↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハニーオレンジとアメジスト ──神の子とエルフの里  作者: じゅんき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/23

第七話 ──修羅場の店──

「お!! リン!! お帰り!」


入ってきたリンクの姿を見るや否や、ローランドが笑顔で声を上げた。

鑑定用のテーブルの向こうで、座ったまま大きく手を振っている。


すると、リンクの後ろからソレイユがひょこっと顔を出した。


「あれ? さっきのエルフ。

……リンと一緒ってことは、もしかして……彼女だったりする?」


ローランドがなんとも言えない表情になる。


「違うよ!」


ムキになるリンクの腕にソレイユが絡みつき、目を細めた。


「あら、リンク。つれないわね。あんなに愛し合ったのに……」


「そんなの知らないよ! くっつくなよ!」


リンクは必死に腕を外そうとする。

だがソレイユはさらに胸を押し付け、顔を近づけた。


「私の裸見たのに?」


「…………」


リンクの動きがピタリと止まる。


「おい! リン! なんでそこは無言なんだよ!!」


ローランドが机に手をつき、ぐっと身を乗り出す。

口惜しさと羨ましさが混じった声だ。


リンクはなんとかソレイユを振り切ると、

ローランドの非難めいた視線を避けるように目をそらし、

気まずそうにカウンターへ向かった。


肩から下げたカバンを開け、領収書と鑑定代金を取り出してヨゼフに差し出す。


ヨゼフは「おう」とだけ言って受け取った。

リンクが何か言おうとした瞬間──


「ちょっとあんた!」


ソレイユがローランドに詰め寄り、机を叩いた。


「さっきからずっといるけど、用が済んだんならさっさと帰りなさいよ」


「え?」


ローランドはまさか自分が怒られるとは思っていなかったのか、

目をぱちぱちさせて困惑している。


「さては懲りもしないで、また女の客に声掛けてるわけ?」


「ちょ、ちょっと待ってくれよ」


「だいたいね!」


ソレイユが言いかけたその時、

カラン、とドアが開く音がした。


「邪魔するぞー」


呑気な声で入ってきたのはレイヴァンだった。

ローランドに噛みついているソレイユを見て、眉をひょいと上げる。


「お? なんだ? 修羅場か?」


振り返ったソレイユがレイヴァンを睨みつける。


「よぉ、リンク。モテモテだな」


棘のあるソレイユの視線を気にもせず、レイヴァンが大声で笑う。

リンクは「やめて、ほんとやめて」と言わんばかりに手を振り、

必死で火消しのジェスチャーをする。


その様子を見たソレイユの目が細くなった。


「リンク! どういうこと? 顔のいいのばっか侍らせてさ! 

私だけじゃ物足りないわけ?」


ソレイユの怒りの矛先がリンクに向かった。


「ちょっと落ち着いてよ、ソレイユ! ほら、座って!」


リンクはへたくそな笑いを浮かべながら、

ソレイユを押し返して椅子に座らせようとする。


「落ち着いていられるわけないでしょ! 

どういうことよ! 説明しなさいよ!」


「あー、うるせぇな。リンク、店番しとけよ」


片耳を塞ぎながら、ヨゼフがカウンターから離れようとした。


「ヨゼフ、待って! ちょっとこの子と話があるから店番は──」


リンクが慌てて呼び止めると、

ソレイユがその声に被せるように言った。


「……あなたがリンクの雇い主?

ちょうどいいわ! リンクをしばらくの間貸してほしいの」


ソレイユは勝ち誇ったように顎を上げ、

手にしていた金貨をカウンターに荒っぽく置いた。


リンクはその金貨を見て、顔を曇らせる。

(相変わらず阿漕な商売してるんだな……。何人犠牲になったんだ?

僕だってあの弓に大枚叩いたんだけど)


ヨゼフはしばらく金貨を見つめていたが──


「そんなでけぇ金、この辺で使えねぇだろ。要らねぇよ。勝手に連れてけ」


リンクは「えっ?」と目を丸くする。


「その代わり、カラスも連れてけよ。それが条件だ」


ヨゼフはローランドを指差した。


ローランドは片眉を上げ、

リンクは言葉を失い、

ソレイユはムスッとした。


「リンク、店番しといてくれ。もう客も来ねぇだろうし、一寝入りするからな」


ヨゼフは店の奥へ消えた。

どうやら、話は聞かずに場だけは残してくれるらしい。


「お、俺も出直してくるかな」


レイヴァンも空気を読んだのか、軽く手を上げて店を出ていった。


気まずい沈黙が三人を包んだ。


リンクは、小さくため息をついた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。