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35/50

35、結局、最後は根性で耐えるしかない

 私たちはどことなく次のように錯覚してしまっていると思います。


 人の知恵はありとあらゆる問題を解決することができる。


 人間の歴史を見れば、そのように錯覚してしまっても無理はありません。

 何もない大自然から始まって、高層ビルが立ち並び、飛行機が飛び、電車が走るようになったのです。

 知恵を出し科学が発達すれば、そのうち何でもできるようになる。

 AIが発達して労働から解放され、完全なアンチエイジング医療が生まれ不老不死になり、タイムマシンが生まれ過去も未来も自由自在。


 知恵に際限はなく、知恵によって問題はいずれすべて解決すると。


 ですが、冷静になってください。

 飛行機が飛び、何が解決したのでしょうか。電車が何を解決しましたか?

 移動が便利になったことで、何が生まれたのですか?

 行かなくてもよかった義務的移動が増えただけではないでしょうか。

 学生のとき、修学旅行なんてものがありました。

 電車や飛行機が使えるからと、沖縄や奈良に行くのです。

 その結果、人生はものすごくハッピーになったのでしょうか?

 私はこう考えています。


 知恵の発達によって私の手に負えない問題ばかりに振り回されるようになった。


 これは恩を仇で返すような話になるかもしれませんが、農業や畜産業が発達したことで、本来は子供のうちに死んでいたであろう私が40歳まで生かされてしまったのです。

 ついていけない勉強をさせられ、ついていけないことができなくて先生に叱られ、耐えられない仕事をさせられ、結局生活保護を受けるようになってしまいました。

 結婚できないとか仕事をしていないとか無駄に劣等感を植え付けられます。

 ひな鳥なら、落下してそのまま死ぬことができたのです。結婚も仕事も何もないまま人生を終えられたのです。

 それが知恵によって無駄に生かされ、安楽死もできないまま苦しめられ、望んでもない苦しみに打ちのめされていくのです。

 知恵が何をもたらしたでしょうか?

 悪夢、苦しみ、憎悪、劣等感、なくてもよかったはずの暗黒ばかりです。

 アイドルを目指していた子が自殺に追い込まれるなんて、なんですかそれは。それが知恵によってもたらされた理想の死だったのでしょうか。


 私は馬鹿ですが、声高々に宣言させてください。

 知恵は人を苦しめている。知恵によって救われた命より苦しめられている命のほうが多い。


 知恵が発達した現代が一番生きづらいのではないでしょうか。

 発展途上国のほうが多くの子供が産まれているのです。

 発展途上国のほうが労働時間が少ないのです。

 過労死ってバカですか?

 なんで豊かになった社会の方が過労死するんですか。

 いらない仕事、8時間労働という謎のシステム。不要な残業。そんなものが人々を苦しめています。

 上位の人間が下級国民を養分にしているから、こんなことになったのではないでしょうか。

 知恵がもたらしたのは悪夢です。もうたくさんだ。


 人はこれまで知恵を出して出して何かをしてきました。

 その結果が耐えがたい長い悪夢です。

 そして、知恵を出し切った後に、それによって現れた悪夢を根性で耐えるしかないのです。


 知恵がモンスターを生み出して、根性によって清算するのです。

 もう知恵なんていらない。

 不老不死なんてとんでもない。死にたくても死ねず、苦しみ続けるのです。

 死ぬことができないまま鞭を打たれて働かされるのです。私には恐ろしい未来が見えますよ。

 不老不死のゾンビたちが喉をかきむしっている姿が。それでも死なないのです。


 もうやめませんかと私は言いたい。

 知恵というものは誰かを助けるという純粋な気持ちでほんの少しだけ解放するべきものだったんです。

 欲望のままに解放してはいけないものだったんです。

 知恵が時代を高速で変化させました。

 環境に適応できないまま、人類が引っ張られ、みなずっこけています。

 私なんて市中引き回しで、もう心は大量出血ですよ。

 それでも誰も止まらない。止められないのか。


 知恵にふたをするのは根性です。

 ここで終わりにするという根性だけです。もうこれ以上繰り返してはいけないと思いました。

 戦争をやめると誓ったかつての日本と同じように、これ以上欲望に任せて知恵を解放するのをやめないといけないと思いました。

 人生がこれほど苦しいとは思わなかった。もう誰も苦しんでほしくない。いまはもうただそれだけを願います。

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