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キラキラの向こうに  作者: 矢野あいこ
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プロ野球選手との淡い恋④

 今シーズンはベストな状況でスタート出来た。

打率もリーグトップで、このまま行けば三冠王も夢ではなかった。

ところが、まさか自打球で足の腱を痛めて全治2ヶ月の戦線離脱になるなんて想像も出来なかった。

自分の無力に声も出なかった。


チームのトレーナーからの勧めもあり、この病院に入院することは必然だった。

外科の実弥先生は日本有数の名医だったし、光田自身も過去にせわになったこともあったからだ。

トレーナーの戸波と柴村が交代でついてくれる。

腱が切れていないことは幸いだったが、本当に二ヶ月で復帰出来るか不安だった。

足を動かさなければ良いと、ベッドで出来る筋トレを少しずつ続けていた。


 病院での生活は比較的満足だった。

これだけ名前が知られると、どこに行っても自分に興味を持ってくれる人がたくさん現れる。

特に自分に好意や関係を持ちたいとやって来る人間は、相手に期待をさせない距離感と邪険にしない程度に交わす必要がある。

昔はそんなことが面倒だったけれど、今は気持ちを向けないことが当たり前に出来る様になっていた。

けれど、悠也は少しだけ気になることがあった。


病院に来た日、光田やチームの関係者、病院幹部も周りに気づかれないように入院手続きをした。

特別室の準備が終わるかどうかのタイミングで光田はトレーナーらと共に病室に入った。

すると、準備をしていた女性と鉢合わせしたのだ。

彼女は室内のアルコール消毒をしていたようで、慌てて「すみませんでした。今終わりましたので。失礼しました」と深く頭を下げた。

慌てて去っていったその姿の垢抜けない感じ、困った顔、なんだかそれらが可愛らしく思えた。

光田は彼女の白い制服に「看護助手 佐野そよ」と名札がつけてあったことを見逃さなかった。

これは、動体視力の賜物であった。

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