プロ野球選手との淡い恋40
リーグ優勝を果たし、クライマックスシリーズも勝った。
来週から日本シリーズを控え、光田はそよと電話をしながら少し緊張していた。
随分前から、うちに遊びにおいでと言いたかった。
けれど、光田は自分でも笑ってしまいそうだが、そよに警戒されたりしないか心配で言い出せなかった。
それに、マンションを出た先に見慣れない男たちの姿を見るよになった。
有名人も多く住んでいるマンションだから、誰かが芸能記者に狙われているのかもしれない。
そんな所へそよを呼ぶわけにはいかなかった。
けれど最近、見かけなくなった。
欲しい情報が手に入れられたのだろうか。
まさにタイミングとしてはちょうどよかった。
「そよちゃん。日本シリーズで優勝したら二人でお祝いしたい」
そよは「はい」と答えた。
それから光田は「もし、万が一、無いと思うけど、負けても励ましてくれる?」
「はい、もちろんです」
そよの柔らか声に、光田はデレデレと緩んだ頬がさらに緩むのを感じた。
今期、自分が活躍出来たのはそよのお陰であるのは、間違いない。
それに、そよには自分が送った物を身につけて欲しかった。
日本シリーズが終わりそよに会う時、何か送りたい。
けれど、何を選べば良いか分からなかった。
菜々と交際していた時、彼女は欲しい物を指定した。
初めの頃、光田は自分が選んだ物を菜々に贈っていた。
しかし、彼女の好みとは合わないようで、受け取ってくれたが身につけてはもらえなかった。
いつしかイベントが近づくと一緒に買いに行くか、忙しければ、欲しい物を伝えてくるようになった。
だから、自分のセンスに自信も無かったし、何を贈れば喜ばれるか分からなくなっていた。
けれど、早く準備しなくては日本シリーズが始まり身動きがとれなくなる。
取り寄せることも出来たが、どうしても自分の目で選びたかった。
日が暮れて月が上り始めた頃、光田は意を決してある店に向かった。
菜々に何度も連れられた都内にある宝飾店だ。
以前訪れた時、たまたま見かけた繊細で控えめな小さな花のネックレスを美しいと思った。
きっと、そよに似合う。
静かで厳かな店内は有名人など見慣れていて、店員はただ穏やかに、光田が望む品物を見繕う。
そして、あの時に見た美しいネックレスと似た、もっと素敵な品を選び、きれいに包んでもらった。
光田は、受け取った時のそよの驚く顔を思い、家路についた。
その様子を、マンションから宝飾店まで跡をつけていたライターの荻野は見逃さなかった。
小さな紙袋を抱えた光田の顔を見て、やはり新しい女がいることを確信していた。




