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キラキラの向こうに  作者: 矢野あいこ
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74/156

プロ野球選手との淡い恋74

開門され、ようやく球場の中に入ることが出来た。

すでに場所取りをされた席には荷物が置かれ、誰もが足早にイベントが行われる場所に向かっていく。


そよは、空いていた席に腰を下ろした。

目の前には美しく手入れされた芝生が広がる。

球場にはまだ小学生だった頃、父と弟と一緒に一度だけ来たことがあった。

地元の球場で、スタンドは剥き出しのコンクリート。所々にベンチが置いてあり、ほとんどは芝生席。

こんなに整備された球場では無かったが、高揚感は同じだった。

吹き抜ける風が気持ちいい。

光田の仕事場なんだと思うと、周りの興奮した空気とはまた違うものを感じた。


せっかくだから満喫しようと、お弁当屋の列に並ぶ。

光田がプロデュースした海鮮弁当を買おうとしたが、売り切れていた。

特製ワッペンが同封されていたらしく、それを目当てに光田の弁当が早々と売り切れたことを知った。

他の選手がプロデュースした焼肉弁当を買いながら、

そよは自分の気合いが全く足りていないことを知らされた。

この調子では、申し込んだイベントさえ参加出来ないかもしれない。

よく分からない焦りに支配されたそよは、光田が参加するわけでもないイベントに向かって走り出した。


球場の外野芝生席にカラフルなテントが建てられている。

三カ所の簡易キッチンが用意され、「俺の料理選手権」の看板が飾られていた。

すでに入場を待つ列が出来ていて、そよも並ぶ。

参加選手は井出選手、谷岡選手、河原選手とアナウンスされている。

河原選手は、入場した時に並んでいた女の子たちが目当てにしていた選手だ。

列には若い女の子や、小学生などの野球少年を連れた家族連れ、年季の入ったチームのファンなど様々で賑やかだ。


5分前に入場が開始され、キッチンブースの近くに進んでいく。

そよも流されるまま、会場へと足を踏み入れた。

暫くすると、奥から警備に囲まれた選手が現れ、会場の客が色めき立ち声援が飛ぶ。

そよが座っていた一番近いキッチンには、谷岡選手が現れた。

ブースの脇に地元の情報番組で見たことのあるアナウンサーが現れ、拍手が起こる。

アナウンサーは一礼すると、青空に響き渡る朗々とした声で叫んだ。

「そろそろお時間になりました。毎年恒例になりました、俺の料理選手権を開催します!」

会場が、わっと沸いた。

周りがなぜか浮き足っている理由を、まだそよは知らなかった。


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