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11-1. 上級国民居住区コーナン

 この物語はフィクションです。

 作中の人物・団体などの名称は全て架空のものであり、

 特定の事件・事象とも一切関係はありません。

 荒らされたアパートの自室で独り目覚めるサトウ。

 目覚めた後も動く気になれず、膝を抱えて壁のシミを眺めていた。


 今日からオウズマートでの勤務は一旦休職。サトウの連勤記録は一二六でストップした。

 レジ打ちとクレーム対応から開放されるのは嬉しいが、次の仕事は何からすればいいのか、いまいちピンときていない。


「蝉を拾ってこいって言われてもなぁ。どこから探せばいいのやら」

「そのサポートのために私がおります」


 連日遭遇している全身が蛍光緑色(ネオングリーン)に発光する少女、スイ。


 なぜ自分の家に居るのかと疑問を抱かないわけではないが、博士から聞いた拡張現実とやらが関係するのだろう。彼女にはきっと扉や壁なんて関係ないのだ。


「スイちゃんだっけ。サポートは助かるんだけど、この部屋の掃除ってしてもらえたりする?」

「私は拡張現実のオブジェクトです。実際に物に触ることはできません」


「あの博士が送ってきたプロフェッショナルとやらに荒らされたんだけども」

「承知しました。清掃業者を手配しておきます」


 この分だと建物に放火して「掃除完了」と言い出しそうだな、という言葉を飲み込み布団を畳んで部屋の隅へ寄せると、サトウは昨日着ていたシャツとズボンにそのまま着替えた。


「よし。それで、これから逃げた蝉を拾いに行くんだっけ?」

「飼育施設から逃げ出した蝉は計四匹。すでに一匹サトウ様が確保されていましたので残りは三匹です」


「三匹ならすぐ終わりそうだね。スイちゃんは蝉の居場所は知ってるの?」

「ええ。蝉の位置情報は常に送られてきています。近場から回っていくのがよろしいかと」


「三匹ぽっちなら自分たちで探しに行けないもんかね」

「博士配下のプロフェッショナルなどの職員は、一般人にその存在を知られるわけにはいかないのです」

「こんだけ大暴れしてれば、いつか一般人にもバレるからね」


 サトウは荒らされたアパートの自室を見渡す。

 正直、蝉拾いなんてしてないで今日は掃除をしたい。

 蝉を探すだけでここまで暴れるプロフェッショナルって何なの。本当に。


「こちらをご覧ください」


 スイが何も無い空間に手をかざすと、そこに正方形の板が現れる。

 サトウが横から覗くと、板には帝都の地図が表示されているらしかった。


「うおぉ、空中にブォン!ってなるタイプのやつだ。ハイテクだなぁ」

「私の存在自体がハイテク技術の塊と言えるのですが」

「これ帝都の地図?僕が地図なんか見て後で問題にならないかな」

「下級国民が禁止されているのは地図の所持(・・・・・)です。ご安心ください」


僕ら(下級国民)が見ちゃいけない物・持っちゃいけない物って結構多いから。僕の親父なんて、僕が帝都にくるちょっと前にエロ本所持(・・・・・)でパクられたし。ビックリだよね」


挿絵(By みてみん)

 下級国民のエロ本所持は重罪です。

 役所での手続きを行わずに男女の仲になったりすると避妊・去勢させられます。

 何その設定。

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