プロ野球選手との淡い恋③
そよがいつもの配膳やお茶を配る仕事に戻れたのは、それから2週間後のことだった。
配膳やお茶を配っても、特に効果が無いと理解した彼女たちが作戦を変更したお陰のようだったが、そよはそんなことは気にもしていなかった。
それよりも、二人部屋の稲村という骨折して入院しているお爺さんはそよが食事時にお茶を注いで回ることを楽しみにしていたが、会えなくて寂しがっていたから、ようやくいつも通りになって励ませることが嬉しかった。
特別室に行き、おはようございますと挨拶をする。他の患者さんと同じように配膳し、お茶をくむ。
それから他の病室も順次に回り、終われば手分けして片付けていく。
そよにとっては当たり前の日常が戻ってきた。
特別室の光田は決して偉ぶることの無い青年だった。
それどころか、ご馳走様やありがとうございますと挨拶が出来て、さらに相手の目をしっかり見ながら話ができるのだ。
始めはそよもドキドキしたが、これはスポーツ選手が団体活動や上下関係から学んだ礼儀だと気づいた。
素晴らしいことだと感激して、そよも人見知りなどと言っている場合ではないと、相手の目を見て声をかけるようにした。
すると、患者さんが今までより少し近く感じれるようになった。
一流選手を見習うだけで、こんなに成果が出るなんて。やはり、日頃の心掛けがすでに違うのだから、小さなことでも真似てみようとそよは思った。




