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RPG 〜剣と魔法と古龍の世界〜 その⑦

 

「──〈焔天の月(ルナ・イグナイト)〉」


 確かな熱が、百鬼夜行の太い首に正確無比に迫っていく。

『古龍の王』となった百鬼夜行も、流石に背中に目は付いていないから後方の様子は確認できないが、その殺気が智恵であることは感じ取れた。

 梨央を殺そうとした際に腕を斬られた際と同様の殺気。誰かを守るために振るわれる殺気──。


「そも

 んう

 な見

 も切

 のっ

 、た」

 百鬼夜行はそう口にすると、首を傾けて首の筋肉で智恵の剣の動きを止める。そのため、智恵の剣は首の断裂までには至らなかった。


「──ッ!」

 智恵の目に宿っていた炎が大きく揺れる。ここで剣を止められるのは想定外だったからだ。

 背後に立つ智恵は百鬼夜行の表情は読めない。いや、ペストマスクを日常的に被っている百鬼夜行の表情はいつも不明だった。だから、今も何を考えているのか読めない。


 ただ一つ、わかることはと言えば智恵に対して何かしらの反撃があるということで──、


「反撃を恐れて、栄を助けられるかぁーっ!」

 智恵が叫ぶようにして、無理矢理自分に喝を入れる。栄を助けるため──彼女のここ一か月の原動力が最後に大きく燃え上がる。


 いくら百鬼夜行だとは言っても、首を斬ってしまえば死ぬはずだ。

 死んでも殺せなさそうな茉裕でさえ、首を斬れば死んだのだ。だから、百鬼夜行も死ぬはず。


 ──だというのに、智恵の剣は首の半分にも届かずに止まってしまう。


 智恵は、百鬼夜行の背中を踏むようにして地面に水平になりながら百鬼夜行の首を斬ろうとするけれども剣は動かない。百鬼夜行から直接、その体が動くのを感じる。このままでは──


「麒麟討伐作戦だッ!」

 そんな声が、百鬼夜行の体を挟んで聴こえてくる。これもまた、防御を度外視したゴリ押しのような一撃。


 健吾が百鬼夜行に飛びつくように飛んで、智恵とは反対側から手中にある剣で首を狙う。


「ク

 ソ

 ッ

 !」

 首を二方向から斬られながら、そんな焦りを漏らす百鬼夜行。死を目前に、流石に焦り始めたのだろう。

 残された左腕を動かし、自分の眼前にいる健吾のことを引き剥がそうと画策する。だが──、


「時間稼ぎは僕に任せて。〈映写機に映る反転世界(ゼロフレーム)〉」

 一瞬だが、対象の動きを必ず止めることのできる〈映写機に映る反転世界(ゼロフレーム)〉を再度使用するのは純介。

 百鬼夜行の動きを確実に止まり彼が苛立ちを募らせる中でも、最低限の冷静さは欠かなかった。


 ──後方から、こちらへと接近してくる足音がある。


 山田稜。

 先程吹き飛ばして戦闘不能に追い込んだのに、回復魔法で復活してきた男。


 ──再生に一番頼っているの百鬼夜行であることは間違いないのだが、無ければ無いで相応の立ち回りをしたつもりだ。やろうと思えば回復や再生無しでも勇者一行を虐殺することだって可能だと自負している百鬼夜行だが、その条件は相手に回復魔法がないことだ。

 相手に魔法使いは3人いる。全員潰すより先に、誰か1人が他を回復していたちごっこだ。

 そんな回復魔法と数の暴力の象徴が、百鬼夜行にとっては稜だった。

 何度戦闘不能に追い込んでも復活しては、馬鹿の一つ覚えのように食い下がってくる少年。自己犠牲の塊のような思考回路で動いている少年。デスゲームなのだから、真っ先に死ぬような性格なのに。それなのに──。


「俺の友達は傷付けさせない」

「や

 め

 ろ」

「──〈絶断〉」


 稜の剣が百鬼夜行の首を切り落とす──





 ──ようなことはない。


「ッ

 !」 


 歓喜。

 百鬼夜行は、自分の残された左腕が斬り落とされるのを感じながらペストマスクの下で笑みを浮かべる。

 この状況で更に首に剣が迫っていたら流石に斬り落とされていたかもしれないが、仲間想いの稜は首ではなく攻撃できる腕を選んだ。


 ──勝機。

 腕を斬られても、足がある。剣が無くても、腕が無くても、コイツらの腹に穴を開けることなど容易だ。

 百鬼夜行はそんなことを思いながら足をあげようとして──。


「あ

 ?」

 百鬼夜行の足は動かない。百鬼夜行は双方からの剣のせいで首が固定されているから下が見えない。また〈映写機に映る反転世界(ゼロフレーム)〉で動きを止められているのか。否。


「〈雪月華〉。霊亀を倒した時と同じ足止めの方法だよ」

 百鬼夜行の視界の端に立っていた紬がそんなことを口にする。手だけでなく足も使い物にならなくなってしまった。


 ***


 百鬼夜行──俺は思案する。

 両腕とも斬られ、両足は氷の地面に貼り付いて動かせなくなってしまった。


 ──だが、まだ歯がある。

 手も足も出ないが、歯が立たない訳じゃない。歯があれば喉に噛み付くことができる。ペストマスクが邪魔だが、これを取り外してしまえばいい。


 ──そうだ、ペストマスクだ。

 俺が『古龍の王』として選ばれたのは、何も茉裕とタッグを組めるからじゃない。

 俺が池本朗──この場合だとマスコット大先生と同様に被り物をしているからだった。


 この世界にいる8体のボス──龍種は、皆被り物をして力を抑えている。

 そしてそれは、龍種を統べる長である『古龍の王』──要するに俺も同じ。

 だから、このペストマスクを外すことさえできれば簡単に形勢逆転できる。容易に勇者一行を倒すことができる。


 だから、被り物を──


「〈星月夜〉」

 俺が被り物を外そうと身動ぎを始めた矢先、ペストマスクを挟んで直接俺の頭に矢が深く刺さる。

 まずい、これでは被り物が外せない。このままじゃ本気も出せない。耳元では智恵と健吾が叫びながら首を斬ろうと剣を振るい続けている。このままではマズい。何か、何かしなければ。手も足も動かない。ペストマスクも外せない。俺はどうすれば。マズい。あの女に付けられた〈崩壊する獄炎(ジ・エンド)〉のせいで再生が間に合わない。助けて。そうだ、茉裕。茉裕、俺を助けに来てくれ。回復魔法の一つでもかけてくれれば、足の氷を少しでも融かしてくれれば、智恵か健吾の動きを一瞬でも止めてくれれば、俺は形勢逆転できる。だから茉裕、俺を助け──ぇ。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
百鬼夜行、ここまでか? 最後に……名を呼ぶが、次回以降の展開にワクテカです。
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