第十八話 ──手がかり──
ヤード村。
ここがその里から一番近い村だな。
シケた村だぜ。宿と道具屋しかねぇじゃねぇか。
こりゃ長居できそうにねぇな。変に嗅ぎまわると怪しまれちまう。
早いとこエルフを見つけて、手がかりを探さねぇとな。
村外れに、いかにもエルフの棲家って感じの店があった。
あいつらは蔦とか、変に曲がった木とかを好む。
間違いねぇだろ。
万事屋か。薬草や小間物を売ってるのか。
おっ、あの耳──二人ともエルフだな。
近づいて探りを入れねぇとな。
いいぞ、他にも客がいるじゃねぇか。
しばらく適当に品物を眺めていると、エルフたちがだべり出しやがった。
「お前は帰らなくていいのかよ?
俺、店休んで里帰りしようかと思ってるんだ」
「俺はいいかな。なんもない里だし、襲ったって金目のもんなんてねぇからな」
「なんだよ、心配じゃねぇのかよ」
「今から行ったって一カ月はかかるんだぜ。
お前はいいよな、すぐそこだし。
それに神の子が守ってくれんじゃないの?」
……ビンゴだ。
あっちの背の高い男が、あの里の出身者か。
ツイてるぜ。
まだまだ辿り着けねぇと思ってたのによ。
……神の子に近づけるかもしれねぇ。
こうなったら──
今夜にでもチビのエルフを始末して、化けさせてもらうか。
次の日。
チビのエルフになりすまし、店の準備をしながら話しかけた。
本人はもう自宅でくたばってる。これで二日間はバレやしない。
「なあ、昨日の話なんだけどよ」
「え? 何の話だっけ?」
「里帰りの話だよ」
「あ、その話か」
「よかったら俺も連れてってくれないか?
一人で店やるのも……まあ、色々ダルいしよ」
「え? ダルい? お前が?」
疑われたか?
マズい。ここでバレるわけにはいかねぇ。
「あ、いやいや……実は“神の子”って見てみたくてよ」
「……物好きだな。いいけど、里にはいないと思うぜ」
「な、なんだと!?」
手が出ちまいそうになった。
「お、おい、どうしたんだよ。なんかお前、いつもと違うぞ」
距離を取られちまった。
「そ、そうか? すまん、ちょっと興奮しちまってな」
頭を掻きながら身を屈める。
低姿勢ってやつだ。
「まあ確かに、美人で評判だったけどよ……」
「だ、だろ?」
なんだ、神の子って大人の女だったのかよ。
てっきりガキか何かだと思ってたぜ。
「……あれが“普通じゃない”ってのは知ってるよな?」
「は?」
「すっとぼけんなよ。俺たちと同じ“モノ”が付いてるってやつ」
ニヤニヤしながら股間を指しやがる。
「でも反応しねぇみたいでな。
里長が試しに男をあてがってみたんだけどよ……全然ダメだったらしい」
何言ってんだ?……コイツ。
「送り込まれた男が俺のツレでな。
最初は抱き心地がいいって浮かれてたらしいんだけどよ……
途中で自分と同じ“モノ”があるって気づいて、一気に冷めたって話だ」
……神の子って、そういうことかよ。
そりゃ見つからねぇ訳だ。
ひん剝きでもしなきゃ、わかんねぇもんな。
「でもまあ、こんな時だし、里が気になって帰ってるかも知れねぇな」
「……断然興味が湧いてきた! 今から帰ろうぜ!」
「まったく、お前も好きもんだよな、へへっ。じゃ、帰ってみるか」
そうだよな。
こんな男でも帰ろうって気があるんなら──
神の子だって帰るかも知れねぇよな。
ついて行って、しばらく様子を見てやるか。




