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方舟  作者: ゆめゆめゆめみ
第1章
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無人開発機

無人機開発チームでは、方舟計画会議の要請で天体開発に必要なものが話し合われていた。最初の会議が行われてから、NASAや各国の宇宙研究機関から日本での会議に直接参加すべく、多くの研究員が日本を訪れ、この日の会議に臨んでいた。


この日の会議では重力、空気、温度、有害物質に関しては、これらが許容の範囲内であると仮定して議論が進められてる。

まず第一に有人開発チームの橋頭堡の確保である。安全な拠点の確保の是非は、その後全ての結果を左右する。次に、エネルギーの問題である。これは大規模な太陽光発電システムの構築を目指す。核融合エンジンのバックアップとして必要であった。そして、居住施設。簡易的な居住モジュールの設置。可能であれば有用な資源の確保。

これが無人機に要求される項目であった。


会議に参加した者が次々と意見を述べる。

「これ程多くの作業を行う必要がある訳ですから、開発機は人型にしてはどうでしょうか。複雑な作業を行うのに最も適していると思います。」「確かに人型にする事で得られるアドバンテージは大きな物がありますが、構造が複雑で、完全自律制御のためには膨大な研究、開発期間が必要です。既存の技術の応用を前提に考えるべきです。

「不整地走破性は欠かせませんから、キャタピラ仕様が適していると思います。ベースはショベルカーがいいんじゃ無いでしょうか。」

「賛成だ。ショベルカーに追加のアームを取り付けよう。細かな組み立て作業に対応したアームを機体側面に二本、機体下部に整地用の大型のアタッチメントを取り付ければ、要求される性能を満たすことができるんじゃ無いか?」

「ショベルカーのバケットをドリルに変形できるようにするか、専用のドリルを別に設計して、必要に応じて換装する仕様にしておけば、試験採掘も可能だ。」

「私も賛成です。この案に異議ある者は、発言して下さい。・・では、ショベルカーをベースとし、複雑な作業用のアームを追加、整地性能、試験採掘性能を付与する、以上の性能で設計を開始しましょう。」岡部が意見を纏める。


「ああ、すみません。この案だと、機体の大きさ、重量共に大きすぎませんか?」

この研究員の発言はもっともだろう。開発機、探査機は可能な限り、軽量かつ小型の物が求められる。何故なら、質量と大きさは天体到達までの時間の増減に直結するからだ。大きく、重い物を運ぶには多くのエネルギーが必要となる。


ここで、ふと小林が発言する。

「3Dプリンタを積んで、目標の天体で製造するというのはどうでしょう。」「・・・あれ、ダメですか?金属用の精密な部品ですら印刷可能なプリンターが開発されたってニュースで見たんですが・・・」

「いや、本当に素晴らしいアイデアだと思います。プリンターと開発機本体、材料だけで済む。さらにうまくいけば、現地で必要な鉱物さえ得られれば様々なものが手に入ります。」


「ミスター岡部。3Dプリンターはまさに最高のアイデアかもしれません。これを見てください。」メンバーの一人がタブレット端末に図を描き、会議室のサブディスプレイに表示させる。「これが探査機と無人機からなるシャトルです。この貨物室に3Dプリンタと原料となる物質が収められます。

3Dプリンタを採用するメリットの一つ目として、体積の節約が挙げられます。同じ大きさの容器に同じ重さの物質を入れます。一つは車、一つは正方形の鉄。同じ重さでも容器内の体積を占める割合は一目瞭然。鉄の塊の方が低い。つまり、その分燃料を多く積めるということです。第二に、燃料を消費した後、空いた空間で3Dプリントを始められるという点です。燃料で満たされていた空間が空になると、その空間で無人機の組み立てを開始する事ができます。探査機は有人船より高速で移動しますが、それでもなお、天体に到達するまでに長い時間を要します。その時間の内に無人機を組みてる事によって、天体到着後の速やかな開発行動が可能になります。これは本当に凄いアイデアですよ!」

開発機の方針が決まり、休憩を挟んだ後、探査機に関する議論が行われていた。

「探査機は大気圏突入能力が必要です。先日行われた会議で先行無人開発計画の採用が決定されたのですから。探査機に無人機を搭載すると大型化は避けられません。先程の議論の通り、機体の重量は、加速に必要なエネルギー量に直結します。再突入可能で、さらに無人開発機を搭載するとなると大型の機体が必要となります。となると、開発コスト、開発期間は大きな問題です。

