RPG 〜剣と魔法と古龍の世界〜 その⑥
切断された右腕が氷で塞がれた百鬼夜行の前に立ち塞がるのは、純介と稜。
百鬼夜行に腹部を穿たれた智恵を回復させる時間を稼ぐために、2人は今も自分で穿った胸の再生を続けている百鬼夜行の足止めをする。
「それにしても、首を切っても首ごと生えてきそうだな」
「もしかしたら、斬った方の首から胴体が生えて2人に増えるかもしれない」
「それはキモいな」
稜と純介はそんなことを口にしながら、百鬼夜行の動き出すタイミングを見計らう。
氷で塞がっている以上、そこから右腕を復活することはできていない。傷口を塞ぐことは、どうやら百鬼夜行を倒すための正解だったようだ。
先程まで百鬼夜行が左腕で持っていた大剣は純介の〈内なる心が降らす涙〉で破壊された。そして、先程まで右腕で持っていた大剣は百鬼夜行の足元に落ちている。
──その体験を拾う素振りを見せた時、稜と純介が攻めるチャンスだ。
だが、それは百鬼夜行の方もわかっているのか中々動く素振りを見せない。片腕を失っているにも拘わらず、ただ超然とした態度でそこに仁王立ちしていた。
百鬼夜行にとっても7人に囲まれることは避けたいだろうから、智恵が回復するまでには動くはず。
ここは、雨が止むのを待つように百鬼夜行が動くのを待てば──。
「お天よ
前才う
らだな
のと人
よ持間
うてが
な囃考
凡さえ
庸れる
なたこ
人だと
間けな
がでど
、調お
池子見
本に通
朗乗し
にるだ」
百鬼夜行はそう口にすると、右足を背面は大きく上げる。そして──
「──純介ッ!」
稜が叫ぶようにして純介の名前を呼ぶのと同時、百鬼夜行は足元に転がっていた大剣を純介の方へと蹴り飛ばす。人より長く人より重そうな見た目をしたその大剣は、純介の方へと飛んでいく。
「〈台風の瞳〉──ッ!」
純介は、自分の足元に風魔法を使用して体を浮かすことで大剣を回避する。
だが、それを見透かしていたかのように百鬼夜行は純介に飛びかかった。
「言こま
っとだ
たなま
通んだ
りか、
、何経
おも験
前かと
らも勘
凡おが
人見足
の通り
考しな
えだい
る。な」
百鬼夜行が宙に投げ出された純介に向かってラリアットを使用する。
「魔こ
法れ
使が
いこ
のの
喉世
を界
潰の
す常
。識」
喉が潰された魔法使いは、自分に回復魔法を放つことができない。HP用回復ポーションを持ち合わせていれば話は別だが、大体の魔法使いはMP用ポーション以外持っていないから喉を潰した時点で勝敗は決まってくる。だからこそ、魔法使いは遠隔から魔法を放つし敵の接近を許さない。
「──」
声にならない声を出しながら、純介は遠くに吹き飛ばされていく。梨央か紬のどちらかに回復魔法をかけてもらわないとならないだろう。
──あ。
「させないッ!」
稜には、百鬼夜行の次の狙いが見えてしまった。
きっと、再生能力を持っている百鬼夜行が一番再生の強さを知っているはず。そうなると、百鬼夜行は勇者一行に再生させないように振る舞うだろう。
──そうなれば、自ずと答えは見えてくる。
次に百鬼夜行が狙うのは──
「梨央!紬!逃げろ!」
稜がそう避難信号を口にする刹那、百鬼夜行が梨央と紬の方へと動き出す。智恵を回復させるために動いている2人を守っているのは健吾だけ。
稜の声のおかげもあってか、百鬼夜行の接近にいち早く気が付いた健吾は剣を鞘に構える。
稜も剣を使うようになったからあの技は知っている。レベル50になったものが習得する横一文字に剣を振るうだけだが強力な技──〈絶断〉だ。
きっと、健吾の中で今一番火力が出る技はそれなのだろう。
だがしかし、それで百鬼夜行を止めることができるとは思えない。そもそも、百鬼夜行を魔法使い2人の方へと接近させちゃダメなのだ。
「邪
魔
だ」
「お前こそ」
百鬼夜行の拳と健吾の剣がぶつかる。そう思ったその時──、
「──〈龍をも殺す光輝〉!」
後方から光速で迫ってくる美緒が放った1本の矢。百鬼夜行の方へとその矢は進んでいく。
「矢
の
一
本
程
度
、
気
休
め
に
も
な
ら
ん」
百鬼夜行はそう口にして、光速で迫る矢を無視する。その矢は、百鬼夜行の体に突き刺さって──
──しまうようなことはなかった。
「は
?」
再生している最中の胸に開いた穴を通り抜けて、百鬼夜行を追い抜かしていく。
「俺達が凡人だからって油断したろ?」
健吾はそう口にして、不敵な笑みを浮かべる。そして──
「──それがお前の敗因だ!」
百鬼夜行よりも速く迫ってくる美緒の矢は、健吾の剣で弾かれて百鬼夜行の方へと飛んでいく。
その矢に注意を惹かれた百鬼夜行。だが、例えそれが光速で飛んできて百鬼夜行の胸の間を通っていったとしても、例えそれが健吾の剣に弾かれて百鬼夜行の方に飛んでいったとしても初戦はただの矢だ。
刺さったとしても致命傷にはならないのだから、他になにかあるはずなのだ。
──と、そう気付いた時にはもう遅い。
いつの間にか復活していた智恵が、確かな熱と共に百鬼夜行の後方に回っていて。
「──〈焔天の月〉」





