37、モンスタークレーマー
モンスタークレーマーの世間のイメージは悪いものだと思います。
私もモンスタークレーマーが好きなわけではないのですが、最近は羨ましいと思うことがあります。
私はビビりなので、クレームをつける行為そのものが無理です。
基本的にありとあらゆることを泣き寝入りしてきました。
通販で違う商品が来ることがありましたが、そのまま何も言わず放置です。
自分から誰かに電話をかけることもできません。
困ったら相談してくださいと言われてもできません。
部屋の電球が切れているのですが、もう2年以上そのままです。管理会社に電話したら取り替えてもらえる可能性が高いのですが、電話できないままです。別になくても困らないし、いいやという感じです。
恥をかきたくないから、行ったことがない場所には行けません。
以前にも書きましたが、私は電車やバスに乗れません。トラブルがあったらどうしようと思ってしまうのです。
このような症状を箇条書きでまとめて精神科の先生に提出したことがあったのですが、社会不安障害という障害がつきました。
そんな社会不安障害のある私にとって、モンスタークレーマーは勇ましく見えることもあるのです。
他人がどう思っていようとも構わない。堂々と言いたいことを言う。
周囲には迷惑でしょうが、その姿を見て、自分もあんなふうに堂々とした性格になりたいと憧れを覚えてしまうのです。
私ほどでないにせよ、日本人の中には私の性質に似ているという人は少なくないと思います。
不安を覚え、周りに迷惑をかけたくない、恥をかきたくないという思いから、なかなか自分の言いたいことが言えないままという人はたくさんいると思います。
モンスタークレーマーはそういう思いに振り回されることなく堂々と言うことができるのですから、それは一種の才能だと思います。
探せばあるかもしれませんが、モンスタークレームの代理店か何かがあれば流行るような気がします。
1回500円で電話やクレームを代行してもらえるというシステムです。
ビビりな私にとって、そういうサービスはありがたいと感じます。私に変わって色々とやってくれたら詐欺なんかも減ると思うんです。
詐欺なんかも不安を感じやすい人がやられてしまうと聞きます。
500円でモンスタークレーマーが対応してくれたら、詐欺師を撃退してくれるでしょう。
ちょっと前に退職代行サービスが流行りました。
あのとき、著名人の多くが「退職も自分で出来ないやつは終わってる」という論調でコメントされていました。
しかし、私はそういうサービスが流行る理由は全然理解できます。
私のような社会不安障害がある人にとって、退職を自分から申し出るのはとても難しいことなのです。
電話の前で1時間も震えてしまうのですから。
私は大学を中退しているのですが、その後アルバイトをするとき、私は母親に色々と任せていたんですよ。
面接も母親と一緒。やめるときも母親です。
電話の前で小一時間震えている私を見て、母親はさぞ情けない息子だと思ったことでしょう。
ですが、これは現実です。
不安障害者は電話の前で何時間も震えて、電話がかけられません。声も出ません。どもってしまいます。
それでも、こうしてエッセイを書くのであれば、自分の思いを少しは伝えることができるので、正直電話という文化は廃止して、文書やメールを基本にしてほしいと願うばかりです。
最近はラインというものもありますね。何かしら文章でコミュニケーションを取る方式が社会的に採用されてほしいと思います。
電話は社会不安障害者にとって本当に辛いシステムです。これが基盤であるなら、生きていけませんよ。
もしモンスタークレーマーな用心棒がいれば、私でも用心棒に任せて堂々としていられるのです。
ならば、モンスタークレーマーを社会利用していくべきではないでしょうか。
ただモンスタークレーマーは悪い、間違っていると言っていたら、人がどんどん淘汰されてしまいます。
もしモンスタークレーマーを代行業者が雇い、私のような社会的弱者がそれを利用すれば、クレーマーも救われ、私も救われます。
多くの人が救われるのです。
ですが、今の社会はとことん排除してしまいます。
モンスタークレーマーを排除し、社会的弱者も排除し、強い立派な人だけが残っていくシステムです。
社会とはそういうものだと言われるとそれまでなのですが……。
何でも排除ばかりで社会が進んでいくのが、私にとってはただただ辛いのです。
それぞれの長所を活かすことはできないものでしょうか。
社会不安障害を抱えた人の長所を活かす方法があり、モンスタークレーマーを活かす方法があれば、もっと円滑になると思うのです。
それなのに「社会についてこれないやつは全員排除」とやるせいで、多くの命が不幸になっていくような気がしたのです。
排除から活用へ。長所をもっと活かせるようになれば、少しはこの世界を愛することができると思うのですが……。
敵の敵は味方という言葉がある通り、モンスタークレーマーも味方につけることができれば頼もしい存在になると思います。
不良は女子からモテるという話がありますが頷けます。私なんかは不良にやられる側ですが、不良が味方につけばすごく頼もしい存在なのだと思います。
だったら、不良も排除するのではなく、誰かの迷惑にならない程度で活用できる方法を模索していくべきと思いました。
臭い物に蓋をするという文化がはびこってしまった今の社会では、もはやみな蓋をされることにびくびく震えながら生きることになるのです。
こんなびくびくしながら生きていかなければならない状況で、どうして希望を見出して生きていけるというのでしょうか。
希望を持ちましょうと言う前に、希望を持てる社会にしないと、そんなもの持つことはできません。
世界から排除主義がなくなることを願っています。世界平和も排除主義を無くさなければ実現できないと思いました。




