にぶつける。すると、炎を纏った斬撃はそのまま消えていった。


「これが斬った感覚か……」

 実際に肉を断つのと、こうして斬撃を止めるのとでは感覚も違うのだろうけれどこの感覚は覚えておいて損はないだろう。


「──よし。行けそうだ」

「流石栄。ワタシは剣を持っても振れないからさ」

「梨央のその手は生まれつきだから仕方ない。魔法使いとして活躍してるから剣が触れなくても問題ないよ」

「そうだといいけど」

 梨央は、先天的な理由で握力が無い。ペンを握るのでもやっとだと聞いたし、普通に見える彼女の生活に困難は多いだろう。


「栄!援護頼む!」

 健吾のそんな声が聴こえてくる。


「じゃ、行ってくる」

「うん。頑張って」

 俺は梨央の方を一瞥してから、健吾の方へと走っていく。プラム姫との最前線は、息がするのがやっとの量の斬撃が飛んでいる。梨央と喋れた時のような余裕はない。


「すげぇな、これ!〈双頭斬り(ダブルスラッシュ)〉」

 俺も、少しでも斬撃の密度が小さくなるように微力ながらも尽力する。炎を纏う斬撃は、それだけで熱い。まるでサウナの中で剣を振っているかのようだった。


「栄、〈双頭斬り(ダブルスラッシュ)〉より〈星屑(スターダスト)斬り(スラッシュ)〉の方がオススメだ! ──って、使える?」

「勿論!〈星屑(スターダスト)斬り(スラッシュ)〉!」

 俺は皆の道程を見ていたから色々な技を使えるけれど、皆からしてみれば呑み込みが早い──みたいな感じに思われているのだろうか。

 だけど、皆も誰に師事するわけでもなく最初から色々な技が使えていたから問題ないはずだ。

 皆のを見ていたのが、俺がこのクオリティで放てている一助になっている──という感じだろう。


「流石栄!」

「稜、梨央と同じ反応してる」

「え、マジ?」

 盾で斬撃を防ぎ止め凌いでいる稜に、梨央と同じ褒められ方をしたからそれを伝える。すると、稜は照れていた。両片想いだから早く告白でもしちゃえばいいのに──そう思ったが、稜の禁止行為のことを思い出すと告白も難しそうだ、と思う。

 それと、〈星屑(スターダスト)斬り(スラッシュ)〉は広範囲の斬撃を処理できるから思ったよりも話しやすさはある。だが、少しでも気を抜くとこの斬撃の餌食になってしまいそうだった。


 そんなことを思いながら剣を振るっていると──


「──やはり、歴戦の勇者様ではこの程度の技じゃ死ぬことはないですか」

 プラム姫はそう口にした後に、斬撃の猛攻を止める。プラム姫に接近している俺達4人全員が理解するのは──、


「──大技が来るッ!」

 プラム姫との戦闘──いや、そもそも扇使いとの戦闘が初めてだ。だから、この場にいる誰も突破口を見いだせていない。あの扇を短剣と考えるのはいささか無理があるし、放つ技のタイプもズレている。


「どうすれば──」

「なら、大技を放たせなければいいじゃない。〈雷炎の楔(タイガー・ウェッジ)〉」

「〈絶対神の(アブソリュート・)憤慨(ゼウス)〉」

「〈貫穿する暴風斬(センターオブジアース)〉」

 純介の掛け声と同時に、3つの魔法が同時多発的に放たれる。純介に加えて、梨央と紬が魔法を放ったのだ。


 炎と雷の混合球が、一点集中の雷が、幾重もの風の刃が、プラム姫を襲う。

 だが、プラム姫は平静を崩さずに──


「──多勢に無勢は面倒ですね。まさか、お父様もここまで勇者を召喚するとは思いませんでしたよ。〈一騎当扇〉」

 プラム姫は、舞うようにして扇を振るいながら魔法を破壊していく。


「マジかッ!」

「ですが残念、私には剣も魔法も通用しません。アナタ達は、死ぬのみです」

 プラム姫はそう口にすると同時、一番近くにいる健吾の方へと迫る。


「──健吾ッ!」

 回避しようとする素振りを見せる健吾だけど、それよりも早くプラム姫は健吾の方へと迫る。

 剣のように鋭い扇が健吾の首の方へと迫る。なんとかして守らなければ。智恵が俺を助けてくれたように、次は俺が健吾を助けなければ。


 そう思いながら体を動かすけれど、動かしながらも俺は理解してしまう。間に合わない──と。その時──



「──これはどういう状況?どうして、健吾達とプラム姫が戦っているんだい?」

 俺よりも速いプラム姫より速く健吾の元へと駆けつけ、彼をプラム姫からの一撃から救ったのは一人の最強──『剣聖』マルクス・シュライデンであった。

ラスボスは扇使いにしたかった。彼岸島が好きなので。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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