プロ野球選手との淡い恋95
福島到着の10分前。
「佐野さん、そろそろですよ」
うつらうつらとしていたそよは渡部に起こされた。
「すみません、つい」
「いいんですよ。急に佐野さんも同行なんて、部長が組んだ出張ですからね。つかれますよ。それじゃ、声がけをお願いします」
そよは自分の荷物を渡部に託し、部長を起こしにグランクラスへ向かった。
一希は携帯がもうすぐ五分前になることを確認した。
そろそろ起こしに来る頃だろう。
手元に持っていた書類を二枚足元に落とし、静かに目を閉じた。
アテンダントの了解を受け、静かにグランクラスへ行く。
一希は腕を組んで眠りこんでいた。
声を掛けようとしたが、そよは足元に書類が散らばっていることにきづいた。
そよが拾い上げた時、書類の内容が目に入った。
それは、イナケンが光田が所属するチームに支払うスポンサー料に関するものだった。
そよが見たことのない高額の金額が並んでいる。
見てはいけないものだ。
そよは慌てて書類を稲村部長のテーブルに戻した。
「部長、もうすぐ到着のお時間です」
そよの声に一希は目を開けた。
「寝てしまいました。ありがとう」
それから、テーブルに後ろ向きに置かれた書類に目を向けた。
「もしかして、書類をそのままにしてましたか。私としたことが。どうか、このことは内密にお願いします」
そよは黙って頷いた。
復興関連の行事は新聞やテレビの撮影もあり、慣れないそよには新しいことばかりだった。
渡部の指示で何とか滞りなく終えることが出来た。
部長をホテルの部屋に届ける。
渡部とそよはようやく一日の仕事を終えた。
「メシでも食べますか。この近くに食堂があるんです」
部長がいる時とは打って変わり、渡部は砕けた調子で言った。
そよのお腹もグルグルなる。
招待された会食は、緊張してほとんど口に入らなかったのを渡部は気づいてくれた。
「始めはみんなそうですよ。行きましょうか」
そよは近くの小さな食堂へ向かった。




