表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

761/835

斧×斧 その③

 

 蒼の全身にかけられた負荷に耐えられず、体の節々から鈍い悲鳴が聞こえてくる。

 斧でなんとかガードしたから、体を真っ二つにされて即死は避けられたが、全身の骨が粉砕されたタビオスの一撃で、蒼の意識は遥か彼方は飛んでいく。


 ──彼が見るのは走馬灯。

 彼が辿って来た、歴史。


 ***


 宇佐見蒼──僕は(中略)。


「──え?」


 僕の性格の(中略)。


「──中略?」


 激昂した彼女は(中略)。


「おかしいピョン。僕の折角の過去回想代わりの走馬灯なのに中略って……」


 そんな現状に追われているある日、(中略)。


「僕の人生ってそんな省いていいものじゃないピョン!」


 その手紙を縦読みにしてみると、「デスゲ(中略)。


「嫌だピョン!こんな、こんな最後嫌だピョン!」


 4月1日。

 新しく生活する学校に足を運んでみたけど、教室にはブスばっか。まぁ、僕が一番可愛いのは変わり無(中略)。


(中略)。


(中略)。

(中略)。


(中略)。

(中略)。

(中略)。

(中略)。

(中略)。

(中略)。

(中略)。

(中略)。


『どうしたの?蒼』

 割愛ばかりが挟まった蒼の走馬灯のスピードが緩まり、ある一室を浮かび上がらせる。


「ここは……」

 心身に浮遊感を覚える蒼がその部屋を見回すと、アンティークの逸品が並べられていた。

 蒼は、この部屋に対して見覚えがあった。ここは確か──


「『剣聖』の私室……ッ!」

 鯀との戦いの前に、蒼だけが招待された『剣聖』の持ち家は蒼にとって思い出したくない場所だった。

 何故なら──


「──ここは、『剣聖』が3時間喋り続けてた部屋ッ!」

 走馬灯として過去を俯瞰的に追体験している蒼が、この部屋での三時間にわたる惨事を想い出しても、もう遅い。


 記憶の中の蒼は、1つの壺を指さして「これは何ピョン?」などと、大して興味もないくせに興味本位で質問をしている。

『剣聖』は、一を聞いて三千を語る男だ。だから、蒼の質問にマシンガンのトリガーは惹かれ──。


「え、蒼はその壺が気になるの?随分とお目が高いね。やっぱ異世界のノウハウとかがあったりするのかな?それとも、異世界でもこの壺は高価に映るのかな?ま、どっちも似たような感じだしいいや。この壺はね、『魔帝』と一緒に手に入れた宝の中にあった壺なんだけどね、これがまた凄いんだよ。えぇと、中身の話をしようかな?いや、先に壺をどうやって手に入れたかの話をしよう。経緯を知ってからの方が蒼も理解がしやすいだろうしさ。この壺は、今から6年前に隣国のニーブル帝国に行ったときに手に入れたものだよ。あ、わかる?ニーブル帝国って。あんまわかってなさそうな顔してるね。それじゃ、まずはニーブル帝国のことについて話そうか。ニーブル帝国は僕達が今いるドラコル王国の西側にあって、面積はドラコル王国の大体1.2倍くらいかな。ニーブル帝国を一言で表すと、やっぱ野蛮だよね。そして、魔法が使える人が少ない代わりに特殊な能力を持っている人が多い。魔法と特殊能力──権能って言うんだけど。それの何が違うかの説明も必要か。魔法は魔力を使って多種多様なことができるけど、権能は種類が少ない代わりに一点特化した技が使える──みたいな感じだよ。手数の多さでは魔法が有利で、権能は破壊力が大きいことが特徴かな。まぁ、どっちも一進一退でどっちの方が優れてるとかは一概には決めれない。ほら、魔法使いだって一つの属性を極めている人もいるでしょ?ドラコル王国の中から例を挙げるなら『落雷の鉄槌』だったり『鋼鉄の魔女』だったり。あ、この2人は両方ともさっき一緒にニーブル帝国に行ったって言う『魔帝』の弟子ね。ちなみに、ドラコル王国生まれの人で権能を使える人は数が限られえている。超有名どころだと、君達が命を狙っている『古龍の王』にも権能がある──とされているけど、まぁ噂程度って感じかな。僕もそこまでは知らないや。でも、権能使いとして有名案ドラコル王国生まれの人は『般若』とか『炎天』とかかな。まぁ、蒼は知らないか。『般若』は山奥に籠もってるし、『炎天』は宗教都市ムーヌの近くに住んでるからね。麒麟と霊亀を討伐して商業都市アールに来た蒼は接点を持てる方が難しいよ。で、そんな権能使いが魔法使いよりも多くいるのがニーブル帝国ってところ。どうして魔法使いと権能使いの量に差があるかって言われると、正直よくわかってない。でも、魔法学研究の第一線であるハルカ・ハルニエル博士によると先祖の血が大きく関連してるらしいね。