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死ぬことの不可避な不死性

 

 ドラコル王国には、神話の時代から存在する8体の怪物がいる。

 麒麟・鳳凰・霊亀・応龍・共工・驩兜・鯀・三苗。


 勇者が召喚されてから王国戦争までで、そのうちの7体が討伐された。

 麒麟・霊亀・応龍・共工・驩兜・鯀・三苗。


 1000年以上前から跋扈していた龍種のほとんどが3週間弱で駆逐されている現状は古今未曾有の話だが、それでもまだ生き残っている龍種が1体いる。

 それが、鳳凰だ。


 鳳凰は死なない。

「最強だから」ではない。「高耐久だから」でもない。

 ゲーム『RPG 〜剣と魔法と古龍の世界〜』において「鳳凰の死」は実装されていないのだ。


 では、ゲーム本編において鳳凰はどう倒されるのか。

 ネットの攻略情報を見てみると、それにはこう書かれている。


 "鳳凰との戦いを開始したら、ゲーム機本体の時間設定を2000年1月1日より前の時間に変更し、ゲームに戻る。"

 "すると、鳳凰との戦いが終わった判定になり、経験値やアイテムが貰える。"


 あまりにアヴァンギャルドな討伐方法で、発売元に大量の苦情が押し寄せたのだが、運営は「鳳凰というキャラクターを考えた結果の合理的な討伐方法です」と言う旨が書かれた文書を提出し、鳳凰騒動には更なる波紋を呼んだ。

 ちなみに、この想像の斜め上を行ったクリア方法は、鳳凰戦前に立ち寄ることのできる村や『水晶』の占いで匂わされたり、商業都市アールで購入できたりされているので自力で辿り着くのが不可能ではないが、それでもゲーム機本体の時間をいじる発想に至る人は少なく、鳳凰を討伐できずにゲームを辞退する人も多かった。


 ──と、聡明な人は理解するだろう。

 ゲームでの討伐方法はわかった。では、現実でゲームの世界に入り鳳凰と戦っている人はどう鳳凰に勝てばいいのか?と。


 その疑問に答えよう。

 現実でゲームの世界に鳳凰と戦っている人は、鳳凰に勝つことはできない。

 ゲームのプレイヤーを超え、登場人物となった人はもうその時点で鳳凰に勝利を掴むことはできない。


 だから、今鳳凰と戦っている3人──結城奏汰と東堂真胡・橘川陽斗は鳳凰に勝利することなどできないのだ。


 ***


「──クソ、また回復された!」

「奏汰君!そろそろ休もうよ、体が持たない!」

「まだまだ……」


 鳳凰の元に転移した3人は、奏汰が拳による前衛・陽斗が魔法による後衛・真胡が大盾を使った防御という構成で堅実に鳳凰の相手をするけれど、どれだけ攻撃を加えようと回復されてしまう。

 鳳凰の纏っている炎により火傷を負い続ける奏汰は、陽斗の回復魔法で絶えず処置をしているもののその限界も近そうだ。


 ──3人は、鳳凰に勝利することができないことを知らない。

 だから、3人は疲れ果てて鳳凰に殺されるまで無駄なことをし続ける──はずだったのだが。


「──待って、鳳凰が!」

 目の前で鳳凰が光り続ける。そして、どこかへ飛んでいくように姿を消した。


「──消え、た……?」

「透明化かもしれない。警戒しつつ探ろう」

 鳳凰が消えたことに驚く真胡に対して、冷静に奏汰が答える。

 だが、鳳凰に透明化などという特性は存在していない。鳳凰は真胡の言ったように消えたのだ。


 ──では、どこに消えたのかと言うと。


「ま完デ

 さ全ス

 かにゲ

 応想ー

 龍定ム

 ま外参

 でだ加

 敗っ者

 北たは

 す。侮

 るやれ

 とはな

 はりい

 。、な」

 城内都市パットゥ第五層の最奥、人間にはあまりに大きすぎる玉座に座っている男が1人。

 ドラコル王国生まれ出ないその異世界人の正体を、我々は知っている。


 ──鼬ヶ丘(いたちがおか)百鬼夜行(ひゃっきやこう)

 第2回デスゲーム生徒会として名を連ね、『怪物』として恐れられているペストマスクを付けた男性が第5回デスゲームに関わりを持ったのは、マスコット大先生の前任だったマスコット先生が引き起こしたラストバトルだ。

 そこで、当時は生徒会と判明していなかった園田茉裕と出会い彼女に操られることになった。


「共残

 工っ

 もて

 三い

 苗る

 もの

 倒は

 さ鳳

 れ凰

 ただ

 。け」

 そう口にして、ペストマスクの下の素顔に困ったような顔を貼り付けている百鬼夜行。

 そして、意を決したようにこう口にする。


「仕

 方

 な

 い

 。

 全

 て

 俺

 が

 壊

 す」

 そう口にして、右腕を高くあげる百鬼夜行。

 すると吸い込まれるようにしてその場に現れたのは、橙色に光った鳳凰であった。

 百鬼夜行は、左手でペストマスクを少しずらし光り輝く鳳凰を喰らう。


「鳳手な

 凰段ら

 はなば

 不ど、

 死す俺

 だぐが

 がに力

 、でを

 奴も奪

 ら思っ

 ないた

 らつ方

 封くが

 印だお

 すろ得

 るうだ」


『古龍の王』は、龍種を使役することのできる実力者に与えられる称号だ。

 百鬼夜行はその『古龍の王』の4代目で、先代──本来のゲームでラスボスとして君臨する第3代『古龍の王』は、ゲームをクリア判定にしないため、殺さずに『古龍の王』の二つ名を剥奪して地下に幽閉している。


 そして、『古龍の王』の称号が与えられた人物にはある一つの権能が与えられる。

 それは、龍種を取り込むことができ、取り込むとその能力の一部を手に入れる──というものだ。


 これまでは、龍種として存在させていた方が人間にとって脅威になっていたので4代全ての『古龍の王』はその権能を使用しなかったが、今となっては違う。

 百鬼夜行が能力を手に入れた方が勝算があると判断したのだ。


 鳳凰を取り込んだ際に手に入れることのできる鳳凰の能力は「不死」。

 本来の鳳凰が持つ「不死」と比べると、不完全なものになるけれども、現実を生きる人間では考えられない耐久性を備えた体になったのだった。


 ──遠くから、鎖が引かれるような音が聞こえてくる。

 きっと、栄とプラム姫の2人を納めた牢屋がこの最終決戦の地にやってきているのだろう。


 王国戦争の終わりは近い。

 勝利の女神がどちらに微笑むかは未だわからない中で、不敵に笑う人物の影が戦場にはあった──。

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雨城蝶尾様が作ってくださいました。
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― 新着の感想 ―
百鬼夜行の縦読み喋り、懐かしい。 このキャラもしゃべり方も嫌いじゃないんだな。 書く方は結構大変でしょうが(笑
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