プロ野球選手との淡い恋98
年が明けると自主練を行うのが光田の恒例だ。
初めの頃は、同期の田中と二人で行っていた。
いつの間にか光田や田中を慕う者や教えを乞う者が参加するようになっていた。
そんな仲間と年末に決起集会と称した忘年会を思い立ったタイミングで行うのもまた恒例だ。
後輩が日付や日時は調整してくれたが、場所は光田がよく行く店と決まっていた。
前に一度、後輩がセッティングした店で開催したが、あっという間に気づかれて大変な目にあった。
それ以来、店は光田か田中が懇意にしている店に決めている。
光田が仲間うちと行くその店は、一見、こじんまりした店だ。
入り口はカウンターだが、個室もあり、さらに奥に大きな個室もある。
オーナーも知り合いだし、有名人の来客も多く予約も常連を優先するから一般客はほとんどいない。
味も素晴らしく、もちろん値段は張るが、そこは光田と田中が支払うから心配する必要はなかった。
後輩の島原から電話が来たのも、決起集会の日程調整だった。
「25日は光田さんのご都合はどうですか?」
「あ、その日はちょっと都合がある」
一瞬、言葉を濁した光田に、島原は察する。
昨年はクリスマスでもいつでも空いていると豪語していたが、どうやら予定が出来たらしい。
「それじゃ、田中さんは24日が家族とクリスマスなので他の日なら。とのことだったので、えっと、急ですけど22日はどうですか?夕方くらいから」
「大丈夫。じゃ、店は俺が予約するから」
「ありがとうございます」
「ところで、余計な手配はしてないよな」
光田が言う「余計な手配」が何かがすぐに分かったから、島原は笑った。
「大丈夫ですよ。でも、相変わらず田中さんは光田さんに誰か紹介してやれって騒いでますよ」
「そんなに困ってるように見えますかね」
ため息混じりに吐き出した言葉に、島原は小さく唸った。
「光田さんがモテることは百も承知ですよ。でも、美人に散々言い寄られることが当たり前になると、いよいよ女性に興味がなくなるのかもしれないと心配されてました」
「それから結婚をせかす」
「はい。家族は素晴らしいからお前らも結婚せい!と、延々とね。いつもの流れです」
光田は呆れて笑い出した。
田中はドラフトで入団した時から一緒だった。
光田は3位指名で田中が1位。
今では人気も実力も光田が先行したが、それでも二人はプロの世界で一番を目指すと夢を語った頃から何も変わらない。
この世界では貴重な真の親友だ。