僕も論文はいくつか読んだけど、詳しく理解してるわけじゃないから詳しくは説明できない、ごめん。そんな権能使いの多いニーブル帝国は、言った通り魔法使いが少ないから権能を持ってない人は武器を持つんだよ。ほら、僕みたいにね。だから、蒼みたいな斧使いだったり僕みたいな剣士だったり。弓使いもたくさんいるし、仲にはガンマンっていう銃使いもいる。あ、銃って知ってるかな?弾丸と一緒に火薬を銃っていう特別な器械に詰めて、火薬の小爆発を利用して弾丸を飛ばすんだよ。かなり前時代的な武器で、魔法が発展してる今となってはマイナーな武器なんだけど、ニーブル帝国だとはいえ活躍してるのは凄いことだよね。とまぁ、そんな色々な武器を持っていて野蛮な人が多いのがニーブル帝国だよ。ニーブル帝国にも、ニーブル列伝ってのがあって、この国のドラコル神話とは違った昔話が書かれてるんだ。あ、ニーブル列伝の内容も気になる?いいよ、話してあげる。(中略)と、そんな感じでニーブル列伝は幕を閉じるの。っていうか、そもそもドラコル神話の方も知らない?それは大変だ。この国の人にとってドラコル神話は子供のころから知っている大事な物語だから、是非知った方がいい。それこそ、龍種を倒したんだったら龍種の生まれを知っていた方がいいだろうしさ。それじゃ、ドラコル神話の話をするね。(中略)はい、これにてドラコル神話は終了。でもまぁ、これは本当に最初の最初で、語ろうと思えば歴史の授業になっちちゃうからね。別にしてもいいよ?ドラコル王国ができてからの何千年もの歴史とそれぞれの時期に活躍した英雄を僕は君に話すことができる。そうすれば、君は勇者の中で一番のドラコル王国マスターになれるよ。とまぁ、流石に冗談。今はニーブル帝国の話をしてたんだったよね。ニーブル列伝の中にも出て来た通り、ニーブル帝国には5人の守人がいるんだ。僕達の国の龍種みたいな感じだね。その守人達5人のことを具体的に話すと(中略)。まぁ、大体これがニーブル帝国についての概要かな。どう?わかりやすいでしょ。それでやっと、この壺の話に戻ってくるんだよ。この壺は、今から6年前に『魔帝』と一緒にニーブル帝国に行って手に入れたお宝なんだ。(中略)。ほら、中身を見てみて?これは、ニーブル帝国で錬成された濃度の高い回復用ポーションになってる。これだけ少量だけど、効果はてきめんだよ。Sランク回復魔法と同等かそれ以上の回復量を誇るんだ。僕も勿体なくて、これまで3回くらいしか使ってないんだけどね。いつ使ったか、これも壮絶な話だよ。まず1回目は(中略)。とまぁ、今挙げた3つでしか使ってないんだ。普通の回復用ポーションでなんとかなるからね。こんな貴重なものをよく『魔帝』がくれたねって驚いてる?あー、『魔帝』についてあんま知らない?よし、それじゃあ教えてあげよう。『魔帝』──僕が言ってるのは、その中でも12代目『魔帝』で(中略)。とまぁ、そんな凄いおじいちゃんである『魔帝』が、僕にこの壺を譲ってくれたんだ。中に入ってるのが回復用ポーションだからって理由だね。知っての通り、僕は魔法がこれっぽちも使えないからね。怪我の回復はポーションに頼るしかないんだ。一方で、『魔帝』は息をするようにSランク魔法が使えるから、正直に言えば回復用ポーションなんて必要ないんだ。多分あのおじいちゃん、首を斬ったって死なないよ。実際に斬ったことがあるわけじゃないからわからないけどね。(中略)え、この壺欲しいの?えー、どうしようかなぁ(後略)」


「──そうだ、思い出したピョン」

『剣聖』のマシンガントーク3時間パックを追体験した蒼は1つのことを思い出す。

『剣聖』と壺の話をしてから、今の戦場に来るまで怒涛の勢いでやってきたから忘れていたが、蒼は『剣聖』からこの壺を受け渡されたのだ。


 ──そして、今も蒼はこの壺を持っている。

 この壺の中にある回復用ポーションを使用すれば、全身の骨が粉砕してようと一瞬で回復できるはずだ。


「──『剣聖』もたまにはいいことするピョン」

 そう口にして、『剣聖』の私室から意識を剥がす蒼。そして、彼は意識を取り戻したのだった──。

『剣聖』による3時間のお喋りをフルで聴きたい方は連絡ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨城蝶尾様が作ってくださいました。
hpx9a4r797mubp5h8ts3s8sdlk8_18vk_tn_go_1gqpt.gif
― 新着の感想 ―
(中略)が多過ぎ(笑 この蒼の適当な扱いが最高。 でもここで反撃の芽が出てきた。 どうせならもっと蒼をいじり倒して欲しいです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