そして、最も大きな課題はそれほど大きな探査機は大気圏内では探査に向かないという点です。大気圏内ではより精密な探査が必要になりますが、そうなると、広範囲を精密に探査する為に、複数の小型探査機による探査が望ましい。」

「いっそのこと、無人開発機に探査機を載るというのはどうだろうか。探査機より開発機の方が多くのスペースを必要とするだろ?目的の天体に着いたら宇宙探査機を切り離す。調査の後、開発機は天体へ降下。そこから小型の無人探査機を複数射出して、探査しながら開発も同時進行で行う。どうだ?」

「確かにこの案の方が合理的だ。探査機は宇宙空間から惑星を探査し続けるという任務の他に、地球との交信という重要な役割がある。機体の大部分を降ろしてしまってはその能力に不安が残る。探査衛星を切り離すという方法なら衛星丸ごと宇宙に残せるから能力不足の心配はない。」

「待ってくれ。この計画の成功はどれだけの情報を得られるか、にかかっている。より多くの情報を得る為には大きな探査機が必要だ。無人開発機は貨物室に収まる程度の大きさとし、巨大な演算機とセンサー類で宇宙から天体を探査、必要なデータが得られ次第、通信能力の高い調査衛星を分離、その後探査機本体で天体に降下、無人機と連携して開発というプロセスの方が最終的に得られる情報は多いはずだ。」

議論はそれぞれの意見が対立し、泥沼の様相を呈してた。「はぁ。みんな!休憩しよう!もう三時間も会議室に篭りきりだ。窒息してしまうぞ!ほら!ほら!みんなこの会議室から出て!三十分後に集合だ!」画面越しに、各国の会議参加者にも、しっ、しっ、とジェスチャーを送る。そうして、岡部は皆んなにリフレッシュを促した。会議室からノロノロと退出していくメンバーを見つめながら、岡部に語りかける者がいた。「岡部さん。こんなに色々な分野の、人種の人達が一つの目標に向かって、一生懸命に話し合っている。素晴らしい事ですね。」宇宙航空力学のスペシャリストである彼女の視線からは慈しむような温かさを感じとるとこができた。彼女は相川ながせ。メンバーから「ナガセ」と愛される、JAXAきっての天才だ。「あぁ。本当に素晴らしい事だ。人類の未来のためにそれぞれが持てる全ての知識を披露してくれている。それが故に中々纏まらんがね。まったく困った物だよ。さぁ。ナガセ、君もリフレッシュに出かけるんだ!」「ええ。そうさせて頂きます。」愛らしい笑顔と共にナガセは出口へ歩き出した。「あ!ナガセ!ちょうどいいところに!ドーナツを買ってきたんだ!君も一つどうだい?」「あらジョセフありがとう。それじゃあ一つ頂くわ。」「一つと言わずもう一つ持っていきなよ!君は本当にスマートなんだから、一つより・・・二つの方が・」ジョセフの笑顔は尻すぼみに消えていき、ブツブツと独り言を言い出してしまう。「ジョセフ?あなた、大丈夫?ねぇ?」「ナガセ!!!!!君は最高だ!ありがとう!チーフ!一つより二つですよ!!!無人機と惑星探査機、二つを並べて打ち上げるんです!並走させて、目的地で分離!解決だ!!」



「なるほど。二つで一つの惑星探査機を天体に向かわせるのか。」

努めて冷静にジョセフは答える。

「はい。探査機はスーパーコンピュータと優れたセンサー類で優先すべき項目を調査します。データ収集後、通信機能の強力な衛星を分離、探査機本体は天体に降下します。分離された衛星は引き続き天体を宇宙空間から調査します。天体に降下した探査機は小型の探査機を複数用いて大気圏内より調査を進めます。探査機の開発に関しては別の専門チームを立ち上げる必要がありますね。」

「では、ハンス、君のチームで開発機、探査機双方の議論を重ね、然る後にチームを分け、開発を開始してくれ。」岡部がハンスに指示を出し、ハンスはしっかりと頷いた。

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