プロ野球選手との淡い恋39
光田は試合がない日やデイゲームの時は夜に電話をくれたし、ナイターで遅くなった時はそよの仕事に支障が出ないように「おやすみ」のメールをくれた。
メールをもらうとそよは嬉しくて、すぐにメールを返信すると、光田はすぐに電話をくれる。
結局はお互いに声が聞きたくて、少し話をしてから眠る。
そうすると、優しい気持ちになれるのだ。
何でもない話でも、そよと電話で話をするのは楽しかった。
そよは野球の話をしないし、光田もしない。
それは勝っても負けても同じだった。
けれど、そよと話をするだけで、負けて落ち込んだ日でも光田は、明日はそよにかっこいい所を見せたいと思えた。
そよは自分をステキに見せようとしない。
天気予報で雨だと知っていたのに、傘を忘れて走って帰った。
お料理をしても、色が茶色い物ばかりになる。
好きなものは、もろ味噌をつけたきゅうり。
蚊に2箇所も刺されてかゆい。
洗濯をしたまま干し忘れて、洗濯機の中でクチュクチャになり乾いていた。
そんなことをためらいなく話してくれる。
看護助手として働いていた時のそよとは違う所もあるけれど、そんなところも光田はますます好きになった。
菜々と別れた後、新しい出会いも求めた。
しかし、光田に寄ってきた女性たちは姿は違うが似たようなものだった。
どれだけ上手で美味しい料理を作れるか。
どれだけきれい好きで掃除上手か。
どれだけ素晴らしいお店を知っているか。
どれだけ女として磨き、自分が美しいか。
どれだけ自分が光田にとってメリットがあるか。
直球で伝える者、あんに匂わせる者、方法は違っても、そんな話ばかりだった。
光田はそよに早く会いたかった。
けれど、復帰してからの活躍目覚ましく、三冠王を射程圏にした光田にファンはますます増え、マスコミも世間も放っておかなかった。
そよと会いたくても会えなかった。
寂しくて、光田はそよに携帯電話を送った。
光田の連絡先だけ入れた携帯で、FaceTimeでそよの顔を見たい為にプレゼントした物だ。
けれど、顔を見て話をすると、ますます寂しさが募って会いたくなった。
「そよちゃんに会いたい」は、光田の口ぐせのようになっていた。
言われるたびに、そよは恥ずかしげに俯く。その様子を見るとたたみかけるように光田は言う。
「そよちゃんは?」
光田がじっとそよを見つめ「会いたいです」と、そよの言葉を待っている。
そんなやりとりが毎日のお約束になっていた。




